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iPhone 5でなぜテザリングが注目され、イーモバイル買収になったのか?

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確かに、本当にテザリングを使う人なんて知れているはず。だから、こういうテザリングで騒ぎすぎという批判エントリーが出てくるのは分かります。類似の趣旨で、一部で話題の日経ビジネスの記事 "「声なき声」に耳を傾けているか 小板橋 太郎" も、大多数に関係ないことで騒ぎすぎと批判しています。。

先端ユーザーはいろいろ騒ぐが、それって大多数の人には関係ないでしょ?と。

しかし、それは大きな誤解です。

先端ユーザーの動向や先への見通しに一般ユーザーは大いに影響をうけます。しかもテザリングは、あった方がよさそうという以外に、できるネットワークの方が優れているのでは無いか、そんなイメージを持たせる機能です。

  1. テザリングは日常的に使う予定もないけど、あれば困らないし、ついていた方が便利そう
  2. テザリングはネットワークに負荷をかけるそうだけど、それをすぐに始められるauの方がネットワークに余裕があってiPhoneの使い心地もいいのではないか?

そんな、イメージでiPhone 5ならauへ という大きな流れができたのでしょう。実際の、携帯電話MNPの統計は差し引き以下の通りで、ドコモ一人負けのほとんどをKDDI/auが吸収して、ソフトバンクモバイルは横ばいでした。

http://www.yomiuri.co.jp/net/news/mobile/20121005-OYT8T01187.htm

auがMNP12か月連続首位、純増数はソフトバンク…iPhone5が牽引 : スマホ : ニュース : ネット&デジタル : YOMIURI ONLINE(読売新聞) via kwout

この数字をどう見るかですが、ソフトバンクモバイルが緊急で行った二つの施策

  1. テザリング開始を宣言
  2. イーアクセス・イーモバイル買収によりテザリングを一ヶ月前倒し

をみても、テザリングショックが大きく、何も手を打たなかったら、MNP純減への転落が確実だったと考えられます。

マーケティングは、人々の「脳内」へいかに印象を残すかが大事です。テザリングが注目されてこれがiPhone 5の選択のベンチマークになってしまうと、勝負が決してしまう可能性がありました。リードはされてはいても健闘しているという印象を残すのは非常に大事だったろうと思います。

結局のところ、消費者は夢、あこがれ、イメージで動きます。どうせ買うなら、いい方を買いたいのです。ソフトバンクはプラチナバンドCMでこれから良くなるというイメージをだしました。しかし、その電波状況が大事というキャンペーンを逆手にとられるような、テザリングという指標で劣勢になりかけていました。そこで負けないために非常にマーケティング戦略的に重要なポイントになったわけです。

かつて、「プラス100ccの余裕」 「隣のクルマが小さく見えます」というプロモートでカローラがサニーを大きくリードしました。実際の走りや居住性ではサニーの方がよかったという声もありますが、分かりやすい差別化ポイントでトヨタの方が売り込みが上手かったようです。

自動車のエンジンの排気量はすぐに変えられませんが、携帯電話のテザリング制限は数ヶ月で変えていくことも可能なところで、ソフトバンクが次の手を打ったわけです。ここが勝負とまだまだいろいろ施策を予定しているところでしょうし、auのカウンターも予想されます。今後2社の動きから目が離せません。

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