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シニアな新米プロダクトマネージャーの奮闘記

「幻想」を超えるクラウドコンピューティング

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まず私の考えるクラウドコンピューティングについて明確にしておく必要があると思われます。あまり小難しいことをここで書くつもりはないのですが、やはり立ち位置は明確にしておく必要があるでしょう。

その際に参考になるものとして、こちらを選びました。
「クラウドコンピューティングの幻想から目覚めよ」というエリック松永氏のITのMedia 上の記事です。ここでは、「幻想」を次の3点指摘しています。

  • クラウドコンピューティングによって企業システムのパラダイムシフトが起きる幻想
  • クラウドコンピューティングが斬新なサービスを生み出す幻想
  • クラウドコンピューティングの技術が凄い幻

このそれぞれに対して私がどのように考えているのかを明らかにしていくことで、私の考え方をお伝えしたいと思っています。ちなみに、一件松永氏に反論しているように見えるかも知れないけれど、彼の議論には大筋賛成しているので誤解なきようお願いします。

経済論理としてのクラウドコンピューティング

さて、クラウドコンピューティングが幻想かどうかを検討する前に、過去に経済学をかじったことのある私なりの視点からクラウドコンピューティングの潮流を眺めてみると次のようなことが言えます。
巨大なコンピューターリソースがITの発展とともに各所に分散して配置されていることは言うまでもないことです。これらの資産は、必ずしもフルに活用されているわけではなく、多くは多くの時間遊休資産となっています。

産業革命以来、遊休資産を如何に少なくするかという努力はさまざまな形で実行されてきています。例えば、工場の24時間操業。人間の生理的リズムを全く無視するこの手法は、工場という大きな資産を、出来る限り無駄にしないようにという論理で動いています。

翻ってコンピューターリソースを見てみると、巨大なデータセンターを運営しているベンダーがその余剰資産をどう活用するかを考えることは経済論理的には自明のことと思います。そもそも以前から分散コンピューティングという考え方で、コンピューターリソースの有効活用の発想が進められてきましたが、クラウドコンピューティングはまさにその延長線にあるものと考えています。

クラウドコンピューティングによって企業システムのパラダイムシフトが起きる幻想
「企業システムのパラダイムシフト」という言葉の持つ意味が何であるかによって、これは幻想でもあるし、幻想ではないともいえるでしょう。
マイクロソフトが関わっている事例を鑑みれば、大きな規模の情報システムを動かしている組織を見てみると、そのシステムをクラウド化することで管理に要するリソースを大幅に削減していることは間違いないようです。

他方で、小規模な企業に焦点を当ててみれば、これまで実現不可能だったビジネスに最適化された情報システムを活用出来るようになっています。
すべてがいきなりクラウド化するというのは幻想でしょうが、クラウド化が情報システムと情報システムに対する専門部隊の関わり方を変えることは間違いないと思っています。

クラウドコンピューティングが斬新なサービスを生み出す幻想

クラウドコンピューティングが「斬新な」サ-ビスを生み出すかどうかは、私が予想することではないでしょう。ただ、「ITのサ-ビス化」がクラウドコンピューティングのもう一つの本質であることは間違いないと私は思っています。それが「斬新」であるかどうかを本質的議論にする必要はありません。

「ITのサービス化」ということは、そのサービス提供をするユーザー視点が重要になることを意味します。これまでは時としてユーザー不在のままIT投資ありきで進んできた側面があることは否定できません。投資の大きさからユーザーの様々な声を吸い上げること以上に大切な判断要件が存在していることは十分に理解すべきことだと思われます。

しかし、初期投資を激減させ、選択の幅を広げるクラウドコンピューティングの時代になると、ユーザーに最適なサ-ビスメニューを提供することのプライオリティがきわめて高くなります。
サ-ビスメニューに注目が集まれば結果として「斬新」なサ-ビスが生まれ出てくる可能性は高まるかも知れません。しかし繰り返しですが、大切なことは「斬新」であるかどうかではなくて「利用可能」かどうかにあると思っています。使えないサ-ビスを購入する理由はクラウド化によってまったく無意味になるからです。

クラウドコンピューティングの技術が凄い幻想

私は技術畑出身ではないので、この点についてコメントすることは出来ません。
ただ、革命的技術があったとは思っていません。クラウドコンピューティングの基盤にあるのは、インターネット技術と仮想化技術の2点が本質だと思っています。いずれもITの分野で徐々にあるいは急速に発展してきた技術ではあるけれども、あくまでも一連の技術進歩の延長線に位置づけられるものと考えています。

さて、私として何が言いたいか、ということですが、結局クラウドコンピューティングの潮流はポジティブな不可逆的なものである、ということです。もしそうならば、その潮流には早く乗った方が得をするに違いないわけです。もちろん個々の状況に応じて何から始めるかは異なるでしょう。
というわけで、次回は少し具体的なクラウドコンピューティングの活用について身近なところからお話する予定です。

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