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リスクと偶発性(コンティンジェンシー)、そしてマーフィーの法則

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一時期流行った「マーフィーの法則」という警句というか、ジョーク集をご存知でしょうか?

"If it can happen, it will happen." 「起こる可能性のあることは、いつか実際に起こる。」
そして、「失敗する余地があるなら、失敗する」

といった、実感に合うことばが散りばめられています。今回の東電福島第一の事故を見ても防げたことではあるけど、起こりうることは実際に起きるというこの法則の発動を実感せざるを得ません。

この言葉がシステム開発の現場で愛されたのは、起きる余地があるバグは発生するし、運用ミスでの障害も起きうる体制だと実際に起きる、そんな経験則というか感覚にあう言葉であり、警句になっていたからでしょう。ええ、残念ながら私もその法則の真っ只中にぶちあたったことがあります。幸いそのトラブルはなんとか対応できたのですが、ともかく、起きうることは起きるからどうにか最悪の問題は起こさないような設計が重要だとシステム開発屋として実感していました。

例えば私がかつて関わったクレジットカードシステムだと、システムのバッチ処理を止めたり、間違ったクレジットカードが発行されたりということはどうしても防がねばなりません。想定されない、データが飛び込んできたら、正しくエラーを通知して正しいデータの悪影響は最小に抑えねばなりません。

計測可能なリスクという観点からすると非合理な「マーフィーの法則」

有意義な警句でもある「マーフィーの法則」は、不合理な冷笑の対象とされる側面もあります。自動車との交通事故とか、トーストを落としたらバターを塗った面が下になって落ちるとかの確率は統計的に推定できるものであり、「起き得るなら、起きる」などというのは非科学的なことに見えました。

(実際、トーストの落ちる面については十分な回数実験したら頻度主義による客観確率が導き出せると思います。)

今こそ、不確定なリスク≒偶発的事態(コンティンジェンシー)に備えマーフィーの法則を見なおそう:

現代の社会システムは、コスト削減のためのサプライチェーン整備による在庫の極小化など高度に相互依存した非常に複雑なものになっています。ある問題がどう波及しうるのか予想をしにくいというよりは不可能に近い「複雑系」になっているわけです。

このように、単純な対処が効かない現状にあって、頻度主義による確率的リスク対処は有効ではありません。書籍「ブラック・スワン―不確実性とリスクの本質」で経済などの面で広く認識されるようになった、過去の経験では予想もつかない、不確実性、地球の裏側に行ったら黒い「白鳥」が居たという想定外の事態に向きあわねばならなくなっています。

と難しく書きましたけど、要するに

"If it can happen, it will happen." 「起こる可能性のあることは、いつか実際に起こる。」
そして、「失敗する余地があるなら、失敗する」

わけです。だからって諦めずに、「収束できることは収束される」とか信じて、問題に対処すべきです。

「事故対応マニュアルはあったのか?」 などというもうレベルが低い質問は止めて、起きうることに対応できる体制や資源、バックアップ体制などを問うべきでしょう。

そして、様々な偶然の結果、今、人類が生きていること、文明と知恵を持って様々なチャレンジをしてきたことを感謝し、よりよい現在、近未来、そして少し遠い未来へ何ができるのかということから行動していきたいと思います。

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