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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

オンラインコミュニティ運用のキモ

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先日紹介したDanah Boyd氏の講演記録"G/localization: When Global Information and Local Interaction Collide" に目を通したので、忘れないうちにメモ。

彼女は、オンラインのコミュニティを構築するには何に気をつけるべきか、を話しています。いくつかポイントを。

・オンラインコミュニティの成長過程は、まさにCultureが醸成される過程そのもの。これを成長させる原動力は、ひとえに寝食を忘れて、オンラインコミュニティのサイトを作り続けるDesigner(結局はプログラマーということ。プラス、サイトデザインに携わる人)の献身。
・オンラインコミュニティの成長においてDesignerが行うもっとも重要な仕事はEmbedded Observation(オンラインコミュニティの中で起こっていることにへばりついて何が起こっているかを把握し、その把握内容をサービスに反映させること)。
・Embedded Observationはあたかも人類学者が研究対象となっている文化に対して行っている観察(フィールドワーク)のようなもの。その集団に参加することで初めて有効になるような観察。
・オンラインコミュニティが急激に拡大する過程で、Embedded Observationができにくくなる。1人では手に負えず、Designerが体力的に擦り切れてしまうということが起こりがち。Designerを複数配置して、交代でEmbedded Observationにあたらせる必要がある。
・オンラインコミュニティがでかくなると、対立するSub Cultureが複数生まれるようになり、単一のCultureとして運用することができにくくなる。そこでCultureの自由な動きをある程度制約するルールの設定が必要になる。Designer側ではこれが悲しい。
・けれどもでかくなったオンラインコミュニティにおいて、ルールを設定しつつ、Embedded Observationをしっかりとやり続けないならば、コミュニティが崩壊してしまう。
・オンラインコミュニティにおいて、見知らぬ人と人がコンタクトをとるのは、相手が希少な存在であるから(さまざまな意味を含む。簡単に言えば、日常生活の環境で出会うことが少ないタイプの人だから)。

Cultureに相当こだわっているこの講演記録を読んでいて、ここで言うCultureとは、山本七平氏および冷泉彰彦氏が言う「空気」とほとんど同じではないかと、何度も思いました。
彼女は社会ネットワークの研究者なので、コミュニティを成立させる、例えば共通の価値観に着目するわけですが、共通の価値観というのは、いわく言いがたい「空気」のようなものとして記述されています。

-Quote-
Let's begin with culture. Culture is the set of values, norms and artifacts that influence people's lives and worldview. Culture is embedded in material objects and in conceptual frameworks about how the world works.

In everyday speech, we often speak of "different cultures" to imply people from different nation-states or who speak different languages. What is important in thinking about cultures is not the location or tongue of the population, but what shared cultural frameworks people have. For example, there is a Jewish culture that crosses nationalities and languages, but shares many of the same values and cultural framings.
-Unquote-

Cultureをhighly contextualなものとして捉えていますね。日本の「空気」とほとんど同じだなぁと、興味深く思いました。

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