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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

イノベーションコンサルティングの誕生

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先週木曜日に日本IBMの中期計画が発表されました。オンラインメディアの各報道を総合すると、①日本IBMはより一層”サービス”(ここでは戦略・ITコンサルティング寄りのサービス)に注力する、②顧客企業のイノベーション支援を事業として立ち上げていく、の2つがポイントのようです。

今回の発表は、shiba blogOutlogic!社会人大学院で学ぶ技術経営などが、昨年7月頃から追いかけてきている「IBM Almaden Research Centerが中心になって推進しているサービスサイエンス」を踏まえたものであることはほぼ明らかです。先日当ブログでもやっと追い付いて触れることができました。
プレスに配布された資料が手元にないので、事業計画のどのレイヤにどのような形でサービスサイエンスが配置されているのか不明ですが、おおよそは全体の”基調”になっているようです。クリステンセンの言うところの価値基準ですね^^。いずれ取材という形で確認させていただきたいところです。
なお、グローバルなIBMにおいて、サービスサイエンスを事業として打ち出すのは、私が間違っていなければ、日本IBMが初めてのようです。かなり快挙と言っていい取り組みです。

サービスサイエンスがいかなるものかについては、shiba blogのこのエントリを参照。

サービスサイエンスはあまりに広大な領域なので、個々のサブセグメントが数年がかりの学究の対象になりうるし、真のコンサルティング能力があるコンサルティングファームであれば、いくつかのサブセグメントを事業領域にすることも可能だと思います。
けれども個人的には、現時点で事業にするのはまだまだ早いと思っていました。できるとしても、非常に優秀な若手の方々が集まったコンサルティング集団ぐらいではないか、大手中堅には無理ではないかと考えていました。

それだけに、今回の日本IBMの発表はかなり衝撃的でした。最大手A社や老舗M社やB社が(怒られるのを承知で言えば)2年先に取り組み準備を始めるところを、今発表してしまったという、そういう速度感があります。今回の発表には。

グローバルに展開するコンサルティングファームの内部には、①強力なナレッジデータベース、②先端事例を共有する種々の枠組み、③知の猛者たちのオンライン/オフラインの交流などによって、その時代の最先端の経営理論をコンサルティングビジネス的に咀嚼した上で、すばやく流通させる仕組みがあります。

従って、大概の動向は既知であるし、おおむね他社が手がけている新機軸も何らかの情報・知識として流れており、まぁよほど新しいものでない限りは誰も驚かないという環境にはなっています。しかし、そのようにして流れている知識・情報・方法論の多くは、詰まるところ二次情報、三次情報であるわけで、フレッシュに生成されたばかりの知識・情報・方法論というのとは迫力が違います。

日本IBMの場合、上記ブログの諸氏が報じてきたサービスサイエンスの総本山であるところのIBM Almaden Research Centerの知見を大いに利用できる立場にあるものと思われます。従って、日本に拠点を置くどのコンサルティングファームよりも、はるかに進んでサービスサイエンスの先端を学び、自分たちの事業として練り上げることができる立場にあるのではないかと推察します。

まだまだ書きたいことがいっぱいあるのですが、週末も仕事モードなので、いくつかをメモ書き程度に。

・サービスサイエンスの特定領域を事業として顧客企業に適用していく際に、必ず、ITによる実装が不可欠となる。日本IBMの場合、”実装の方法論”に長けている。
・一般的に、コンサルティングファームが打ち出す新機軸は日本の最大手企業の経営者コミュニティの支持を得られないことが多い。日本IBMはすでに日本の企業コミュニティの中で堅い足場を築いており、日本IBMの言うことになら耳を貸すというケースが多々あるものと思われる(既存顧客の経営者層にアプローチできる)。
・特にハイテク製造業においては、先端的なデジタル機器のコモディティ化が大問題となっている。ここにサービスサイエンス的な方法論の適用の一大フロンティアが広がっている。
・経験価値系で攻めるとしても、日本の場合は、レクサスに見られる”おもてなし”の事例に見る通り、組織として経験価値向上に取り組むことが容易にできる土壌がある(文化的にくどくど説明しなくてもわかる国である)。グローバルIBMにおける経験価値事例構築のテストベッドとして非常に好ましい。
・グローバルIBMのサービスサイエンスの先端的な研究者が日本に滞在して取り組めば、おそらくは、ものすごく興味深い展開が多々生じてくる。

イノベーションに関する知見は色んな意味で臨界点に達している模様であり、あとは実践というところだろうと思います。「企業がイノベーション向きな組織に生まれ変わるためには具体的にどうすればいいのか?」を顧客企業と一緒になって考える”イノベーションコンサルティング”が日本で誕生する予感があります。

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