企業間ワークフローが日本を救う?
JBPressに掲載された英エコノミスト誌の翻訳によれば、今製造業は第3の産業革命にあるそうです。
最初の産業革命は、18世紀後半に英国で始まった。きっかけは繊維工業の機械化だ。それまでは何百もの織工たちの家で面倒な手作業により行われていた仕事が、1つの綿織工場にまとめられた。工場の誕生である。 第2の産業革命が起きたのは、20世紀の初めだった。ヘンリー・フォードが流れ作業の組み立てラインを完成させ、大量生産の時代の到来を告げた時のことだ。この2度の産業革命は、人々を豊かにし、都市化を促した。 そして今、第3の産業革命が進行している。製造工程がデジタル化されているのだ。製造業:第3の産業革命が始まった より
記事中に出てくるような、コンピュータで設計し自宅の3Dプリンターで何でも出せるというのは、まあいくらなんでも飛躍し過ぎで無茶な書き方ですが、情報革命の力で大量生産並みのスピードとコストで個別生産ができる可能性が出てきているとは思います。
新興国の成長により市場がそっちに向き始め、Appleから100円ショップまで大量生産のモデルが今また主流になってきているわけですが、現在はインターネットショッピングや店舗の巨大化のおかげで、選択肢が広がっている状態に過ぎません。
そして、先進国の人々は「本当に満足する一品」がいつまでたっても出てこないか、それがあまりに高すぎるために、大量生産品を次から次へと買い換えて、つかの間の満足を得ている状態ではないのかなとふと思ったのです。
日本の中小製造業にはすばらしい技術と、高い教育レベルの社員がいます。
現在のところ、その技術と教育水準は多くが大量生産の効率を上げるために使用され、人件費の比較で中国などに負けてしまっているのが実情です。
しかし、もしインターネット上で自分が本当にほしい製品の仕様を記入する自由なフォームと、企業間で自由に連携できるワークフローシステムがあれば、瞬く間にたった一つの「本当に満足する一品」を製造することが可能になるかもしれません。
もちろん今でもDELLのパソコンに代表されるようにある程度のカスタマイズは可能です。
しかし、それは組み上げる部品を選択するものであって、部品そのものをカスタマイズするほどには洗練されていませんし、単一の企業の技術力を超えない基本的には廉価版大量生産モデルの応用に過ぎません。
日本の中小製造業が持つ世界一の技術を組み上げれば、例えば大阪の町工場の組合がチャレンジしたように人工衛星のオーダーメイド生産だってできるでしょう。
オーダーメイドの人工衛星を大量生産するために障害となっているものの一つは、企業間におけるワークフローではないかと思います。
企業内ではシステム化が進んで、見える化も効率化も相当に進んでいます。(特に大企業)
しかし、その高額なシステムで情報武装した社内に対して、企業間取引だけは未だに紙と電話とFAXが飛び交っている例は枚挙に暇がありません。
企業間の作業の受け渡しや情報の共有がネックである限り、それぞれが持っている世界一の技術はなかなか活かせません。
その技術は殆どの場合、特定のパーツを創り上げることには長けていても、製品を構成する様々な部品すべての技術を持っているわけではないからです。
金属、革、電子回路、それぞれの優秀な素材と加工技術は、今でも日本企業はおそらく世界一です。
しかしその技術は企業ごとに分散して所有され、ニッチ分野での世界一が立ち並んでいます。
もし日本の製造業が一致団結してクラウド技術を活用し企業間ワークフローを構築すれば、バーチャルな企業体として世界一の素材や技術を組み合わせたオーダーメイド品を瞬く間に創り上げることは可能です。
そんなシステムを実現するにはまだまだ力不足ではありますが、サイボウズのkintoneなども手前味噌ながら可能性を秘めているのではないかと思っています。
企業内や工場内だけにとどまらない新しい発想がクラウドの活用には求められているし、それに応えられるようなサービスや提案をしてゆきたいものです。