オルタナティブ・ブログ > データイズム >

記録するジャーナリズムから、測って確かめるデータイズムへ

「mixi の利用者数が激減」という誤解を産んだ、グラフの罪とミクシィの斜め上の抗議

»

「mixi の利用者数が激減」という誤解が広まり、

ミクシィ、“ユーザー激減”に反論 ネット調査会社に説明求める
ネットレイティングスの調査結果について「mixiのユーザー数が激減した」という解釈、報道が「利用実態に大きく誤解を与える」としてミクシィが反論。[ITmedia]

と報道されています。ただこの記事、不思議なところがあります。リンクを含めての引用します。

ネットレイティングスはこのほど、10月度のインターネット利用動向調査で、一般家庭/職場のPCユーザーからのmixiの利用者集計方法を変更したところ、前月の1472万人から838万人へと減少したという結果を明らかにした。4割近い減少について、同社は「ユーザーがmixi以外の外部サイトでmixiの『イイネ!』ボタンを押した際にリクエストされるmixiドメインのURLを集計対象外にした」などと説明。Facebookユーザー(1131万人)がmixiを初めて上回ったとして話題になった。

とある、明らかにした のリンクはネットレイティングスではなく、looops 斉藤氏のブログの以下のエントリーへのリンクなのです。実際のところネットレイティングス社からの公開情報はありません。そしてこのエントリーでは「推定利用者数が大幅減」という見出しとともに、急落するグラフを冒頭にも載せ、エントリー中には大きく掲載されています。
http://media.looops.net/saito/2011/11/21/nielsen_201110/
http://media.looops.net/saito/2011/11/21/nielsen_201110/
mixi, Twitter, Facebook, Google+, Linkedin 2011年10月最新ニールセン調査。mixiの集計方法に変更があり、推定利用者数が大幅減 in the looop 斉藤徹 via kwout

http://media.looops.net/saito/2011/11/21/nielsen_201110/

mixi, Twitter, Facebook, Google+, Linkedin 2011年10月最新ニールセン調査。mixiの集計方法に変更があり、推定利用者数が大幅減 in the looop 斉藤徹 via kwout

前述の通り、mixiは調査方法に変更があり、3位に後退した。「イイネ!ボタン」が導入されたのが昨年の12月であることから、12月以降、緩やかに上昇していたグラフは、実際は減少に転じていた可能性が考えられる。Google+は減少に転じた。Linkedinにも大きな伸びは見て取れない。

オリジナルのネットレイティングス社の調査データがどう表示されていたのか、上のようなグラフもあったのかは未確認なので、断定的なことは言い難いのですが、今回「mixi の利用者数が激減」という誤解が広まった一番の原因はlooops 斉藤さんのこのグラフと見出しの書き方だと思います。

調査方法が変わったと把握し、連続的な比較はできないと理解しておきながら急減するグラフを載せるのは不適切です。たとえ元資料にあったとしても、問題を理解していたのならば連続した線を切ったグラフにすべきです。また、「イイネ!ボタン」が始まり違う基準でデータが測られている期間もわかっているのですから、例えば以下のようなグラフであればより誤解も減ったろうにと思います。

Mixiloops

2010年12月から2011年9月までのmixiのデータは参考値扱いにすべきで、同じ測定基準間の比較で「急減」は起きてないので、実態としても無かったと推定されます。
「大幅減」と見出しに書き、誤解を招くグラフを載せたloops 斉藤さんにこそ、この騒動の責任があり、抗議するなら斉藤氏にすべきと思います。

この問題の本質を、株式会社ミクシィの方が誤解されているようなのが非常に残念です。抗議のリリース文全体を引用します。

2011年11月25日
株式会社ミクシィ

「ニールセン・ネットレイティングス ネット視聴率(2011年10月度)」に関する当社の見解

ニールセン・ネットレイティングス社「ネット視聴率調査」(2011年10月度)の結果をうけて、当社サービス「mixi」の利用実態に大きく誤解を与える解釈、報道等がなされております。

 

これは、ニールセン・ネットレイティングス社が、他社サービスについては既に対象外としていたデータを当社サービスについて2011年10月度の集計より対象外としたことにより、当社のみユーザー数が大幅に減少したかのような印象を与える内容となっているためです。

 

なお、当社では自社データの調査を実施しておりますが、利用者数に関して、報道等で見られるような大幅な減少はございません。

 

当社サービスは、各デバイスを併用するユーザーが多く、約5割がPC、約8.5割がモバイル・スマートフォンからのアクセス(重複あり)となっており、ニールセン・ネットレイティングス社が集計するPCからのアクセスのみのデータは、当社サービス全体を表したものではありません。

 

当社としましては、現在、このような誤解を与える解釈、報道等が生じる調査を行ったニールセン・ネットレイティングス社に対して、公式説明を求めております。

また、集計方法による数字の不連続な変化はありとして、「大幅減」とか「激減」とかいう解釈をし始めたのは恐らくlooops 斉藤さんです。少なくともネットレイティングス社の言葉としては世に出ていません。

当社のみユーザー数が大幅に減少したかのような印象を与える

主体は斉藤さんであって、これをなぜネットレイティングス社に抗議するのか不可解です。

また、問題と違う箇所も話題にし、抗議の対象に含めているのが広報対応的に不適切で残念です。PC以外のアクセスも多いというのは分かりますが、外部調査機関から同じ基準では測れないものは一緒にして調査発表できません。PCのみの調査発表を行なっていることを抗議するのは適切とは思えません。

ついでに記すと、抗議文にもかかわらず、元データを作った主体の社名が 「ネットレイティングス株式会社」なのに、「ニールセン・ネットレイティングス社」と間違えていて残念です。

ともあれ、誤解の発生源ではなく、その元データを発表した会社に対する、株式会社ミクシィの斜め上の抗議は、ミクシィこんな対応で大丈夫か?と不安を覚えずにはいられません。

11/27 追記 loops → looops に社名修正しました。失礼しました。

Comment(7)