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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

メモ:「Singularity is Near」の発想になじめない

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レイ・カーツワイル(Ray Kurzweil)という人は、米国ではビジネスパーソンにも受けがよいらしく、けっこう真剣に読まれている風があります。けっしてキワモノ扱いされているわけではありません。
発明家としての実績も相当なものです。
http://www.nhk-jn.co.jp/002bangumi/topics/2006/052/052.htm
↑のNHKの番組は見ることができました。興味深い内容でした。

彼が最近刊行した"The Singularity Is Near"では、ムーアの法則かそれに類似した技術発展法則を元に、2045年頃には一個のCPUが具有する知性が人類全体の知性を超える時期がやってくると予測しているそうです。上の番組でもかなり説得力のある説明を本人がしていました。指数関数の後ろがぎゅっと伸びたグラフを見ると、さもありなんとも思えます。
そのような一個のキカイの能力が人類全体の能力を上回ってしまうポイントを彼は"Singularity"(特異点)と呼んでいます。
http://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E6%8A%80%E8%A1%93%E7%9A%84%E7%89%B9%E7%95%B0%E7%82%B9&oldid=9160372
そこを超えるともう後戻りができない(point of no return)というのとも違う、そこを臨界点として猛烈に何かが始まるというのとも違う、なんというか、キカイが創発的に人類を支配しはじめるポイント、といった意味あいがあるようです。

この本を読まないうちに反感のようなものを記すのもどうかと思われますが、個人的には、その予測は当らないと思います。
現在猛烈な勢いで伸展しているWeb2.0的文脈における集合知というものが持つ未来シナリオにおける可能性をぜんぜん考慮していないように思えるからです。ネットワークでつながることによって新たに獲得されつつある知の状況をあまく見ているのではないか?
CPUの能力が指数関数的に発展し続けていくのは間違いないとしても、それを上回るスピードで集合知状況は広がり、拡散し、浸透し、組み合わさって、地球大の不可視の何らかの知的状況を構築するようになる可能性は多いにあります。規模が質に変化するようなことがありえるのではないか。そしてそれが彼の言う"Singularity"の到来するはるか前に、キカイが存在している地平のはるか上のレイヤに移行してしまうのではないか。キカイが人類の知恵の集積体を上回ってしまうポイントは永遠に来ない…。根拠もなく、そのように思うだけなのですが。

ただし、CPUに自律的なネットワーク増殖機能のようなものを持たせてしまうと、すこしやばいかも、とも思います。ただそれはSingularityといったものではなく、修復が不可能に近いカオスをもたらすだけであって、それ以上でも以下でもないのではないか。どうでしょう?(そうしたカオスも、物理的な配線をぶつぶつ切ってしまえば雲散霧消してしまいますね)

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