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AERA"「犯罪」多い街・少ない街"- データ音痴相手商売 の矜持

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物事を語るのにデータに基づくべきというのは基本的なことです。しかし、AERAはデータを使って本質的な分析は違うとろこにあるとわかっていて見出しで恐怖を煽っています。

雑誌があまり売れない時代に、恐怖を煽り、主流派のマスコミで書かないことを書くという手法は売上につながりやすいのかも知れませんが、本体の記事を書いた記者の洞察をあえてミスリードする見出しを恣意的につける編集部の姿勢は批判を受けるべきでしょう。

朝日新聞社の週刊誌AERAでこういう中吊り広告が出ました。"「犯罪」多い街・少ない街"という気になる見出しで、名指しされたのは

増加率東京トップ3は「江東区北砂2丁目」「武蔵村山市榎1丁目」「足立区西新井栄町1丁目」
Aeracrime_2

でした。
小特集の記事中、名指しされた3つの区域への言及はほんのわずかです。商業地で発展したからとかさらっと触れられただけです。見出しに釣られて買った人々は、その前の秋葉原での犯罪増加の描写に流されて、繁華街かで犯罪増加 とかいう理解をすることでしょう。
(その秋葉原での犯罪増データも、元青果市場の再開発が大きく影響しているようです。データが劇的に変わる場合多くは、実質面積の増加とか明確な理由があります。)

しかし、実態は大きく違います。

3つの地域全部が元々、駅や工場の跡地で人が立ち入らない広大な地域がショッピングセンターなどに再開発されて、人が集まり、万引き(窃盗)などの繁華街特有の犯罪が起きうるエリアに変貌を遂げた地域です。昔江東区に住んでいたから知っているのですが、北砂2丁目は、旧小名木川駅跡地&操車場という人が立ち入れないエリアでした。そこにショッピングセンターができたら街が大きく変わって当然です。

Google Earthの過去の航空写真と現在の写真と見比べるとその差は歴然です。2007年、広大な空き地だったところに何か建物ができたことが分かることでしょう。

Kitasuna2007 Kitasuna2010

2007年時点で人が立ち入れない広大な操車場跡地がほとんどを占めていた北砂2丁目に、ショッピングセンターとマンションができて賑わいができたら…統計が大きく変わって当然です。

そういう地域を犯罪増加率トップとして名指しする朝日新聞社の商売への情熱は分かりますが、見出しにあわせての謎解きと、本質的には犯罪が増えたではなく商業地として変貌したということを伝えるべきです。
武蔵村山市榎1丁目は日産の工場、足立区西新井栄町1丁目も日清紡の工場跡地であり、そういうところを取り立てて取り上げて、犯罪が増えたと煽る。AERAはその程度の雑誌であり、放射性物質汚染絡みも非常に不正確でデータ分析に誤りが多い雑誌ですが、間違っているものは間違っていると批判は続けていくべきでしょう。

週刊誌にデマが多いとネット上で認識され、週刊誌はますますそんなデータ収集しない層向けに低俗な記事を書かないと売れない、見出しで煽らないと売れないそんなサイクルが働いているようですが、低俗に流れる雑誌への是々非々の批判はますます今後必要になることでしょう。

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