JANOGの15周年記念ミーティング
JANOGという団体があります。Japan Network Operators' Group. 7月と1月にミーティングを開催していて、先週倉敷で、30回目となるミーティングJANOG30を開催。
年2回開催なので、15周年ということで、記念イベントも実施。そこに、なんと基調講演をしてくれとして呼ばれたのです。何せ、創設以来10年間運営委員をやっていた、古巣です。やれるやれないじゃなく、やる、と二つ返事で引き受け、どうにかこうにかしゃべってきました。
もう一人の基調講演は、Googleの及川卓也さんで、なかなか得がたい講演でした。特にJANOGは基本的に開発コミュニティではないので、ソフトウェアやサービス開発からの視点の話はなかなか伺えません。
最近、本業もかなり技術色が薄れてきて、JANOGに顔を出す理由が少なくなってきたので、休みがちになっていたのですが、今回は呼ばれもしたし、遠地だし、15周年記念だし、ということで、少し無理繰りながら、全日程参加としてみました。
倉敷の美観地区を中心に、アイビースクエア、芸文館といったすばらしい会場で行われたことを初めとしてホストの心意気も光りましたが、ミーティングの内容としても充実していました。
特に、IPv6移行・共存技術の総覧となった「「IPv6時代のIPv4を考える」~第二章~ 」や、「これでいいのか4rd -標準化と実装と運用のはざまの奮闘記- 」は、あまりにいろいろなプロトコルがあって手をこまねきがちなこの領域に関して、秀逸な整理になっていました。
また、若干手前味噌ですが、JPNICの岡田がコーディネートした「BGPセキュリティーの動向と日本の現状 ~ RPKI時代のルーティング ~ 」は、PKIでインターネットルーティングのセキュリティを固めようとする大掛かりな技術に対して、技術要素の要点と、ルーティング技術側、リソースPKI側それぞれの技術状況のスナップショットをそれぞれの第一人者が提供する、絶好の取り合わせでした。
そして、JANOGはやはり、好ましく健やかに運営されていました。これは、及川さんもGoogle+にお書きになっています。
及川さんは、開発コミュニティから見たJANOGの面白さを書いてくださっています。また、当日起こったちょっとした問題を、会場がどうフォローしようとしたかなどに、運営サイドだけでなく参加者全員がJANOGを盛り立てようとしていることがよくわかります。
JANOGの運営は、世界的に見てもユニークです。サーバのハードウェアとホスティングといった日々掛かるコストはドネーションで賄われ、年2回のミーティングも、その実施上の収支責任はホスト企業が負い、ホスト企業がスポンサーからの協賛金によってミーティングを運営します。そしてミーティング運営を賄うに足るスポンサーの皆さんが安定して集まるようです。
そして、毎回のミーティング実行委員会にも、さまざまな人々が、そこで得られることをメリットに感じながら参加しているようですし、ミーティングにおけるプログラムも、採用できる数を大きく超える応募をもらっているようです。
こういう運営の「健やかさ」、運営サイドだけが突っ走るのではなく、JANOGメンバみんなが喜んで支えるという構造が、ずーっと維持されるといいなと思いますし、きっと、JANOG40になっても、同じように好ましく運営されているだろうなと思います。それは手放しでは実現せず、それなりに高い目線となんらかの努力が必要でしょう。
もう3年前ですが、「陰のヒーローがインターネットを混沌から守っている」という記事を書きました。これは北米のNOG、NANOGのことです。陰だとはあまり思わないものの、関係者以外にとても良くは知られてはいないJANOGではありますが、日本のインターネットの運営には欠かせない要素のひとつだと、確実にいえると思います。
そういうことを基調講演に盛り込みたかったのですが、舌足らずだったような気もするので、こちらで補足です。