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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

自動車が売れない現状を克服するユーティリティモデル

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自動車が売れないという現状については、実は、三菱総研が取りまとめた「自動車ディーラー・ビジョン2003年版」(日本自動車販売協会連合会刊行)でかなり正確に予測されていました。私が言うのもなんですが、未来予測のお手本のような見事な分析でした。関係の方は現物を取り寄せてご覧になることをお勧めします。弊ブログのここでも少しだけ言及しております。

昨日の日経新聞13面にも、自動車保有に関するオリジナルなネット調査の結果が出ていました。

-Quote-
 ただし保有形態でみる最大多数派は「自由に使えるクルマはない」人々で四割が該当する。彼らが「非・クルマ生活」を送る理由の首位は自動車それ自体の価格でも、高騰が続くガソリン代でもない。駐車場、税金、車検など維持費の高さだ。
-Unquote-

自動車販売を統括される方に少しお話を伺う機会がありましたが、やはりすごく大変なようです。自動車販売は年々減少を続けていて、2007年は前年比7.6%減となりました。軽の比率が増えています。

オルタナティブブログでも、妹尾さんが「自動車が売れない理由に関する私的考察~それは『デザイン』と『塗料』」 と 「自家用車を持たなくて済む地域と済まない地域。」とで考察されています。

また、加藤さんが「自家用車をやめてみました」 と 「続:自家用車をやめてみました」とで、個人的な体験から自動車を持たないことの意味について書かれています。

安井さんも「自家用車は必需品か」において、自家用車を持たない選択肢について提案されています。

現在のように販売減少が毎年続き、今後も抜本的に反転する兆しがないという状況になってくると、自動車を個人で保有するということについて、根本的なところから再考して事業モデルを組み直すことが必要になってくると思います。

クルマを保有しないでいても、関連の消費は発生するという形態があれば、自動車業界全体としてはやっていけます。
そうした形態を考える際に多いに参考にできるのは、携帯電話のゼロ円モデルだと思っています。製品自体をゼロ円で供給しつつ、関連の事業者は相応に収益を得ているという構造。これを詳しく分析し、自動車業界にとって何が適用可能で何が適用不可能かを考えることが、たぶん、新しい事業モデル考察の近道だと思います。

以前それに近いことを「家電製品をタダで配布するモデルから生まれるもの」で書きました。荒っぽい思考ですが、中長期の低迷を乗り越えるためには、それぐらいのことを考えないといけないのではないかと思います。

ユーティリティモデル(=ネットワークに接続することによって消費者は利用でき、使用量に応じた課金、月ぎめ課金などで収益を得るモデル)は、今後のサスティナブルな社会を考える際に非常に有効です。ユーティリティモデルとは、製品をタダかそれに近い水準で利用者に配布するモデルでもあります。

キーになるのは、その物の所有にかかるコストと継続的にかかる運用コスト(CAPEXとOPEX)とを、事業者側が個人顧客に対してファイナンスする仕組みです。割賦でもローンでもリースでもオニキス型でもない、新しいスキームが必要になってきます。

そうしたファイナンスのスキームができると、「欲しい!」と思った人はどういう車種であれ、比較的すぐに入手することができ、乗りたい期間だけ乗って、別な車に乗り換えるということができるようになります。これによって「販売」がうまくいっていない現状を根本的に解決することが可能になります。サステナビリティの観点から、資源浪費型にならないように工夫は必要ですが。
(このファイナンスは当然に証券化が可能ですが、価額の算出に当たって、サブプライムのように住宅相場が上がり続けるという誤った前提に立つなどということは考えられないため、十分にバブル化しない証券商品として流動化すると思います。)

個々の自動車の所有権が事業者側にあるという状況になると、上の日経のネット調査で指摘されている「駐車場、税金、車検など維持費の高さ」などの問題も、事業者側が負担することで、消費者側が問題だと感じている状況は当面解消できます。後々行政に働きかけて、制度全般の抜本的な改編を求めていけばよいのではないでしょうか。

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