ソニーエリクソンの挑戦(28)~ウォークマン携帯電話の立て役者、坂口立考副社長が語る
さて、2005年8月に発売されたウォークマン携帯電話は、どうなったか。2005年10月に書いたレポートは、下記をご覧ください。
http://homepage3.nifty.com/sando/SonyEricsson_004.jpg
さて、この記事に登場する坂口立考(りっこう)シニア・バイス・プレジテントには、2005年10月に開かれた"Smartphone Show"の会場で、お話をお伺いしました。いろいろと、深い話もお伺いしたのですが、ここでは、ウォークマン携帯電話に絞って、紹介したいと思います。
ウォークマン携帯電話の立て役者、坂口立考副社長が語る
(2005年10月11日 ロンドンのSmart Phone Show会場にて)
--ソニーエリクソンに移られる前は?
ソニーで、安藤(国威ソニー社長兼COO・当時)さんの下で、戦略部門にいて、このジョイント・ベンチャーを作るところに関わっていました。それで、ソニーエリクソンを作ってから、ソニーを辞めて・・・、ソニーエリクソンに転籍して。
--クァルコムのジョイント・ベンチャーには関わっていましたか?
あの頃は、ヨーロッパで別の仕事に関わっていました。しかし、ヨーロッパでGSMに出会って、漠然と、これに足場が無いのは・・・と感じていました。それで、ソニーの戦略部門に移ってから、携帯電話部門をどうするか、ということになり、どこかとくっつくか、買うか、そういう話をしていました。
--現在、坂口さんがソニーエリクソンで統括している範囲は?
商品のプランニング、それからアプリケーション開発。実際にコードは書いていませんが・・・。プログラムはしてませんけど、アプリケーションの開発。それからコンテンツ。それとプロダクト・マネジメント。世界中のオペレーターに対するセールス、商品に関する、あらゆるコミュニケーションなど、グローバルで200人くらいを統括しています。
--ウォークマン携帯も?
そうです。発売する携帯電話に関しては。まぁ、実際に作る上では、設計プロジェクトも含め1000人もかけてやっているわけですが、何をどういう風に作るか、どういう色にしていくかとか、構想は、私の担当です。
--ウォークマンのブランドをつけた、というのは、私は、とても驚いたのですが。
そうですね。まぁ、ソニーのことをご存じだったら・・・。出井(伸之・前会長兼CEO)や、ほとんど全員の役員と、少なくとも2回ずつは話して・・・。
--坂口さんが説得されたんですか?
そうです。でもまぁ、それなりにクレディビリティ(信頼)もできてきて、「あんたが言うんならじゃあ」って。だけど、お願いしたわけではなくて、強がりと言われてもアレですけど(笑)、プロポーザー(提案者)ですよね。このブランドは、携帯電話につけた方が、絶対メリットがある、と。ウォークマン携帯だけで、ソニーグループの中で、もっとも大きなビジネスの一つになってくる、と。電話の出荷台数は、大きいですからね。
まぁ、そういうことで提案して・・・。お願いしているわけじゃありませんよ、嫌ならやめてやらぁ(笑)、と。ソニーにとっては、これ(ウォークマンのブランド)は、こっち(携帯電話)につけた方がいいに決まっていると思いますよ。
--じゃあ、最初は反対されたんですか?
ま、もともと、ちゃんと満を持して、プランを見せて、デザインから何から作って、これでいく、というのをやってましたし、出井、安藤、井原、みんな、まぁ昔から、お仕えしてた人たちなので、私が、そういう提案をして、反対されることは無いだろうとは、思ってましたけどね。むしろ、ソニーの方から、「そんなウォークマンなんてつけていいの? 古いんじゃないの? 」という感じはありましたね。
--違う名前の方がいい、ということですか?
古くたって、いいじゃないですか。関係ないですよ。とりあえず、「わかりやすさ」で。もともと、こういう電話をやりたかったわけで。まぁ、3年かかったわけですが。漠然と思い描いていたものができるまでに。まぁ、人によっては、「(ウォークマンで)いいんじゃないの」という人もいたし、「それまで、持ってっちゃうの?」という人もいましたし。
--出荷台数は、ウォークマン携帯の方が多くなりますよね。
もちろんですよ。出荷台数は、一機種で数百万台ですもん。これ(『W800』)は、もう300万台。8月に発売して、まだ3カ月ですが・・・。まだ、足らなくて、作れない。
--今後は、いろいろなモデルを増やしていく戦略はありますか?
製品のラインナップは増やします。そして、もっと、こうなんて言うんですか、音楽コミュニティ・・・、音楽聞きながら、いろいろできる、というのを。ウォークマンの中でも、携帯電話ならではのものを目指したいですね。ただ、いまはとりあえず、音楽再生機能があって、カメラもついて、携帯電話として使うなら悪くないよ、というところから入って名前をうち立てて・・・。本格的にウォークマン携帯にしかできないこと、音楽に関する使い勝手を広げていきたいので、これからどんどん出していきたいと思います。
--ATRAC3に対応してないですが、AACやMP3には対応してますよね。
そうですね。基本的に携帯電話からきてますので。ソニー・グループのベネフィットも考えますけど、最終的には、お客さんしかないので・・・。ソニーの場合は、ソニーで考えている戦略があって、それをやってきたわけですけど、ソニーだって、なかなか急には違う思想のものをできない。そういう意味では、携帯電話は、もっと間口が広くないと・・・。
--ソニーからは、何か言われていますか?
最終的には、みんな喜んでいます。
--いまはもう否定的な意見は、無いのですか?
無いです。
--オレンジは、ウォークマン携帯のカラーとして決めているのですか?
最初の一号機なので、これに決めました。しばらくしたら色は増やしたいですね。
--今後の展開は?
これ(『W800』)は一号機なので、これからはソニーのオンライン・サービスで、音楽聴きながら、このアーティストについて、楽曲を買いたいとか、知りたいとか、情報がとれるとか、音楽を聴くだけではなく、携帯電話ならではのことができるようにしたいですね。