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成人T細胞白血病(ATL)対策普及を願って:「玄海原発周辺で白血病が増加 全国平均の6倍」の真実

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私の故郷、佐賀県唐津市、その隣町の玄海町には九州電力玄海原子力発電所があります。
その玄海原発に関する話題の一つで、「玄海原発周辺で白血病が増加 全国平均の6倍」という情報を流したサイトがあります。
この情報には二つのこと、1)「玄海原発周辺で白血病が増加」と2)「全国平均の6倍」ということがあるのですが、果たしてこれは真実なのでしょうか?まずは結論を急がず、順を追ってデータを見てみましょう。

こちらは、先のサイトのデータに、玄海町の人口、7000人台から6000人台へ減少中という情報から死者数を逆算したデータを足した表です。

人口10万人あたりの白血病による死者数
  佐賀県 唐津保健所管 玄海町 玄海町ゲンカイチョウでの死者数シシャスウ 玄海町ゲンカイチョウ概算ガイサン人口ジンコウ
平成10(1998) 8.4 12.5 26.5 2 7600
平成11(1999) 8.2 9.1 26.6 2 7600
平成12(2000) 8.9 16.3 43 3 7000
平成13(2001) 8.9 12.1 28.7 2 7000
平成14(2002) 7.2 11.4 29.2 2 6850
(98~02 平均) 8.3 12.3 30.8 2.2 7210
           
平成15(2003) 7.8 13.6 0 0 6700
平成16(2004) 10 19.5 88.3 6 6700
平成17(2005) 10.7 15.3 14.9 1 6700
平成18(2006) 8.5 13.9 30.1 2 6700
平成19(2007) 9.2 16.3 61.1 4 6500
(03~07 平均) 9.2 15.7 38.8 2.6 6660

まず、玄海町で白血病による死者数が相対的に多いのは確かそうです。県平均やそのとなりの唐津の平均よりも2倍以上多くなっています。白血病は小児性の印象が強いでしょうが、実は高齢者に多い病気であり、年齢構成による補正が必要なのですが、それでもなお、玄海町では多そうなことが推察できます。

しかし、「白血病が増加」しているかというと、統計的に有意に増えているとは言いがたいこともわかります。何しろ、0人から6人と年によりおおきくばらついており、「傾向」を読み取るのは無理です。また過疎高齢化が進展しており、その分の自然増も起きるはずです。

さて、「全国平均の6倍」という数字は正しいのでしょうか?また、「原発周辺で」と原発立地と白血病増大の因果関係がありそうなことを匂わせるこの見出しは妥当なのでしょうか?この答えは、九州の有力紙、西日本新聞の「 HTLV1対策元年:九州の54市町 全国比2倍超 03―07年の白血病死亡率 ATL多発 要因か 本紙集計 感染予防 地域で格差」にありました。

白血病発症の大きな要因、成人T細胞白血病(ATL)の原因となるウイルス、HTLV1感染者が九州で多く、それも市区町村によって大きな差があるというのです。西日本新聞はこう報じています。

九州の全市町村のATLを含む白血病の死者数を記載した厚労省の人口動態統計を入手。高齢化の影響を補正した上で、全国平均を1として死亡率の高さを示す「標準化死亡比」(SMR)を算出した。

 その結果、03―07年のSMRは長崎県では最高6・33倍、佐賀県では6・15倍、鹿児島県では5・81倍の町があった。

そして、図を掲載しているのですが、一部拡大し、玄海町と唐津市の場所を追記してみると、その補正値でも高い町というのは、佐賀県では玄海町であることがわかります。

Genkaiatl
(出所西日本新聞:2003~7年の白血病の標準化死亡比 SMRが高い地域 より抜粋 濃い青は 2.5倍以上、薄目の青は1.5倍以上)

玄海町は、孤立して高い = 原発周辺で と思うかも知れませんが、周辺の小規模自治体、肥前町や呼子町が唐津市に合併して、より統計として見えなくなっています。また、長崎県でもATLが多い自治体として、玄海町の属する東松浦郡と元々一体性を持つ、北松浦郡地域(松浦市、平戸市など)そして南松浦郡地域(五島など)、そして、海の先、壱岐対馬が高いことが分かります。

「原子力発電所周辺で白血病が多い」という見方は皮相的なものであり、壱岐対馬と旧松浦郡地域でHTLV1は深刻な問題だと分かります。

HTLV1はウィルスであり、母子感染は対策で防げるそうです。

HTLV1感染対策という課題をより多くの人が知り、正しい知識を持ってより害を減らしていくように対策をすすめることが重要でしょう。

最後に、個人的な思いを。唐津に残る妹に電話したのですが、白血病が多いことを真剣に不安に思っていました。疫学的にはその原因と対策が明白です。そして、これはごく一部の問題ではなく、九州各県でも深刻な自治体があります。感染を防ぐ方法は分かっているし、発病率も低いウィルスなのですから過度に恐れたり偏見を持ったりすること無く、適切な対処をすすめるべきです。

最近、国は、対応が揺れ突然心変わりしたりなど、地方は振り回されどおしに見えます。政権は、「源氏物語」玉鬘にある歌のように、誠意を誓って守ってほしいものです。

君にもし心たがはば松浦なる鏡の神をかけて誓はむ

この鏡の神は、反乱で非業の死を遂げ、怨霊化したとされる、藤原広嗣か、はたまた、神功皇后か?ともかく、地方をなめてもらっては困るのです。

Comment(8)

コメント

「九州の全市町村のATLを『 含 む 』白血病の死者数」ですよね。成人T細胞白血病の原因ヘテロウイルスのキャリアであることが原因なのか、はたして近辺に原発があることが原因なのか、原因として考えられることに関しては何か特に記述はありませんでしたか?
 まあ、しかし、確かにこのウイルスのキャリアは九州地方に偏って分布しているという話は聞いたことがありますので、原発があるから白血病の発病率に影響があるのだという決めつけに対しては一定の反論する効果のあるデータだとは思います。
 キャリアの分布データに関しては以下のページの図表53が参考になると思います。
 http://ganjoho.jp/public/cancer/data/ML_histology.html

坂本英樹

PNNworldさん
原子力発電所との因果関係の検証は見当たらなかったので、それが妥当かとかは分かりません。ただ、HTLV1によるATL発症は因果関係がはっきりしこれだけ深刻な課題です。ご紹介いただいた資料を見るに、九州だけの問題でもない、地域によってはしっかり取り組むべき課題なので、そこは分かってることからしっかり取り組むべきかと思います。

AK

そのHTLV1については宮崎市の友人から聞いたことがあります(ちなみにその方は50代、陽性)。
長崎県、鹿児島県、宮崎県では非常に真剣に取り組んでおられるようですが、佐賀県はそうでもないのでしょうか。

坂本英樹

AKさん、
私は故郷を離れて長いのでいまの正確な状況は分からないのですが、唐津市のWebサイトには情報が載ってないのでまだまだ遅れているのではと懸念しています。

YTT

はじめまして。
HTLV-1 感染は母乳を介する母児間の垂直感染がもっとも大きな感染経路とわかっていますので、妊婦検診で普通抗体検査を行うはずです。そして、陽性のお母さんには残念ながら母乳での育児を諦めていただくように指導します。(20年ぐらい前から取り組みがなされていると思います)
ですから、新たに感染する赤ちゃんは確実に減少していると思います。
感染した方が高齢になり、ごく一部とはいえ白血病/リンパ腫を発症するのをどう防ぐかが問題になってきていると思います。

2011年から4年も経ちました。本日この箇所を拝見しました。URLはないのでメールアドレスを書きました。原発排気筒からの放射性物質の影響をほんとうに感がなくてもよいのでしょうか。いまその調査研究をしています。玄海原発周辺の健康影響は原発からの距離に関係して白血病が高くなっています。もちろん年齢調整死亡率の結果です。

さきほどのコメントにおいてメールアドレスにミスがありました。koba@mx.ibaraki.ac.jp が正しい

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