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インターネットとそのガバナンスについてつらつらと

クラウド議論の怪:ネットワークってそんなに。。。

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廣江さんが先日のオルタナブロガー定例会のお話しで、私が、

「ネットはバスじゃぬええんだぞ!(怒)(笑)」

と言った、とおっしゃっていまして、これは事実なんですが、ただ一点気を付けたいのは、「って言ってる人もいますよー」って、併せて言ったことです。(言い訳じゃないですよー、ほんとですよー)

以下、THE SHOW MUST GO ONの岩永さんの記事なんですが、

無線は有限なんだって!無いのは限度ではなくケーブルだけ!

この話は多分死ぬまで言い続ける必要があるのだろうな。 嘗ての自分もそうだったのだけれど、とにかくIT屋の皆さんはサーバーやクライアント、プロ グラミングやOSなど入り口と出口の話ばかりして、途中で「繋ぐ何か」のことを本当に空気のように考えているフシがあります。まったく、いい加減にして欲しいと、正直思うことがあります。

僕がこれの類似体験をしたのは、ジョージ・ギルダーの「テレコズム」の一節です。

amazonの説明から引用しますが、きっと表現自体は本文にもあったはず。

「帯域」の技術論については、とくに本書の半分近くが割かれている。CDMA型の広帯域低出力方式から、次世代のマイクロ波、光ファイバー、また自律分散協調型の全光ネットワークなどを軸に、通信の無限の帯域と高速化をもたらす技術の方向が示されている。ネットワーク・アーキテクチャ、またブロードバンドのベンダーの観点からも示唆に富む内容になっている。

え?今なんとおっしゃいましたか?「無限の帯域」ですか?
目が点でした。無限なんて言葉が通じるなら、エンジニアリングというか、工学要らないよぅ。。

オルタナでも、林さんをはじめとしてクラウドをウォッチしていらっしゃる方が多いのですが、その際に、ネットワークの話が出現することが極めて少ないことに驚かされます。きっとネットワークが相当に信頼されているということだと思います。その一方で、岩永さんの記事は、次のように続きます。

クラウドコンピューティング?止めて欲しい、いい加減にして欲しい、と結構本気で思っている部分があります。そもそも”雲”が浮かぶのは空じゃなくて、針金と光ファイバーで出来た網の上なんですよ。でもって、雲の中にある情報処理リソースは空気を通じて使えるのではなくて、あくまでも誰かが何かの手段で繋いでいる訳です。それくらいちゃんと理解し手欲しいと本気で思います。いくらブロードバンドの 世界だからと言って、めちゃくちゃにネットワークのリソースを使うような方法を推進しないで欲しいと本気で思います。自分の敷地の中で出来ることは、無理やり外に出さずにそこで終わらせて欲しいものだと思ちゃいます。

つまり、コンピュータの内部busと違って、ネットワークは複雑で、帯域には限りがあって、遠くて、設計や運用で日々苦労する人たちがいる、ということなんですが、クラウドによってキモい(俗すぎますね、mission criticalな、くらいですか)トラフィックがネットワークを流れ始めると、また、ネットワーク運用者サイドに、ネットワーク品質に対する過大な期待がプレッシャーとなって押し寄せるだろう、という懸念を示しているんだと思います。

クラウドの提供者は、相当数のサーバのリソースを自分のネットワークの中に置いているでしょう。例えばGoogleは、ネットワーク事業者ではないながら、その内部ネットワークもグローバルに拡がっていて充実しています。ネットワークの運用管理もかなりのクオリティだと思います。

ところが、クラウドのインフラから、お客さんにサービスを提供するインターフェースは、プライベートクラウドを組まない限りインターネット上に置きますよね。そこから先の品質はどうでしょう? インターネットでは複数の事業者を次々に渡り歩いてパケットが届きますので、エンド-エンドの品質は必ずしも保証されません。

システムがインターネット上に散らばっていると言う場合もあるでしょう。ちょうど、Tumblrのネットワーク構成を調べてみたなんて言う好エントリを(Twitterフォロー経由で)見つけましたのでご覧いただくと良いのですが、Tumblrのインフラは、他社に委ねられて、インターネット上に散らばっています。

こういう場合、ネットワーク品質が良い接続事業者を選んで接続するということを、クラウド(に限らず、ですが)提供事業者を行うでしょう。品質と曖昧にかきましたが、例えば、バックボーンのスペック,故障時の対応だけでなく、常にインターネット全域への到達性に目を光らせ、満足な品質が得られない場合は相互接続先を換える、といった対応をきちんとやっている事業者を選ぶ、と言った感じです。他社の接続環境は日々変わっていますから、インターネットは生もの(いきものでもいいですが、なまもの)で、その上で品質を維持するというのは、簡単ではありません。

「昔は良かった」なんていうと歳なんでしょうが、10年とか15年前だと、インターネットにはそんなにクリティカルなトラフィックは流れていませんでしたので、シビアなことを言われる機会も圧倒的に少なかったのですが、昨今は、クラウドに留まらず、ミッションクリティカルなトラフィックがたくさん流れ、「壊れないのが当たり前」になっているので、大変だと思います。

ちょっと取り留めないながらこの辺で。

元々はと言えば、妹尾さんと随分前にこういうお話しを、メールをいただいたのを発端に、したんです。「近々ブログで書きます」なんて言っていたんですが、書くって言うほど自分はクラウド理解しているのか、なんて自問自答に陥り、林さんの本
「クラウド・ビジネス」入門 -世界を変える情報革命
を読んだりしているうちに時間が経っちゃいました。妹尾さん済みません。ちょうど定例会やら好エントリやら、いろいろなものに恵まれたので、やっと。

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