新聞読者の投票率9割なら、新聞読書率は4割程度
※「新聞購読者の投票率9割なら、新聞購読率は4割程度」から改題しています。
※新聞読者のここでの定義は一日15分以上かけて新聞を読む人で、15分未満の人を含みません。
新聞読者の9割が投票と聞くと、そんなに高いのかとまず驚きました。
衆院選、新聞購読者の9割が投票…8紙調査 : 衆院選 : 選挙 : YOMIURI ONLINE(読売新聞) via kwout
そして最初に疑ったのは、新聞読者という母集団から調査サンプリングの確かさです。こう記事にあります。
アンケートは、読売や朝日など8紙が、読者を対象に調査を行うシステム「J―MONITOR」を使い、首都圏、近畿圏、中京圏、福岡県の20~60歳代の3207人から回答を得た。その結果、衆院選で1票を投じた人は90・0%に上り、読者の投票への意識の高さが表れた。
J-MONITORとは、新聞広告共通調査のためのプラットフォームで、今回の調査は、8新聞(朝日新聞、産経新聞、日本経済新聞、毎日新聞、読売新聞、東京新聞、中日新聞、神戸新聞)は、各紙の読者モニターを対象にした共同調査として行われています。(公式サイトの発表:衆院選で新聞読者の90%が投票。新聞は選挙の争点の把握に役立った―選挙行動についての8新聞共同調査―、 8紙共同「選挙行動に関する調査」結果 PDF)
調査仕様は以下の通りで、「新聞広告及びインターネット調査モニターパネルからの公募」だからより政治意識が高くて当然だろうと考えました。
【調査概要】
調査対象者:当該新聞を購読している15歳~69歳の男女個人
調査エリア:首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)、近畿圏(大阪・京都・兵庫・滋賀・奈良・和歌山)、中京圏(愛知・岐阜・三重)、福岡県
標本抽出方法:新聞広告及びインターネット調査モニターパネルからの公募。応募者を各紙ごとに全国新聞総合調査(J-READ)の当該地域・対象者の性×年齢・職業・家族人数等の属性に従い割付
調査方法:パソコンを利用したウェブ調査。
調査機関:レターヘッド:株式会社ビデオリサーチ<選挙行動に関する調査>
標本サイズ:4,788人(1パネル約300名×16パネル)
首都圏:朝日、産経、日本経済、毎日、読売、東京
近畿圏:朝日、産経、毎日、読売、神戸 ※神戸新聞は兵庫県のみ
中京圏:朝日、読売、中日
福岡県:朝日、読売
回収数(率):3,343人(69.8%) このうち、今回の衆院選で選挙権を有していた3,207人が回答
実査日: 2012年12月17日(月)~22日(土)
とは言え、この新聞購読者の投票率9割という率が現実的なのか、購読者率を元に検証しないと話は始まりません。輿水正氏は、
日本の新聞購読者は、調査によって違うが、だいたい全人口の70%前後。
という前提で、
72百万人 x 90.0%=64.89百万人が選挙に行った計算になる。有権者の63%に相当する。
12・16不正選挙の偽投票率wは、公称59.32%=61百万人。 つまり、新聞購読者で選挙に行った人の数だけで、投票率59.32%を上回ってしまう。
新聞を読まない人が一人も選挙に行かなかったとしても、既に「偽投票率」を超えていますね、よっちゃんの酢漬けイカ。
と論じられ、投票率は実はもっと高かったのではないかという見解を述べられています。
実際の投票率は全件チェックされた数字であり信頼性は非常に高いものです。そして、それが改ざんされているとなると、整合性がとれている、マスコミの世論調査や出口調査まで改ざんということにしないと辻褄があわなくなります。そこまで疑っているかたが、新聞広告の有用性調査を目的とするパネル、J-MONITORデータを信じてしまうのは非常に不思議です。
私は、J-MONITORのデータの調査対象が偏っているのではないか?そういう仮説を持って整合性チェックをしてみることにしました。
成人の新聞読書率を推定する:
新聞の世帯購読率は、日本新聞協会が発表しており、スポーツ紙を除くと81%にあたります。
また、成人1000人あたり459.1部発行、購読率は45.9%相当というデータもあります。ただ、いずれも本当に読まれている率とずれているはずです。新聞協会は接触率データも公開していますが、それは接触率が低い10代も含めてで、87.3%と世帯購読率よりも高くなっています。データの整合性的にも疑問です。
そう悩んでいたところで、NHK放送文化研究所の「2010年国民生活時間調査報告書」を元に不破雷蔵さんが新聞購読率データをまとめら元資料PDFにリンクされていました。このデータはユーザーに接触時間が15分以上ある媒体を調べたもので、「新聞読者」と呼ぶに適切な定義です。その元データを使い、10代の新聞読書データ分を除外して、補正したところ、読書率は40.3%となりました。
以下、世帯購読ベースのケース1、成人あたりの発行部数のケース2、そして、NHK調査「2010年国民生活時間調査報告書」ベースのケース3それぞれのケースで、非購読者の推定投票率がどうなるか試算してみました。
ケース1の世帯購読者率81%に投票率90%をかけると全体投票率73%となってしまい不整合が起きます。
ケース2の部数成人比ベース購読率データは、可能な比率になりますが、まだ疑問が残ります。
ケース3は、15分以上新聞を読んでいる層という、定義にあうデータで、新聞非読者(※15分未満新聞読者も含む)も4割は投票しているとなり、肌感覚的なデータともそうは違わなくなります。
新聞読者の9割が投票した可能性は否定出来ないが、その場合読者は4割程度:
ケース3の投票率シミュレーションは、ありえないと断言できるほどの極端なものではありませんでした。
それでもなお、実はJ-MONITOR 調査パネルが、新聞読者全体とはずれているのではないか?とか、選挙に行かなかったと調査に答えにくいと感じているのではないか?とか、いくつか疑問は残ります。しかし、極端にありえないデータと証明するには至りませんでした。
新聞につての調査は、消費税の軽減税率で、新聞を軽減すべきという調査が恣意的ではないかとか批判が起きているなどかつてない厳しい目に晒されています。また調査事態は公正なものかもしれませんが、食料品、外食、などなどいろいろな生活必需品の中で新聞がどの程度の位置づけかで論じるべきでしょう。また、そもそも軽減税率という手続きを複雑化する制度が不要という識者の意見を取り入れるべきかとも思います。
その一方で、新聞読書率約4割という調査データがより信憑性を持つことになったと、いえそうです。新聞広告の効果を客観的に測るための調査パネルのデータが新聞があまり購読されてないということの証明になったという皮肉な話です。
ある意図を持って誘導する記事がそういう副作用をもたらしうる、そういう教訓が広まることを期待しています。
※1/28 追記:
当初 15分以上時間をかけて新聞を読む人を「購読者」と読んでいましたが、誤解を招くことが分かりましたので「新聞読者」と訂正し、題も改めました。
新聞購読率については、購読していてもちらっと見る程度で接触時間15分未満の層がどの程度あるかという変動要因が大きく、本ブログエントリーを元に論じるのは難しいと考えています。
以下のサイトなど、フィールド調査ベースの購読率データなどとチェックしていくことが有効でしょう。
ポスティング屋が調べた東京多摩地区月ぎめ一般紙の投函率は、朝刊ベースで、ファミリー賃貸物件は20から40%。分譲マンション40~50%前後、ワンルームでは5%以下。ちなみに戸建てだと60%以上か。