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失敗体験を語れるようになること

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成功体験よりも失敗体験の話の方が若者に響く

社会人になり間もなく12年になります。ベンチャーでありがちな上っ面を、さも「凄いぞ、新しいぞ」と伝えていた頃に比べると少しは、自分の言葉で、自分の体験と、自分の考えを話せるようになってきた。

新卒採用セミナーや学生団体の学生向けに、ベンチャー企業で働くことについて話をする機会を頂き話をしていると、毎回最も響いているのが、僕自身の「失敗体験」についてでした。
成長率 折れ線グラフ - イラスト素材
(c) Shadowmanイラスト素材 PIXTA

20代の若者の感度は高く、純粋。彼らの反応が、僕の「これを伝えたい。この成功体験はどう?」というパートには、きっと他のセミナーや、偉人たちの書籍やテレビで聞き慣れてしまっているのか大した話に聞こえず、彼らの本能が自分たちに足りず求めているのはそういう「失敗体験」だと感じているのかもしれない。


奥山清行(Ken Okuyama)氏について

そんな中、知人から奥山清行(Ken Okuyama)さんというフェラーリやポルシェをデザインした方の書籍「人生を決めた15分 創造の1/10000」を頂き、読んでいると「失敗体験」について何度も語られていた。


フェラーリをデザインした奥山さんと言えば、この秋CEDEC2011で講演された紹介記事を、8000件近くのツイッターや、3000件以上のはてぶで、目にした方もいるかもしれません。

いつ来るか分からない15分のために常に準備をしているのがプロ、デザイナー奥山清行による「ムーンショット」デザイン幸福論

このエントリーは、非常に内容豊富で長文ですが、一読をお薦めします。例えば、キャリアに関して、以下のように紹介されています。


「日本の特に若い人に強く言いたいんですけれども、勘違いしているのは、若い人が特に勘違いしているのは、自分は会社とか仕事から得るものだけ得て、一番得た時点で次のステップに移っていくのがキャリアアップである、と。実はこれ大きい間違いでして、自分が与えたものと相手からいただいたものの中で、相手にあげた方の大きい場合に、次の仕事につながります。これはアメリカとかヨーロッパの契約社会で非常に重要な考え方で、得たものよりも与えたものの方が多いことが大切なんです。それでこの人間は優秀であるという名声が広がって、きちんとしたお給料なり、それに対する対価をいただいて、次の仕事をもらうという仕組みを作るのが、実はプロとして非常に大切なこと。」


まさにこのことは、大企業だけでなく、ベンチャー企業で働く人たちにも伝えたい。僕が今の会社を辞めない一番の理由は、会社から頂いたもの以上のお返しがまだできていないからです。それができていないのに、次の環境でそれ以上の成果が残せるとは思いません。

もう一つ、このエントリーから紹介したいことがあります。奥山さんは、現在は起業され、なんと車を作っています。


「この後、(k.o7がオープンカーだったのに対して屋根をつけた)クローズ版のk.o8とか、その次の9とか、こういうものが出てくるんですけれど、何言いたいかっていいますと、うちは20人のデザイン会社です。小企業です。中企業にもならない。いろんな方に協力してもらったので資本金はちょっと多いんですけれども、20人のデザイン会社が、今や車を作れる時代になったんです。考えてもみてください。3000人いなくたって、3万人いなくたって、部品を集めて組み立てさえすれば、少量生産であればもう、車が作れるっていうそういうご時世なんです。これからいろんな業界で部品のモジュラー化が行われて、それで例えば自動車の電気化とかそういうことが起こると、ものすごく塀が低くなって、いろんな人たちが入ってこれるようになります。もちろん自動車メーカーでないとできないことっていうノウハウはすごくありますけれど、それでも象徴的なのは、たかだか社員が20名のデザイン会社が自動車を作れる、そういう時代だっていうことを覚えておいていただきたいな、と。」


今の時代、自動車でさえ大企業じゃないと作れないということはない。インターネット業界では、クラウド化やスマートフォンの普及、ソーシャルメディアの普及で、小資本・少人数でも大きなチャレンジができるようになっています。それはインターネット業界だけの話ではなく、全ての業界でそうなってきていると思います。デザイン会社が車を作ることも、ネット企業が車を作ることも既に起きている事実なのです。

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自分にとって大きいと感じる失敗体験が、その後の自分を形成していく

話を戻します。その奥山さんが、書籍「人生を決めた15分 創造の1/10000」で紹介されているのが、数々の成功体験・実績よりも、失敗体験を強調されていたのがとても印象的でした。

奥山さんは、今でこそ天才デザイナーのように紹介され、「あの人は普通の人と違う」と言われることが多いそうですが、それは違うと言ってます。

「自分は山形の農家の孫で、土建屋の息子です。東京の美大を受験しようとして上京した時は、予備校の先生からこの田舎者と罵られ、美大時代も不真面目で、自分の将来もまるで見えず、カーデザイナーになろうと思ったのは美大卒業後だった。」

と。奥山さんの書籍では、その後の人生で何度か失敗されたり、実現に至っていないプロジェクトは数多くあるものの、一番の失敗体験は、上京した際の予備校での体験だったそうです。ついテレビや書籍を見ていると、成功ストーリーに目がいってしまいますが、成功の話は正直自分には役に立つとは思えません。運も実力も仲間も色んな要素があって成功しているのであって、人のマネをしているだけではそれ以上にはなれないと思うからです。

失敗については、同じ失敗をしないように準備をしておくことも、注意をしておくこともできるし、失敗学から学ぶことも有効だと思います。ただ最も大切なのは、失敗という事象そのものよりも、自分にとって大きいと感じる失敗体験が、その後の自分を形成していくのにとても役立つということではないでしょうか?奥山さんにとってはそれが、予備校の体験で、失敗の大きさや内容よりも、この気持ちを忘れない。次に失敗した時でも失敗とどう向き合うか、向き合える人間になっている。ということが大切なんじゃないかと思います。

それが学生に僕が話をしている時に、その失敗にどう向き合ってきたのかが伝わり、響くものがあるのかもしれません。


自分の失敗体験について

僕の場合、ベンチャー企業に学生時代でインターンから入社して早々広報の立ち上げに成功し、数々の雑誌やテレビ取材を得られた後、やりたくもない新規事業の営業マネージャーをしたことがあります。その時大学五年生社員の僕が、30人以上の営業の出向社員を受け入れ、毎朝朝礼をしたり、同行したりしてました。その事業は毎月5000万円の赤字を垂れ流し、急成長してきた会社は半年で倒産の危機に。もちろん僕自身事業責任者や経営判断をしていたわけではないですが、営業現場のそれなりのポジションにいたにも関わらず、広報や宣伝と違って営業は効率が悪いとか、営業が好きではないという気持ちで仕事をしていました。また、作り立ての未熟なWEBサービスに関しても、こんなサービスだと売れないという気持ちを抱いて営業していました。

好き嫌いという感情論ではなく、受けたからにはその責任を全うするべきでした。営業だからと言って、売れないと思うのならばそんな気持ちで営業するのではなく、売れる商品にするべきでした。売れるような売り方を考えるべきでした。

それができず、一緒に働くITベンチャーで働くことを夢見た営業の方々、結婚したり、子供が生まれたばかりの人も含めて、数人を残して誰を残すかも僕が決める立場で、リストラをせざるを得ない状況になりました。

その結果、精神的に耐えられず、ある日突然事業部長に屋久島に行ってきますというメールを一通送って、職場放棄しました。

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屋久島に行くと、目の前で一杯だった自分から、なぜベンチャーに来たのか?神々しい大自然のもと考えていると、反省と責任と、このまま逃げる、辞めることよりも、失敗と向き合ってチャレンジし、成功するまで頑張ることが正しい道だと思い直し、戻ってきました。

他にも僕は公私ともに色々と失敗しています。失敗した時は、本当に辛く、自分だけならまだいいのですが、周囲の人に多大な迷惑を掛けてしまうことが、何よりも辛いです。今でこそ話せるようになってきましたが、その時のことは、やはり人にはなかなか話せず、申し訳ない気持ちで一杯になります。その後、多少の嬉しいことやちょっとした成功があっても、迷惑を掛けた人たちのことを思うと、素直に喜べず、失敗したことを良く知ってくれている人にしか本音を話せないということもあります。

それでも、若いうちにチャレンジして、結果失敗してもまたチャレンジする。自分が得られたのは新しいことへ挑戦することへ抵抗がなく、楽しめる社会人になっていること。それが一番の財産かもしれません。

そんな思いを込めて、チャレンジもしていないのに失敗した人を馬鹿にしたり、下に見る人は論外ですが、失敗を分析することよりも、「失敗体験を語れるようになること」が、自分にとっては大きなことなんじゃないかと思う次第です。

また、失敗を共に経験し、乗り越えてきた仲間は掛け替えがないし、失敗を乗り越えてきた人の方が人間味があって、僕は好きです。


参考情報

はてな近藤社長の失敗体験:2012年に向けて(jkondo's blog)


 

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