経営に貢献するITの専門家
今日からは、このブログのテーマでもある次世代のITリーダーらがどうあってほしいか、について書いていきます。
先ず、ITリーダーというのは、技術そのもののリーダーというよりは、企業のシステム部門において、企業の生産性向上を図っていく、そうして経営そのものに貢献していく存在であるべきだと私は考えています。
お客様とお話ししていると、昭和40年代から何億円もするメインフレームコンピュータを3年ごとに更新してきたという話をお聞きすることがあります。すべてのアプリケーションがその環境で稼動しているため、ほかに軽くて速くて簡単なインフラがあるのに移行したくても移行できない、そういった悩みを抱えておられるのです。
もちろん、メインフレームやUNIXを否定するわけではありません。すべてをそれに依存する必要はない時代になったということだと思います。
ITリーダーは、経営の効率を高め、セールス、マーケティング、バックオフィスから生産現場に至るまで、最適なソリューションを提供するためにはどうしたらいいのか? どうすれば違ったことができるのか? 何か新しいことはできないのか? どうすればもっと付加価値を提供できるのか? そうしたことを常に考えなければいけないでしょう。
大半の企業はIT支出の7割から8割をメンテナンスに費やしています。新規開発には2割から3割しか割けません。かつてはデルもそうでした。われわれがサーバ製品を提供していなかった時代です。バックエンドでは大きなサーバが稼動していましたし、われわれ自身がITの使い手として今ほどは洗練されていなかったのです。
しかし、バックエンドも自社で開発したサーバやストレージで置き換え、基幹業務に使っていく中で、低コストで堅牢なシステムを構築できるようになり、その結果、ITのコストが売り上げに占める比率は、およそ半分近くになりました。
メンテナンスと新規開発の比率も、7:3だったものが3:7と逆転し、より多くの予算を、生産性の改善やCRMのように売り上げの増加のために投じています。IT投資は、まさに経営にダイレクトに貢献しています。
セールスの手法などは毎年変わるというわけではありませんが、ITの技術やソリューションというのは、毎月のように新しいものが登場し、劇的に変化しています。つまり、ITに携わっている人たちは、企業を取り巻く環境が激しく変わる中にあって、最も変化の波に晒されているといっていいでしょう。したがって、ITの専門家には、何と言っても新しいものに挑戦していく柔軟さや、自ら作り上げたシステムでもぶち壊して再生させていくガッツ、勇気、スキルが求められるし、それをやるべきかどうかの経営判断能力も必要になります。
また、新しいものを貪欲に吸収して、少しでも良いものを作っていく努力を日々重ねることはもちろんですが、さらに一歩進め、常に自分が何のためにシステム部門にいるのかを考えるべきです。
肥大化した会社のシステムのお守りのためにITの専門家がいるのではありません。先輩が築いたシステムをうまく稼動させていくためにいるわけでもありません。企業として優れた製品や優れたサービスを提供し、利益を上げ、社会に貢献していくためなのです。ですから、ITの専門家にとっては経営的な見方も大切となるのです。技術そのものの勉強だけでなく、財務やマーケティングなど、幅広く勉強していくことが求められるのではないでしょうか。
明日は、現場を含め、組織全体が経営的視点を備えるためにCEOが果たす役割について書いてみます。