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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

ライブドア-残された管理職と社員たちが今なすべきこと

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実は弊社メディアプラネッツ有限会社の口座には株式会社ライブドアから毎月3万1,500円が振り込まれてきます。Hotwiredの「News Watchers' Talk」参加のギャラとしてです。
「News Watchers' Talk」は元「デジタル虎の穴」と言い、1997年秋のHotwired Japan開設当初から延々続いている企画です。開始当初にお声がけされた方の多くは種々の理由で交代されましたが、何人かは今でもそこの発言メンバーとして残っていらっしゃいます。そのなかには堀江貴文氏も含まれます。

同社がリビング・オン・ザ・エッヂだった時代にHotwiredのサイト構築を受託したようで、われわれ執筆系の人たちとやりとりする編集スタッフの方々は同社とは一線を置く立場にあるのですが(制作会社と制作スタッフの所属が異なるという形態はよくあること)、制作費全般のお財布はリビング・オン・ザ・エッヂが持っており、ギャラがそこから振り込まれていたという格好です。
振込主体はオン・ザ・エッヂ→エッジ→ライブドアと名称を変え、現在に至っています。かれこれ10年近いお振込みということになります。ありがとうございます。

さて。企業の経営や戦略に関して意見を書かせていただく立場の自分としては、今回明らかになったライブドアの不正な時価総額拡大経営についていくつか指摘したい点がありますが、それはとりあえず後回し。どのみち色んな方々がいろんなところで書く論とさして変わらないものになるはずなので、それをお読みいただければよいです。でもまぁ後日1点だけは指摘します。それは置くとして。

気になるのは、昨晩逮捕された4名以外の管理職および社員の方々がどのようにしてこの局面に当たっていくのかということです。

ざっと考えただけでも以下の懸案があります。
 1. 当面の経営チームの組成→うまく機能するように社員全員とコミュニケーション
 2. 真摯かつ開かれた広報姿勢の維持
 3. 中~大型の資金負担を伴うプロジェクトの優先順位見直し、場合によっては中止
 4. 各種の訴訟に備えた法務チーム組成
 5. 短期・中期のキャッシュフロー試算。複数のシナリオ=最悪シナリオ~最良シナリオのいずれにも対処できるキャッシュフローを確保
 5. 流出しつつある顧客への対応
 6. 将来の顧客創出という意味で、事業再編を前提としたライブドア本体の事業の棚卸し→再評価
 7. 同じくライブドアグループ各社の事業の棚卸し→再評価。被買収への対応

これらはすべて常識的なものばかりで、項目が挙がればやるべきことは見えます。奇策はなく、常識で考えてもっとも妥当と思われるものを粛々とこなすだけです。法務および被買収への対応以外は、外部の専門家などもいらないでしょう。あ、でも事業の棚卸しと再編では外部の本当に優秀なコンサル会社に入ってもらった方がいいですね。

問題は、堀江貴文という非常に強力なキャラクターを持ち、考え方をしていた統率者が突然いなくなってしまったということに、どう対処するかということです。
ライブドアの価値観の源泉であり、経営哲学の屋台骨であり、社員の日常の行動の規範であった存在が、急にいなくなってしまって、どう進んでいけばいいのかわからなくなるのは当然です。仕事人として目先の処理案件には対処できるけれども、先々の事業を、サービスを作っていくための諸事項では、右に進むべきか左に進むべきかさっぱりわからない。なぜなら社が頼りにしてきた価値観がゆらいでいるから。そういうところではないでしょうか。

先に進むためには、堀江氏の強力な経営哲学・価値観を相対化しなければなりません。言い換えれば、先に進む方便として、彼の経営哲学と価値観を否定し、それを乗り越える自分の足場を築くということです。

アイディアがいくつかあります(ただしやり方はこれだけではないと思います)。
まず、世の優秀な経営をしている企業を研究した書籍のうち、非常に評判のよいものを1冊選んで、社員全員で読書会を持つなどして読み込み、「よい経営とはどういうことか?」を全員で学ぶということです。自分がすぐに推薦できるのは「ビジョナリー・カンパニー」(ジェームズ・C. コリンズ著、日経BP)です。この本では世界主要国の非常に優れた企業を200社?ぐらいサンプリングして、絞り込んで行き、そのなかでももっとも優れた企業十数社の経営の共通点をあぶり出しています。端的に、何がよい経営かがよく納得できる構成になっています。こうした書籍を全員で読み込んで、「よい経営」の概念をつかむ。これによって、堀江氏の経営哲学を客観的に見ることができるようになります。
こうした究極の経営の良書を1冊、社員全員で徹底的に読み込むという作業を、向こう1週間ぐらいで行うぐらいのスピードがなければなりません(でないと離散者が出始めます)。

それと並行して、日本で一番と思われる、経営のわかった識者を呼んで、1~2時間の講演をしていもらい、ライブドア経営を叱ってもらい、堀江貴文氏の経営姿勢を叱ってもらい、合わせてライブドア社員諸君を叱咤激励してもらうという機会を設けるのがよいと思います。
堀江貴文氏の強烈なキャラクターに対置できる方が望ましく、たとえば、大前研一氏や寺島実郎氏の名が思い浮かびます。自分自身の言葉で自然と、しかし真摯にかつ強く堀江貴文氏の姿勢を「叱る」ことのできる人でないといけません。(それからいくつかのポイントにおいて日本一の人でなければいけません。趣旨を話せばすぐに時間に都合をつけてくれるでしょう。無論相応のギャラはお支払いしないといけません)
場合によっては、毎週曜日を決めてそういう社内講演会を開催し、大前氏や寺島氏だけでなく、日本でその道の権威とされる方々に数名ご登場いただくというのもよいでしょう。そういう方々に叱り飛ばしてもらうことによって、社内に残っている人たちの心的な負担が和らぎます。

このような方策を用いて、堀江氏の経営哲学を客観的に見られるようになり、それを超える視点を持つことができるようになれば、あとは、ほんとうに優秀な経営者の方に内部から、あるいは外部から立ってもらって、ライブドアグループ全体を牽引してもらえば、現在の若くて優秀な社員諸君も安心してこの難局を切り抜けていくことができるでしょう。がんばってほしいものです。

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