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新聞読者の投票率9割なら、新聞読書率は4割程度

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※「新聞読者の投票率9割なら、新聞読率は4割程度」から改題しています。
※新聞読者のここでの定義は一日15分以上かけて新聞を読む人で、15分未満の人を含みません。
新聞読者の9割が投票と聞くと、そんなに高いのかとまず驚きました。
http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/news/national/20130123-OYT1T01754.htm?from=ylist

衆院選、新聞購読者の9割が投票…8紙調査 : 衆院選 : 選挙 : YOMIURI ONLINE(読売新聞) via kwout

そして最初に疑ったのは、新聞読者という母集団から調査サンプリングの確かさです。こう記事にあります。

アンケートは、読売や朝日など8紙が、読者を対象に調査を行うシステム「J―MONITOR」を使い、首都圏、近畿圏、中京圏、福岡県の20~60歳代の3207人から回答を得た。その結果、衆院選で1票を投じた人は90・0%に上り、読者の投票への意識の高さが表れた。

J-MONITORとは、新聞広告共通調査のためのプラットフォームで、今回の調査は、8新聞(朝日新聞、産経新聞、日本経済新聞、毎日新聞、読売新聞、東京新聞、中日新聞、神戸新聞)は、各紙の読者モニターを対象にした共同調査として行われています。(公式サイトの発表:衆院選で新聞読者の90%が投票。新聞は選挙の争点の把握に役立った―選挙行動についての8新聞共同調査― 8紙共同「選挙行動に関する調査」結果 PDF)

調査仕様は以下の通りで、「新聞広告及びインターネット調査モニターパネルからの公募」だからより政治意識が高くて当然だろうと考えました。

【調査概要】
調査対象者:当該新聞を購読している15歳~69歳の男女個人
調査エリア:首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)、近畿圏(大阪・京都・兵庫・滋賀・奈良・和歌山)、中京圏(愛知・岐阜・三重)、福岡県
標本抽出方法:新聞広告及びインターネット調査モニターパネルからの公募。応募者を各紙ごとに全国新聞総合調査(J-READ)の当該地域・対象者の性×年齢・職業・家族人数等の属性に従い割付
調査方法:パソコンを利用したウェブ調査。
調査機関:レターヘッド:株式会社ビデオリサーチ

<選挙行動に関する調査>
標本サイズ:4,788人(1パネル約300名×16パネル)
  首都圏:朝日、産経、日本経済、毎日、読売、東京
  近畿圏:朝日、産経、毎日、読売、神戸 ※神戸新聞は兵庫県のみ
  中京圏:朝日、読売、中日
  福岡県:朝日、読売
回収数(率):3,343人(69.8%) このうち、今回の衆院選で選挙権を有していた3,207人が回答
実査日:    2012年12月17日(月)~22日(土)

とは言え、この新聞購読者の投票率9割という率が現実的なのか、購読者率を元に検証しないと話は始まりません。輿水正氏は、

日本の新聞購読者は、調査によって違うが、だいたい全人口の70%前後。

という前提で、

72百万人 x 90.0%=64.89百万人が選挙に行った計算になる。有権者の63%に相当する。

12・16不正選挙の偽投票率wは、公称59.32%=61百万人。 つまり、新聞購読者で選挙に行った人の数だけで、投票率59.32%を上回ってしまう。

新聞を読まない人が一人も選挙に行かなかったとしても、既に「偽投票率」を超えていますね、よっちゃんの酢漬けイカ。

と論じられ、投票率は実はもっと高かったのではないかという見解を述べられています。

実際の投票率は全件チェックされた数字であり信頼性は非常に高いものです。そして、それが改ざんされているとなると、整合性がとれている、マスコミの世論調査や出口調査まで改ざんということにしないと辻褄があわなくなります。そこまで疑っているかたが、新聞広告の有用性調査を目的とするパネル、J-MONITORデータを信じてしまうのは非常に不思議です。

私は、J-MONITORのデータの調査対象が偏っているのではないか?そういう仮説を持って整合性チェックをしてみることにしました。

成人の新聞読書率を推定する:
新聞の世帯購読率は、日本新聞協会が発表
しており、スポーツ紙を除くと81%にあたります。

また、成人1000人あたり459.1部発行、購読率は45.9%相当というデータもあります。ただ、いずれも本当に読まれている率とずれているはずです。新聞協会は接触率データも公開していますが、それは接触率が低い10代も含めてで、87.3%と世帯購読率よりも高くなっています。データの整合性的にも疑問です。

そう悩んでいたところで、NHK放送文化研究所の「2010年国民生活時間調査報告書」を元に不破雷蔵さんが新聞購読率データをまとめら元資料PDFにリンクされていました。このデータはユーザーに接触時間が15分以上ある媒体を調べたもので、「新聞読者」と呼ぶに適切な定義です。その元データを使い、10代の新聞読書データ分を除外して、補正したところ、読書率は40.3%となりました。

以下、世帯購読ベースのケース1、成人あたりの発行部数のケース2、そして、NHK調査「2010年国民生活時間調査報告書」ベースのケース3それぞれのケースで、非購読者の推定投票率がどうなるか試算してみました。

Newspaperelectionch1

ケース1の世帯購読者率81%に投票率90%をかけると全体投票率73%となってしまい不整合が起きます。
ケース2の部数成人比ベース購読率データは、可能な比率になりますが、まだ疑問が残ります。
ケース3は、15分以上新聞を読んでいる層という、定義にあうデータで、新聞非読者(※15分未満新聞読者も含む)も4割は投票しているとなり、肌感覚的なデータともそうは違わなくなります。

新聞読者の9割が投票した可能性は否定出来ないが、その場合読者は4割程度:
ケース3の投票率シミュレーションは、ありえないと断言できるほどの極端なものではありませんでした。
それでもなお、実はJ-MONITOR 調査パネルが、新聞読者全体とはずれているのではないか?とか、選挙に行かなかったと調査に答えにくいと感じているのではないか?とか、いくつか疑問は残ります。しかし、極端にありえないデータと証明するには至りませんでした。

新聞につての調査は、消費税の軽減税率で、新聞を軽減すべきという調査が恣意的ではないかとか批判が起きているなどかつてない厳しい目に晒されています。また調査事態は公正なものかもしれませんが、食料品、外食、などなどいろいろな生活必需品の中で新聞がどの程度の位置づけかで論じるべきでしょう。また、そもそも軽減税率という手続きを複雑化する制度が不要という識者の意見を取り入れるべきかとも思います。

その一方で、新聞読書率約4割という調査データがより信憑性を持つことになったと、いえそうです。新聞広告の効果を客観的に測るための調査パネルのデータが新聞があまり購読されてないということの証明になったという皮肉な話です。

ある意図を持って誘導する記事がそういう副作用をもたらしうる、そういう教訓が広まることを期待しています。

※1/28 追記
当初 15分以上時間をかけて新聞を読む人を「購読者」と読んでいましたが、誤解を招くことが分かりましたので「新聞読者」と訂正し、題も改めました。
新聞読率については、購読していてもちらっと見る程度で接触時間15分未満の層がどの程度あるかという変動要因が大きく、本ブログエントリーを元に論じるのは難しいと考えています。

以下のサイトなど、フィールド調査ベースの購読率データなどとチェックしていくことが有効でしょう。

ポスティング屋が調べた新聞購読率

ポスティング屋が調べた東京多摩地区月ぎめ一般紙の投函率は、朝刊ベースで、ファミリー賃貸物件は20から40%。分譲マンション40~50%前後、ワンルームでは5%以下。ちなみに戸建てだと60%以上か。

Comment(5)

コメント

morya

>新聞購読者の9割が投票した可能性は否定出来ないが、その場合購読者は4割程度
まさしく自演乙ってやつですね。

>新聞購読率約4割という調査データがより信憑性を持つことになった
この話、実は”押し紙”というキーワードが関係していると思われます。
検索していただければゾロゾロ出てきますが、要は大手新聞社の発行部数のかなりの数字は、現場の新聞販売店への強制買取により実現されている、空虚な数字であるのではないか?という話です。

現場の販売店は処分に困り、極端なケースだと販売店に配送されてきた数時間後には、配られない新聞はそのまま廃品回収に回されているらしい。
しかも、その廃品の部数分も新聞社に購入額を払わされているという悲惨な現状らしい。
新聞社がそこまで部数にこだわるのは、広告費を高く見積もる(これって広告主に対する詐欺じゃぁ?)ためらしい。
まっあくまでネット情報ですので、「らしい」と書きました。

なので、新聞購読率が実は約4割という数字はあながち不思議でもないのかもしれません。

坂本英樹

moryaさん:
今回の件については、新聞取っているけど15分とかかけては読まない層が多いという説明である程度説明がつくと考えています。押し紙については、わかりませんが、公式発行部数と矛盾するかどうかは今回の件では言えないかと。
ともあれ、新聞協会の接触率データではやたら高い新聞が、投票率もやたら高いといいう両立はしにくいデータが出て、おかげでちゃんと読んでいる人数に注目が集まる結果になりそうですね。

morya

すいません。
購読者という言葉にとらわれて、本質から離れていました。

というか自分も勘違いしていましたが、本件の数字は「購読者数」でなく「読者数」と書くべきでは?
「購」読者数というのは新聞を買った人のみの数であって、実際には買ってない人が読む(家族とか、買わないで職場やお店などに置かれている新聞を読む人)読者数のほうが今回の件にはふさわしいかと、実際に坂本さんが最後にいきついた数字も坂本さんは購読者率と書かれていますが実際には読者率ですよね。

ですから、重箱の隅をつつくようですが、今回の趣旨にそうなら表の「新聞購読者」「非購読者」は「新聞読者」「非読者」でないと辻褄があいません。

まぁ、そうなると本当の購読者数はもっと低いということになりますが・・・
その理由の一つが押し紙による部数水増しだと思います。
押し紙について調べられてないようですが、大手新聞社の押し紙の割合は発行部数の何割にもなるというデータもあるようですので、実際の購読数に各世帯の買ってない人の読む率を掛ければ、有権者数の新聞読者(購読でなく)率4割というのが、なるほどと思える数字ではあります。

あと、新聞協会の接触率データは元サイトのデータ取集方法を読むと、新聞の定期購読の契約世帯に対して調査しているようですからそもそも母集団が違います。
87.3%という新聞読者率は国民全体でなく新聞を定期購読している世帯限定の読者率ですから、高くて当然かと。

>新聞取っているけど15分とかかけては読まない層
この場合1日15分ということのようですから、TV欄しか見ない人を除外するのに都合がよい時間なのではないかと、自分は考えたのですが。

細かくてすいません。

坂本英樹

moryaさん:
ご指摘ありがとうございます。確かに紛らわしいし、「新聞購読率データがでっち上げ」という伝わり方もしているので、改題し、用語や表現を一部改めました。
なお、「新聞協会の接触率データ」は住民基本台帳からランダムサンプリングと書いてあると思います。なので、ちらっとでも見たかどうか、接触したかどうかのデータとしては考慮すべきと考えています。

morya

>接触率データの件
あぁぁっ!しまった!凡ミス!
申し訳ありません。どうも他のデータの抽出方法と混同したみたいです。
あちこち元データを見てるうちにごっちゃになったみたいで・・・すいません。

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