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ソニーエリクソンの挑戦(31)~ソニー・グループとのコラボレーション

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そろそろ、この連載も、ひとまず終わりを迎えようとしています。来週バルセロナで開かれるイベント"3GSMワールド・コングレス"において、ソニーエリクソンは、プレスとアナリスト向けに説明会を行います。ここで、おそらく「トップ3」に向けての経営戦略が示されるので、それを連載の最後に持って来ようと考えたら、こんなハイスピードな連載になってしまいました・・・。

というわけで、これまで触れてきた話題と、トップ3に向けての経営戦略のつなぎとなるテーマを書きたいと思います。それは、ソニー・グループとのコラボレーションについてです。

『ウォークマン携帯電話』のレポートでも触れたのですが、まずウォークマンのブランド自体がソニーのもの、そしてプロモーション活動には、ソニーBMG所属のアーティスト「ジャミロクワイ」を起用、コンサートのスポンサーにもなっています。また、ウォークマン携帯を装着するスピーカーもソニーが開発・製造したもので、ソフト、ハード両面からグループの資産を活用しています。

続いて、映画。2006年5月に公開されて世界的なヒットを記録した『ダ・ヴィンチ・コード』。ロンドンで開かれた試写会に招かれた私は、次のようなエントリーを書いています。

『ダ・ヴィンチ・コード』の影の主役
http://blogs.itmedia.co.jp/london/2006/05/post_4bba.html

ソニーエリクソンは、『ダ・ヴィンチ・コード』に携帯電話を提供しており、そのうちの一つは、映画公開に会わせて、発表された新製品でした。

こんなの同じソニー・グループなんだから、驚くことでは無い、と思うかもしれませんが、実は、そうではないのです。『ダ・ヴィンチ・コード』と言えば、公開前から、世界的なヒットが約束されていたような映画でした。そして、『ダ・ヴィンチ・コード』の撮影がロンドンやバリで行われていた2005年に、ソニーの方に聞いたことがあります。たとえば、『ダ・ヴィンチ・コード』と何かタイアップを考えていないのか、とか、主演のトム・ハンクスやオードリー・トトをCMに使わないのか、と。何人もの方に伺ったのですが、トム・ハンクスはうちの製品のイメージにあわない、とか、CMのプランはすでに決まっている、とか、ソニー・ピクチャーズとはあんまり交流がないと、いうような答えが多かったと思います。

また、ストリンガー氏が指揮し、2004年9月に行われたMGMの買収についても批判的な声は多く聞かれました。私の印象では、出井時代の後半のソニー・グループというのは、「ソニーXX」という名前の会社がたくさんあるだけで、実態は、グループとしてはばらばらな状態にある、という感じでした。ストリンガー氏は、こういう状態を「サイロ化」と呼んで批判していたと思います。

それが、ストリンガー時代になると、かわってきます。まず、2006年1月にアメリカで開かれたCES(Consumer Electronivs Show)。

【CES 2006 Vol.4】Blu-rayの未来はPLAYSTATION 3とともにある!?──ソニー代表執行役会長兼CEOのストリンガー氏が基調講演
http://ascii24.com/news/i/topi/article/2006/01/06/659867-000.html
【2006 CES】ソニー会長ストリンガー氏基調講演レポート
-「PS3でXbox 360を打ち負かす」。トム・ハンクスも参加
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20060106/ces07.htm
電子書籍にPS3――「コンテンツと技術の融合」を唱えるソニーCEO
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0601/06/news027.html

私は、このイベントは取材していないのですが、このストリンガー氏の基調講演には、『ダ・ヴィンチ・コード』の原作者のダン・ブラウン、監督のロン・ハワード、主演のトム・ハンクスが登場します。製品の紹介のついでに映画の宣伝もしているわけです。

この『ダ・ヴィンチ・コード』に対するスタンスは、ソニーエリクソンは、ソニーとは異なり、先のエントリーでも紹介したように、積極的なプロモーションのチャンスと位置づけ、製品の提供に加えて、イギリスでは、『ダ・ヴィンチ・コード』のオーディオ・ブックを無料バンドルするサービスなども行っていました。グループ内の資産で、使えるものなら、何でも使え、というスタンスです。

そして、これを、さらに押し進めたのが、2006年11月に公開された『007/カジノロワイヤル』。これについて、私は下記のようなエントリーを書いています。

ソニーもカジノロワイヤル(ほんのちょっとネタばれ)
http://blogs.itmedia.co.jp/london/2006/11/post_7633.html

『007/カジノロワイヤル』においては、ソニーエリクソンの携帯電話だけでなく、ソニーの製品が数多く、登場します。これは『プロダクト・プレイスメント』というマーケティング手法で、まぁ、ちょっとやりすぎなのではないかという批判もありましたが、もともと『007』は、そういう映画ですし、全体としてはうまくいった例だと言えます。

これも、「ソニーグループなんだから、当たり前のこと」と思われるかもしれませんが、何年もソニーをウォッチしてきた者としては、「ようやくソニーも、グループ全体で、こういうことができるようになったのか」という印象の方が強いですね。ストリンガー氏の提唱する"Sony United"の一つの表れだと言えます。

この『007/カジノロワイヤル』では、ソニーエリクソンは『ジェームズ・ボンド版サイバーショット携帯』も発売しています。

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0610/13/news030.html

また、写真を撮っておけば良かったと後悔しているのですが、映画公開時には、ロンドンで配布される無料新聞にソニーエリクソンが全面広告を打ったり、ソニーエリクソンの携帯電話を買うと、特製の007の絵柄の入った紙袋に入れてくれたり、と、かなり積極的なタイアップ・キャンペーンを行っていました。何より、映画に登場したソニーエリクソンの携帯電話は、カッコよかったですね。

こういうグループの資産を活用する、という点では、ソニーエリクソンは、かなり積極的に取り組んでいる、と言えます。こういうのを見ると、一消費者としては、「おっ、ソニーエリクソンは頑張っているな」とか、「元気いいな」と感じるし、一ジャーナリストとしては、「結果はともあれ、やるべきことはやっているな」と思いますよね。

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