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【書評】なぜ自民党は大敗したのか?――曲解された世論を読み解く

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菅原琢『世論の曲解―なぜ自民党は大敗したのか』(光文社新書)


自民党の小泉政権の跡を継いだ安倍、福田、麻生政権に吹いた逆風を、「小泉構造改革路線」への批判によるものと、マスメディアの多くは説明してきました。しかし、私は、むしろ「安倍首相が構造改革を推し進めなかったことに原因があるのではないか?」と感じていたのですが、それを、本書が実証してくれました。

《郵政選挙をひとつのピークとした小泉政権は、それまで自民党を支持してこなかったような人々、都市部の若年・中年層を取り込むことで、一定の支持を獲得し、これを基盤に政権を維持することに成功した。しかし、これを引き継いだ安倍政権は、郵政造反組の復党に代表されるような「反動的」な姿勢を見せ、イデオロギー路線を追求したために、小泉時代に獲得した改革を支持するこれらの層に見放されることとなった》(pp.115-116)

しかし、2007年参院選で敗北した自民党は、小泉路線からの修正を図ろうとして、返って自滅の道を歩んでしまい、2009年衆院選での大敗・下野へと至ります。

本書では、このほか、麻生人気はメディアによってつくられたものである、2009年衆院選の民主党の圧勝は、自民党の退潮だけでなく、国民党・社民党などとの選挙協力や共産党が候補者を無理して立てなかったことなどによるものである、と指摘しています。マスメディアによって流布される曲解された世論を、重厚なデータの分析を通じて読み解いていきます。

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