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「PDCAクルクル教」という面白記事にみるPDCA 4つの誤解~「計画必達教」という呪縛

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「PDCAクルクル教」というネーミングが面白い田中靖浩氏の人気記事、"「PDCAクルクル教」だから変化に弱い日本企業" は四つ大きな間違いがあります。第一に、PDCAを田中氏は間違った説明をしている点です。第二に、日本企業はPDCAサイクルをクルクル回せているわけでなくて、むしろアメリカ企業とかの方がよくやれています。日本企業はPDCAクルクル教ではなく、「計画必達教」と呼ぶほうが適切です。第三に、PDCAがクルクル回せているならむしろ、変化に強く「想定できない変化」に早く気づき、対処や改善(= Adjust)が早くできるはずなのです。そして第四に、PDCAはクルクル回す短期的なものだけでなく、中長期的なPDCAもあり大きな変化に対処するにも重要という点です。

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第一の間違い:PDCAは 計画、行動、管理、実行ではない

田中氏のPDCAの説明は少し間違っています。PDCAを田中氏は、「計画、行動、管理、実行」と捉えているようです。Action からPlanに戻るところを田中氏はこう説明しています。

また、PDCAの最後に実行「A:Action」された結果は、十分に吟味、検証されることなく、次のPに反映されずに終わることが多いようです、なぜなら、みんな次の計画(P)をつくることに精一杯で、過去を振り返っている余裕がないからです。そこでは過去の反省を活かすことなく、毎度のように「対前年比」で計画がつくられます。

本来的なPDCAは、plan-do-check-act もしくは plan-do-check-adjust であり、 「計画、実行、評価、対処(調整)」です。Aは Actionでもいいと思いますが、Doとの違いが日本人的には分かりにくくなります。本来的にPDCAのAは「対処」とか「調整」であり、Planとのギャップを埋める対処を行う段階です。

第二の間違い:PDCAはアメリカ企業の方が得意であり、日本がとらわれているのは「計画必達教」です

日本企業、アメリカ系企業、ドイツ系企業に勤めた経験から言って、PDCAをクルクルさせるのに一番熱心なのはアメリカ系企業です。計画してやったことが上手く行ったか気にして問題だったら早く直そうという意識が強いし、週次とか日次とか短いサイクルでよくしていこうという意識が高いです。田中氏の説明は日本企業での間違ったPDCAの状況です。

こうした無理な計画に固執する姿勢は、「ウソつき」を生み出しかねません。東芝の不正会計事件はその典型といえるでしょう。また、たとえば建設業の現場で、どう考えても無理な納期・コストで指示が行われると手抜き工事が行われかねません。

過去の反省を活かすことなく、毎度のように「対前年比」で計画がつくられます。

というのは、Check とAdjust ができていたら防げる話です。田中氏の説明は、PDCAではなく、むしろ一度立てた目標は必達という昔ながらの「計画必達教」です。経営が現場へ目標必達を押し付けるとか、現状を無視した計画の必達を押し付けるというのは、Checkを誤解しています。そして、現状分析のチェックや調整ができてないので対前年比の計画になり、計画実現のための方策が気合による計画必達という信念と細かな管理だけになってる日本のありがちな問題はPDCAをクルクルさせすぎているわけではありません。

第三の間違い:想定できない変化に早く対処するためにこそ大切なPDCA

日本人は計画好きだからPDCAを高速回転させることに囚われていて、「想定できない変化」に対応できないと田中氏は説きます。しかし、これはPDCAを誤解しているからに他なりません。週次や日次の短いサイクルでのCheck Adjustが批判されているのですが、想定できない変化が起きていることを早く知るにはこのチェックと対処のサイクルが年次とか長いとどうしようもありません。例えば、年間の売上が3月決算の時期に集中していてどうも今年はだめだったとかなった時にたまたまダメだったのか、構造的な変化が起きているのかを知るのには何年もかかることになってしまうでしょう。早いサイクルでチェックすることこそが想定できない変化への対処に大事です。

第四の間違い:クルクルさせるのだけがPDCAではなく、中長期的なPDCAも大事

最後に、ここが一番PDCAについて誤解されている点かもしれません。PDCAは日次とか週次とかの短いものばかりではありません。四半期とか年次とか時間をかけて取り組む長いサイクルのPDCAもあります。「想定できない変化」のような大きな変化に対処するにはこの長いサイクルのPDCAが重要です。

PDCAの高速回転ばかりが語られているので誤解している人が多いのかもしれませんが、結果がすぐにわからないこと、実行に時間がかかること、は「PDCAをクルクル」なんて不可能です。例えば、専門雑誌広告の成果とか、Webサイトリニューアルとか、販売チャネルをデジタルにシフトするとかいう施策は半年や一年ぐらいかけて取り組まないと成否が分かりません。そして、従来の計画や取り組みの効果が消えて、根本的にやり方を変えるとか、取り組むことを変えるという場合にも、中長期のPDCAが必要となります。

たとえば、Microsoftがソフトウェア・ライセンスを売るから方向転換して、クラウドでサービスを売るに変えるとか、Windowsでフロントエンドを寡占するという目標を取り下げ、スマートフォンはiPhoneとAndroidという現状を受け入れ、そこでもMS Officeを使えるようにしていくとかは何年もかけて行うPDCAの一つでしょう。

そういう戦略的方針変更はPDCAと捉えられないことも多いのですが、計画、実行、評価、調整というプロセスを踏みながら進めているプロジェクトであり中有長的なPDCAの一種と言えます。

PDCA=クルクル という固定観念で、PDCAでは大きなトレンド変化に対応できない というのはPDCAを理解していないからでしょう。

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