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佐賀県知事選挙が暗示した「落選運動」とネット選挙の本質

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佐賀の組織票は農協だけではない:表層的な西田氏の分析

保守分裂、中央対地方で全国から注目された佐賀県知事選挙。結果は衆知の通り、樋渡元武雄市長の敗北、山口候補の勝利となりました。これについて、農協の基礎票から、西田亮介 社会学者・政策学者 立命館大学特別招聘准教授が、落選運動の影響は低いと分析をされ、それなりの賛同を得られているようです。

この8.8万票が、山口氏を推薦した「県農政協議会」がもっとも組織化できる票数であり、政治への影響力の源泉といえるだろう。

この8.8万票を2倍すると、16.7万票、3倍すると26.4万票になる。

実際の山口氏の得票数は約18.3万票であるから、2倍+αといったところか。
一見強力な基礎票のようだが、むしろ「意外と動員が効かなかった」という印象を当事者らは持ったのではないか。

今回の佐賀県知事選の結果も、(低)投票率と基礎票という既存の強力な変数が、選挙結果に大きな影響を与えたと考えるのが妥当ではないか。
換言すれば、ネット選挙(含む、落選運動)の影響は、むしろ小さいということなのではないだろうか。総務省の『平成 25 年通信利用動向調査の結果』によると、佐賀県の個人のネット利用率は、約80%、スマ―トフォンからの利用は約38.5%。首都圏や関西圏と比べると利用率自体が低いうえに、スマ―トフォンからの利用者が少ない。

確かにネットからの運動がどう効いたかは分析が困難です。そして佐賀はネット普及度が低いのも確かです。

しかし、佐賀県で生まれ育ち実情を知る私としては、広い意味での「落選運動」で樋渡候補が落選し、これが落選運動の本領だったのではないか?そう見ています。なぜなら、佐賀の組織票は農協や漁協だけでは無く、知名度と基礎票から考えて通常なら樋渡候補は落選するはずが無かったからです。

過去の保守分裂選挙で農協系は一勝一敗で2003年は破れていた

実際、過去の佐賀県知事選挙を見ても2度あった保守分裂で農協系が勝ったのは1979年が最後でした。佐賀新聞の記事で

前副知事の香月熊雄氏(63)が初当選を果たした。異例の保守三つどもえの戦いとなったが、県農政協議会の推薦を得た香月氏

とあるように、勝った香月氏は元副知事で、実績と知名度も十分でした。一方、一番近い保守分裂選挙、2003年は農協は、前県議会議長を推して、官僚出身の古川氏に敗れました。

=新人6人乱立(2003年)=

■自民県連4人を「支持」

 2003年は、44歳で元総務省企画官の古川氏が当時、全国最年少で制した。3期12年続いた井本勇知事の勇退を受けて、保革入り乱れて新人6人が名乗りを上げる混戦だった。

 過去5回続いた保守系の相乗り候補と共産系候補が対決する構図から一変した。古川氏のほか、県農政協議会が推薦する前県会議長の宮原岩政氏(61)、元農水省局長の樋口久俊氏(57)、那須大学教授の木下知己氏(55)、元県高教組委員長の福島是幸氏(63)、元県教育長の林田重人氏(66)と、錚々(そうそう)たる顔ぶれが並んだ。

農協が推薦したから組織がフル稼働するとは限りません。2003年は佐賀新聞の記事にあるように地縁選挙にもなり、古川氏は地元唐津で広く支持を集めて勝利しています。西田氏が、農協は基礎票があるから勝てるというほど簡単ではないのです。そして、2003年に勝てなかった農協にもう力はないと見られても不思議じゃない状況にありました。

広義の「落選運動」で落選した樋渡元武雄市長

そんな、組織力を疑問視された農協が今回はフル稼働したと報道されています。また佐賀市長が率先して反樋渡で活動し、対抗の山口候補を盛り立てました。佐賀新聞は、疑問視されていた農協がフル稼働したことをこう報じています。

農協の正組合員は約5万5千人。かつては家族も含めて20万票を動かすと言われた。しかし、高齢化や兼業農家の増加で、近年の選挙ではその集票力に疑問符が付いていた。知事選で敵対した樋渡陣営の幹部も「今回で農政協の本当の力が見える」。しかし、農政協は組織をフル稼働し、「ここまでやった記憶はない」と語るほど末端にまで指示を徹底。樋渡に約4万票の大差をつけた。「これほど本気で動くなんて」。樋渡陣営幹部は誤算を認めた。

それほどまで農協をフル稼働させた原動力は樋渡氏の市長時代の言動にあるとされます。農協抜きでやったレモングラス栽培と販売を実績として樋渡氏はアピールしましたが、農協関係者は、単なるパフォーマンスと批判しています。農協はレストランも併設した直売所を持っており様々な産品を付加価値をつけて売ることを実践しています。部外者のほうが固定観念にとらわれずうまくやれるかもしれませんが、その道のプロで人材も地元にいるのに話し合いもできずにいるという不満が高かったようです。(茶色は1/14 13時追記)

また、佐賀市で反樋渡の票が多かったことにも注目が必要です。広域合併して農業従事者も増えた佐賀市ですが、なんといっても県都であり農協以外の関係者も多数います。

市区町村別得票と投票率からの分析:まんべんなく得票した山口氏

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樋渡氏がリードした市区町村は6に留まりました。地元武雄では投票率も上がっていますが山口氏も健闘し、リードは5500に留まりました。前県知事の地盤唐津市でもリードしましたが投票率は低迷し、消極的な支持者が投票しなかったことが見て取れます。一方山口氏は出身地の白石町で大きくリードし、大票田の佐賀市でも比較的高い投票率で大きな差をつけました。佐賀市で浮動票のかなりが山口氏に流れたと推定できます。

ネットでの落選運動が効いたのか?その答えは個別アンケートでないと出ないと思います。しかし、地縁血縁を通じてかネットを通じてかはともかく樋渡氏を警戒すべきという認識が広がり、無名の候補が逆転勝利したその要因の一つに、樋渡氏のネットでの悪評があった、そう私は推定しています。

Comment(4)

コメント

ポン助

農政協は別として、樋渡の言動 は行政のトップのそれではなく、覇者としての目上に対しても、弱者なら強権に振る舞う様にみえた。現代の暴君の様に、皆には、映ったのかな?!

匿名

供託金が高く選択肢の少ない選挙。
選挙が目障りな少数派の口を合法的に封じる手段と堕している。
「当選させたい候補者に投票したいのではなく、
 落選させたい候補者を議会から締め出したい」という。

テラ七

百聞は一見にしかずといいますが、「候補者はこんな人らしいよ」という噂話が知事選前後から盛んになったと考えて、その際耳だけでこういうことを言った、やったと聞くよりネットのまとめサイトやツイート自体を見せた方が強力な印象形成がされると思います。そういう意味で「落選運動」もですが、「ネット上での印象マネージメント」が影響大きかったのではと愚考します。

選挙戦略家

選挙では「善」対「悪」の闘いに持っていくのが一番やりやすいのですが、そういう意味でそのカタチが作りやすかったです。
人格での比較、傲慢な中央対真面目な地方、党本部対地元組織、政治家対農家。
自分が善だと感じられる確信を持たせる戦略を組んだので、わずか半月で末端まで票を掴むことができた。
ネガティヴキャンペーンというより、佐賀の未来を悪から救うポジティブキャンペーンに成功した、それが勝因です。

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