知ってることは技術力か?
話を技術力にもどすと、いったい、技術力とは何か?ということになりますね。
以前、私は日本のSIer代表として米国の大手SIerのソフトウェア開発部門に4年ほど駐在したことがあります。そこは総勢500名ぐらいの部門で、製造業向けのCADや周辺アプリケーションを開発していました。オフィスは南カリフォルニアのディズニーランド近く。
管理職は白人が多かったですが、技術者は人種のルツボで、ベトナム、インド、香港、韓国、エジプト、フランス、ナイジェリア、イスラエル等々といった様相です。そうそう、もちろん米国人もいます。日本人は私を含めて数名。
日本人技術者の「スキルセット」は彼らの中でも遜色なく、品質の作りこみや丁寧さ、再流用性の考慮などを含めると、日本人技術者がリードすることもありました。
この時の「スキルセット」というのは、アーキテクチャやコーディングについて知っていること、いわば、技術的な知識になります。時には経験も含みます。それに納期や品質を加えた「広義のスキルセット」でいうと、我が日本人は負けません。時には過剰にこだわるケースもあるでしょう。
しかし、ここで私の専門である技術経営風にとらえ直すと、「技術力」というのは「儲けるためのスキルセット」になります。ソフトウェア部門でいうと、「高く売れる技術」「たくさん売れる技術」というこですね。ここでは、技術的な知識も重要ですが、むしろ、マーケティングやモジュール化(アーキテクチャ化=特に分散開発のための)、プライシング、パートナシッププログラムなど、技術の周辺のスキルセットが特に重要になってきます。
日本のIT業界の技術者の中で、「儲けるためのスキルセット」を一通り身に付けている人の何と少ないことか。IT業界の外にはけっこういます。音楽業界、マスコミ、商社、銀行などですね。初回の投稿では尻切れトンボになってしまいましたが、この「儲けるためのスキルセット」をプロデューサー力と表しました。最近のはやりの言葉で表すと「ことづくり」力とでもいいましょうか。
本屋のコンピュータ関連コーナーには圧倒的に「技術力」に関する書籍が多く、「プロデューサー力」に関する書籍はビジネスコーナーにありますが、この接点となる「IT業界のための経営学」なる書籍は皆無ですね。米国にはIT業界のためのビジネス書がけっこうあります。
ぜひ、ビジネスが語れる技術者を増やしたいと願うこのごろです。