「放射線可視化写真」の野口隆史氏が捏造写真家であるたった一つの理由
野口隆史氏が放射線を「可視化」させた写真と主張するものが報道され、展示会も開かれています。下のようなカラフルというかサイケデリックでショッキングな二宮金次郎像の写真はインパクトが強く、かくも事故の被害は大きいのかと多くの人が驚いています。放射線の害のイメージに近く納得しちゃうようです。
【写真展】 “STIGMA”~烙印~ 写真家・野口隆史の写真ドキュメントアート - MSN産経フォト via kwout
しかし、フィルム写真の経験が多少あればこれは昔よく見た失敗写真の一つ、「光かぶり」による失敗だと思い当たるはずです。下は、光線かぶりによる失敗写真を修復しますというサービスの案内です。写真フィルムはパトローネという遮光された入れ物に入って露光から守られて現像へと渡るのですが、何かの間違いでカメラの裏蓋を開けちゃうと、真っ白の何も映らない写真になってしまいます。急いで蓋を閉めてやっと、フィルムロールの奥の写真の何枚かが多少の被害を受けて助かるのですが、下のように
白 → 黄 → オレンジ → 赤 → 通常の色
リメイクサービス・修正 via kwout
フィルム写真に詳しい人が見たら、一発で実は怪しいと分かる写真で、疑問が多面的にここで論じられています。報道写真家・野口隆史による「原発事故の放射線可視化に挑戦 "STIGMA" プロジェクト」と称する写真に関する疑惑⁉
こういう疑問が多く寄せられる中、野口隆史氏自身が、1/13に公開したFacebookエントリーで以下のような説明を公開しました。
ところが現像してみると様々な現象が起きていた。どれも説明がうまくつかない。陶芸の世界でいう「窯変(ようへん)」のように、灰や炎の代わりひょっとして光かぶりしたかもしれない現象もある。
この自身が光かぶりかもしれない現象(写真)があると認めた上で、インパクトがあるからとメインのビジュアルに野口隆史氏は取り上げました。そしてこの写真展の紹介記事では以下のように説明しています。
■どうやって放射線感光させているか?
福島県内での風景を撮影したフィルムを、絶対に光が差し込むことの無い空き缶の中で、その撮影した地点で採取した土壌や木の実などと一緒に一カ月ほど放射線感光させています。
例えば福島市内の弁天山から福島市内を一望する風景を撮影したとします。撮影したポイントで放射性物質に汚染された土壌や苔などを採取して、ジップロックなどのビニールに入れます。それを光が漏れることの無い空き缶に入れて、ダークバックの中でフィルムをパトローネからケースから引き出し、空き缶の中にしまいこんで蓋をします。念のために空き缶の蓋のつなぎ目を黒いビニールテープで目張りをして、ひと月ほど時間をかけてフィルムを放射性物質から発せられる放射線に感光させます。その後、再びダークバックの中でフィルムを取り出し作業をして、現像して、フィルムスキャナーで画像を読み込むというプロセスを行っています。(※ 念のために原発事故の影響を受けなかった札幌市内で、赤レンガ庁舎を撮影して上記と同じようなプロセスを行いましたが、多少のフィルム劣化は見られたものも、放射線が発光している様子などはありませんでした。)
光かぶりを起こしたのではないかという心証を持ちながら、「絶対に光が差し込むことの無い空き缶の中で」と虚偽の説明をしたこと、これは捏造写真をあえて作り多くの人を騙したということに他なりません。
今回、野口氏が、科学的に放射線をフィルムカメラで可視化しようと志されたこと否定しません。しかし、科学的にあろうとするならば科学的知識は必要だし、光かぶりのような出来栄えの写真を「可視化」の目玉に据えてしまったこと、非常に残念です。これでは、捏造写真家だと言わざるを得ません。朝日新聞に長らく在籍されたフォトジャーナリストということですが、ジャーナリストを続けるおつもりならこの捏造批判に正面から答える義務がある、そう思います。