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ニセ科学についてのすばらしいレジュメと「血液型性格診断」の害

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長崎大学教育学部 准教授の長島雅裕先生のニセ科学についてのレジュメがすごくとても参考になりました。Twitterで知って紹介したのですが、リツイートがリツイートを呼ぶ展開のようで広まっています。資料はこちらです。

ニセ科学・科学リテラシー関係

この資料を踏まえてなお、血液型については経験的に当てはまるのではないか といった反応もいただきました。難しい資格を持つ集団でB型がかなり多いとかです。日本、韓国、台湾と血液型性格診断が信じられている地域では、「B型は変わり者だ」とかいうレッテル貼りがあるゆえに結果としてそう育つ、という可能性があることは否定できません。しかし、それは思い込みによる誤解、統計的な処理を経ない故の誤りも含まれているように思います。

私は統計学を系統だって学んだことは無いし、頻繁に使うわけでもありません。しかし、私自身の手で血液型の世間的な認識が神話なのかどうか検証したく、分析してみました。SurveyMLという専門家集団に見ていただき、間違いや誤解を招きそうな点は、修正・加筆していく所存ですので、その点理解をよろしくお願いします。

例1: Business Media 誠:血液型で見る、歯ブラシ1本の交換期間 (1/2) via kwouthttp://bizmakoto.jp/makoto/articles/0811/11/news053.html

場を貸してくださっている、ITmedia の記事を批判するのは気がひけるのですが、批判するエントリーがすでにあり、参考にさせていただきつつ、ありがちなミスの典型例として紹介させていただきます。感覚的に正そうに感じることが実は統計的には意味が無かったり間違っているという例です。

異性からモテるためには「白い歯が必要」と考えている人は、どの程度いるのだろうか。全体では「重要」と考えている人の割合は57.9%。しかし血 液型で見るとバラつきがあり、「重要」と感じているのは、「O型の女性」が最も多く71.0%、逆に「重要でない」と答えたのは、「A型の男性」で 49.6%だった。

 インターネットによる調査で、全国の300人(男女150人ずつ)が回答した。調査時期は10月上旬。

サンプル300、何かの調査には十分な数な気がしますね。テレビでは100人に聞きました、程度が多いです。しかし、血液型別のデータを論じるには実はかなり少ないサンプルなのです。

そして、血液型の男女というそもそも志向が違う集団を混ぜて論じた書き出しに首をひねらざるを得ません。

サンプリング誤差(調査結果の精度)とサンプル数の関連を見る早見表を引用します。サンプルが300の場合です

http://www.geocities.co.jp/WallStreet/7166/how/sam.htm

サンプル数 サンプル数 n 300 300 300 300 300 300 300 300 300 300
300 普及率 p 5.0% 10.0% 15.0% 20.0% 25.0% 30.0% 35.0% 40.0% 45.0% 50.0%
サンプリング誤差 2.5% 3.5% 4.1% 4.6% 5.0% 5.3% 5.5% 5.7% 5.7% 5.8%

ここでの普及率は、該当率と読み替えられる項目です。300人に聞いて半分が該当するようなデータについては、調査結果の精度はプラスマイナス5.8%で一方5%のデータについてはプラスマイナス2.5%となります。サンプル300ではそれなりの調査となりますが、それなりの誤差が含まれるわけです。(サンプルが均等に集まっているか、そもそも該当率が正規分布するようなデータかそれとも、かけ離れたデータが多数あるようなものかということは別途吟味が必要です。)

しかし、以下のような個別の血液型ごとでのデータ分析ではサンプルが変わっていることに気づく必要があります。

また血液型によっての違いを見てみると、1カ月以内に歯ブラシを交換している割合が多いのは「B型」(29.9%)、「A型」(26.8%)、「AB型」(23.0%)、「O型」(19.9%)と続き、B型とO型では10ポイントの開きがあった。

という考察。300名中のO型やB型は日本の平均的な分布の比率居たと仮定すると、O型90名、B型60名であり、それぞれがサンプルになります。300名に聞いたと引用しつつそのサブ集団での分析なのでここは要注意です。、サンプル数が少ない場合の早見表がGoogleのキャッシュに残っていて非常にすばらしいので引用いたします。
www.thinkto.co.jp/common/img/E2.pdf のキャッシュより
Samplingchartt 誤差はO型でサンプル数90の誤差8.4% B型でサンプル60の誤差11.8%となります。つまり、O型は信頼水準95%で11.5%から28.3%、B型は18.1%から41.7%だったと読むべき調査結果でした。
「10ポイント開きがある」と見えたものが、統計的処理を行うと、「サンプルが少なすぎて比べられない」というのが妥当な結果なのです。

例2:衆議院議員の血液型分布データ
http://taki.cool.ne.jp/ph/bl/5.htm#%E8%A1%86%E8%AD%B0%E9%99%A2

次に、衆議院議員の数を見て見ましょう。

5.『血液型エッセンス』(1977年)から        

http://taki.cool.ne.jp/ph/bl/5.htm

「血液型エッセンス」(1977)から via kwout

 「この衆議院の代議士さんのように、四百人を超えながら、これだけのパーセンテージのズレを示すものはない」。
     「まず、O型が多いのに驚く。AB型も、かなりの伸び率を示している」。「この〔カイ2乗〕検定を行なうと、衆議院の代議士さんの血液型分布のズレは、5パーセントどころではない。危険率           0.1パーセント以下。偶然の入りこむ余地がゼロに近いという、きわめて高い有意性を得るのだ」。

カイ2乗という統計用語で一見すごそうです。しかし、サンプル400で確率4割の事象でプラスマイナス4.9%の誤差、確率1割の事象でプラスマイナス3%の誤差があります。このデータが正しいとすれば確かに、統計的に有意な偏りがありそうとは言えます。しかし、血液型による性格診断支持の方から、当時の参議院議員のデータや後の衆議院議員のデータは提示されていません。

O型とAB型が多いことが性格診断から考察されていますが、時代によって逆の結果が出ている可能性があるのに、特定の年のデータを切り取って根拠とするのは問題が多いと考えます。また、当時の衆議院議員が正しい血液型を公開していたか、またデータ処理が正しく行われたかに疑問が残ります。

O型とAB型が持ち上げられていたとして、だったら選挙に有利になるとOやABと答える議員が多かった可能性は否定できません。

また、能見氏の著作には誤りや改ざんが多いという指摘があります。こちらのサイト

http://grabby.web.infoseek.co.jp/type_b/volume7/bst721_beginning.html
http://grabby.web.infoseek.co.jp/type_b/volume7/bst722_celeb.html

では、有名な著作が改版の情報とともに中身も摺りかえられたと指摘されています。

■ 血液型でわかる相性 能見正比古 0200-110100-3822 第1刷 青春出版社 1971
■ 血液型でわかる相性 能見正比古 0200-110105-3822 第198刷 青春出版社 1982
■ 血液型でわかる相性 能見正比古 ISBN4-413-01101-5 第235刷 青春出版社 1989

同じタイトルにもかかわらず、時代によって著名人の血液型が説明無く書き換えられているというのでは、能見氏調べのデータは分析の基礎資料として使わないほうがいいと判断すべきでしょう。

まとめ
疑似科学の中でも血液型性格診断は便利な話題として使われます。信じる女性も多いので、酒の席で話の腰を折るのは気がひけることもあります。しかし、疑似科学を放置することは、社会の発展を妨げる、悪い風習を助長していることだと思います。

例えば、かつては女性は内助の功、良妻賢母を目指すべきという考えが支配的でした。その後、男女雇用機会均等法の施行などで日本社会も徐々に変わりつつあります。「女だから」という固定観念を取り去ると、昔の日本はいかに社会的ロスが大きかったのか、そして他の先進国と比べてまだまだ発展途上だということを思い知らされます。

血液型性格診断も似たような弊害があるのではないでしょうか? 個性的な人が社会の少数派だなどと誰が決めたのか?そして縛られればならないのか?血液型性格診断という迷信を捨て去さることはとても重要なことじゃないか、そう考えています。

関連エントリーもご覧ください。:AB型は免疫力が低い1000年前登場の新人類!?日本テレビ深イイ話であまりにニセ科学な話 2010/02/09 社会

 

2/8 1:00 追記
サンプルと母数の用語が間違っている箇所を直しました。

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