オルタナティブ・ブログ > 安藤怜のロンドン灯 >

英国ロンドン発のニュースなど

ソニーエリクソンの挑戦(10)~井原社長インタビュー(資料編)

»

私がソニーエリクソンの井原勝美社長(当時)にインタビューしたのは、2003年12月のこと。この時、私は、井原社長は、いずれはソニー本体に戻るかもしれないが、少なくともあと1~2年はソニーエリクソンの社長をつとめるだろう、だから、その間に、ソニーエリクソンの設立から、ここに至る間での話を聞くことができるだろう、と考えていました。

しかし、ソニー本体を取り巻く状況が許さなかったのか、この数カ後、2004年4月には、ソニー本社に副社長として復帰することを発表、ソニーエリクソンの社長は、マイルス・フリント氏に引き継がれました。

井原氏は、ソニーグループのリストラを統括し、2005年には、代表権を持つ副社長として液晶テレビ『ブラビア』を担当と、その後の活躍はみなさんも、よくご存じの通りです。2004年に急遽、ソニー本社に呼び戻されたのは、もちろんソニーエリクソンの設立から、経営を軌道に乗せるまでの功績が評価されたことは言うまでもありません。

そう、まさに

---成功の暁には名誉と賞賛を得る

となったのです。



井原勝美ソニーエリクソン社長インタビュー  (2003年12月13日、ソニーエリクソン本社にて)                             


--ソニーグループにおけるソニーエリクソンの位置づけは?

昔、携帯電話がボイス中心の利用形態の時には、それほどソニーの中で、携帯電話の重要性は、あまり認識されなかったと思うのですけれども、これだけ携帯電話が急速にいろんな周辺機能をとりこんで、なおかつコンスーマーは、いつでも携帯電話を肌身はなさず持って使っていると、そういった意味では、究極のコンスーマー商品ですよね。で、AV機能もどんどんどんどん取り込まれているんで、もうソニーにとっては、このビジネスを失うわけにはいかないと、僕は思っているんですよね。

しかも、その私は、昔から言っているんだけど、「携帯の弱いソニーは、魅力の乏しいソニー」と。いう風に僕は、思うんですよ。というのは、若い世代もね、もう、中学生ぐらいから、どんどんどんどん携帯を使ってね、その携帯の持っている話題性とか、あるいは雑誌で取り上げる露出といったらね、他のAV機器比べものにならないほど大きいですよ。

だからそういった意味でもね、あの非常に重要な商品にね、育てているんで、携帯のビジネスに弱いソニーはね、弱いとしたらですよ、魅力の乏しいソニーになっちゃうと。ある意味では期待もあって、なんとかせにゃいかんということで、こういう戦略に出ている訳ですよね。

で、ソニー・エリクソンという、会社をですね、勝利の方程式、ウィニング・イクエーションはなんだったかと、もういちど整理してみるとね、ソニー・エリクソンにとっての重要性というのは、大事な要素というのは、ソニーの持っているコンピテンシー(強み)と、それからエリクソンの持っている強み、この2つをですね、携帯電話の事業に持ち込むこと。

--エリクソンの強みは、技術?

ソニーの持っている強みは、言うまでも無いことですが、AV技術、ブランド、コンスーマー・マーケティング、商品企画、そういうのがありますよね。エリクソンの持っている強みというのは、ワイヤレスのテクノロジー、無線技術、もう一つは、世界のオペレーター・ビジネスに対する理解といいますか。ま、そういうのがあるわけです。

これらはですね、ソニーは、エリクソンの強みがないために、エリクソンはソニーの強みがないために、かっては、両方の端末ビジネスは、成功しなかったわけですよね。ところが、いまいったような、両親会社の強み、というのは非常に相互補完的でね、それで、それらを持ち込めればね、僕は、このインダストリーの中で、潜在的に一番強いビジネス・インフラを持てる会社になると、信じて疑っていないんですよ。

で、事実ですね、いま携帯電話で、何が起こっているかというと、どんどんどんどん携帯電話にAVの機能が取り込まれていますよね。それは、もうご承知のように、携帯電話そのものがね、ミュージック・プレイヤーになるし、携帯ウォークマンみたいな機能にもなるわけだし、カメラもついて、撮ってすぐ送れるようにもなるし、それから、PDAの機能は、もう、ほとんどあると、いうことでですね、AVの機能が入っていくいうことが一つと、技術的な面でもね、いまちょうど、いわゆる2.5世代から第3世代といわれているところに、通信方式が移行しつつありますよね。まさに、この双方の親会社が持っているコンピテンシーがね、いま最高度に発揮できるような市場になっているわけですよ。

世界でですね、ソニー・エリクソンみたいに、オーディオ、ビデオのコンスーマー事業にも片足があって、次の新しい通信方式にも対応できる企業はね、ほかに無いと言っていいぐらい。

--3GとはW-CDMAのことですか?

日本ではW-CDMAと言いますが、ヨーロッパでは、UMTSと言います。第3世代でも、いままでのGSMでも使えるというもの。本当に、時代や市場が、ソニー・エリクソンの持っている強みを、文字通り活かすような状況に向かって、どんどんどんどんシフトが始まっている。それは、非常に、我々にとってはフォローの風だな、と思っています。

--市場が進化していて、それにふさわしい資質をソニー・エリクソンは備えている、ということですね。

そうそう。まさにその通り。説得力ありますかね?

--あとは、市場のデマンドに応じて商品を出していく。

まったく、その通りですね。で、世界のオペレーターは、どういう風に見ているかということですが、まぁ、その世界のオペレーターは、言ってみればノキアの一人がちの状態になっているわけですよね。それで、こういった一社独占の供給状態にあることを嫌っていて、もっとコンペティティブなその端末メーカーの存在に期待している訳です。だから、世界のどのオペレーターであっても、彼らは、ソニー・エリクソンの成功を望んでいる。

--日本型のビジネス・モデルだと、オペレーターがかなりコミットしていますよね?

日本のビジネス・モデルというのは、非常に特異だったわけですよね。これは、オペレーターが、端末からコンテンツまでバーティカルに仕切るというビジネス・モデルでね、それで、それゆえに、オペレーターの戦略がビジネスに非常に短期間に反映していく構造を持っているわけですよね。

で、ヨーロッパは、日本以外の市場は、むしろどちらかというと水平分業型でね、オペレーターは、ネットワークを提供し、端末メーカーはジェネリックな商品を、複数のオペレーターに提供し、コンテンツ・サプライヤーは、コンテンツをいろんな端末に提供すると横に切れていた。ところが、それじゃあね、新しいデータサービス需要に対応するサービスの提供とか、新しいアプリケーションの開発とか、そういうものが進まないとみて、いま日本型のビジネス・モデルに転換しつつあるんですよ。

で、ボーダフォン・ライブとか、それからTゾーンとか、日本で言うiモードとか、イージーウェブに対応するような、どっちかというとホリゾンタルなビジネス・モデルから、日本型のバーティカルなビジネス・モデルに転換しつつあるわけです。これは、端末メーカーが望むとか、望まないに無関係でね、なにしろ、オペレーターはそう動く。そうすると、端末メーカーの役割は、そういった動きにいち早く対応した商品を、各オペレーターに提供できるかどうかというのが勝負になってきて、そういう面では、日本や韓国のメーカは、こういう勝負には慣れているわけですよ(笑)。

だからね、あの、チャンスが出てくる。事実、シャープのボーダフォン・ライブへの取り組みとかね、パナソニックもそうなんですが、それはアジアメーカーにとってはね、むしろ入りやすい環境ですよね。

--日本メーカーは、オペレーターの要求が大きいほど入りやすい?

要求が大きいし、多様化しつつあるということで、昔みたいに、一つの商品を全オペレーターに提供するというのがなかなかできなくなってきた。いちばん対応が遅れているのがノキアですよ。だから、ノキアのシェアは、どんどんどんどん下がっている。西ヨーロッパではね。

--世界シェアは、まだまだ・・・

そうですね。ソニー・エリクソンは、そういった意味では、けっこうがんばっているですよ。西ヨーロッパでは、けっこうシェアが上がってきているんですよ。

--当面のライバルはノキア?

まぁ、そう言わないで欲しいよ。差が開きすぎている。

--でもまぁ、「ノキアの、ラインナップのこの部分には勝てる」とか・・・

だから、さっきの会社の発足の当時の戦略に戻ると、すっぽんぽんの安いモデルで勝負できるような会社の、そういう強みを持っている会社じゃなくて、逆に、非常な高度な通信技術と、高度なAV技術をね、使った商品で競争力がでるような、DNAを持った会社ですよね。で、したがって、たとえば、カメラ付きの電話なんて我々の一番強みのところだと思うんですよ。

で、だから、今度西ヨーロッパの第3四半期のカメラ付き携帯電話のシェアなんてのはね、ナンバー2でものすごく高い。それはやっぱりね、我々の会社って言うのが、そのそういう高度な技術にねざした電話を作るのに、競争力がある会社なので、そういうところで、がんばるということですね。

--ソニーとのコラボレーションは?

もちろん、ソニーとはね、キーデバイスの開発・供給、たとえばカメラ・モジュール、とかですね、LCDモジュールとか。あるいはFelicaを携帯電話に入れると。ドコモが入れると、KDDIも採用する。そういうところで、ソニーのエレクトロニクスと関係がまず一つありますよね。

えっと、今度は、反面、ソニーブランドの商品も通信技術を必要としつつあるんですよね。これは、たとえばポータブルのゲーム機だとか、ポータブル商品全般にそういう風になりますよね。

それで、いまソニーの中のいくつかの事業部と通信技術と通信モジュールの提供について、話し合いをしている。それが、今度は逆に我々が技術面でソニーに貢献できる点ですよね。

それから、コンテンツ・グループのコラボレーションも進んでまして、たとえば、ソニー・ミュージック。これは、たとえば、音楽を、モバイル・ユーザーを対象として、たとえばリング・トーンとか、着うたとか、そういうかたちでタイアップして提供しようというコラボレーションを、各国ベースで進んでいます。

それから、ソニー・ピクチャーともね、あの映画を素材としたウォールペーパーとか、モバイルを対象とするコンテンツに対するサービスとか、結構コラボレーションがあります。

--ゲームは?

ゲームはね、プレイステーションのグループとはね、そういった意味では、明確なあれはありませんけど、プレイステーションというのは、そのゲームのブラットフォームを提供していますよね。で、ゲームは、そのブラットフォームに乗っかって、ゲームコンテンツを提供しているのは、それぞれ、別の会社であって、我々は、そういう会社と提携して、我々のブラットフォーム上で、ゲームを提供してください、という活動はやっているんです。

だから、むしろプレイステーションのグループとは、次の通信モジュールで話し合いが始まっている。

--バイオやプレステがライバルですか?

まぁでもやっぱり、そのコンテンツの表現力という面ではですね、やっぱり、専用マシンには、かなわない訳ですよ。やっぱり、ゲームっていうのは、やっぱりこれ(携帯電話)は、専用のゲーム機では無いですから、やっぱり電話の中心的な機能というのは、通話とデータをやりとりする、この液晶のレベルの中での表現力ということになるわけですね。

ところが、プレイステーションなんかで、提供しているようなコンテンツというともっと、画面が大きくてデータ量ももっと大きくて、もっとリアルで、ここにゲームとしての迫力が出るわけですよね。ですから、まったく対抗するという風なイメージでは、僕なんかは、ちょっと考えにくいですね。

--スマートフォンのP800からP900では、かなりデザインが進歩しました。

中身はそうかわっているわけではないですけどね。それほどデザインが重要ということですね。

たとえばね、これをバイオの競合とみるかどうかというと、機能性から言えば、Eメールだってみれるし、インターネットもアクセスできるし・・・。でも、その表現力からいえば、この液晶サイズですからね、だから、ある特定の目的だったら、ものすごく効力を発揮するのだけれども、長いメールのやりとりとか、エクセルのアタッチとか、こういうことになってくると、やっぱり限られた表現力があって・・・。ごく一般的にPCと競合するかというと、それぞれの得手不得手があると思うから、必ずしも、そういうことにならないと思いますけれども、ある特定セグメントを想定するのならば、十分いけると思うんですよ。これは、生きる道はあると思うんですよ。

このメッセージなんか、あのね、こうやって書いて送ることもできるわけだし、そういったわけでは、多機能だし

--通信機能のあるPDAと。

そうそう。PDAとは、真っ向から競争していると思うんですけどね。

--ソニーもPDA(クリエ)を出していますね。

うん。あんまり、そういうことを言うとですね、ソニーの人に嫌われちゃうから(笑)。でも、それはね、好きか嫌いか言っている場合じゃなくてね、ビジネスのリアリティというのが、僕は、そうだと思っているわけです。

もう一つ恐ろしいのは、こういうやつってオペレーターのサブシディ(販売助成金)がついて普及していきますからね、だから商品が非常に安く提供されていくわけですよ。だから、ペネトレーション(浸透)する速度が、そうじゃない商品と比べると圧倒的に違うわけですよね。だからボリュームは、すごいでかい。

だから、そういうところがね、非常に、いわゆるソニーのコンベンショナルなビジネスとの違いで、だから、その違いが数の違いとして現れてくるので、非常に恐ろしいですよね。影響が大きいですよね。(注:その後ソニーはクリエから撤退)

--井原社長が、陣頭指揮をとったのは?

ええ、このへんからですね。これはこの春ですね。というか、ソニーの商品というのは、伝統的にね、トップがインボルブするものだという気がしますよ。それはもう大賀さんだって、そのどんな商品でも、すごい口出される方だったし・・・。

--企画の段階から。

おぉ、もちろん、そうです。スケッチの段階から、いくつかスケッチを見て、どういうデザインの方向から・・・。

--ソニー出身の方は、そういうやり方を理解しているけど、エリクソンは・・・

いやだから、さっきも言いましたけど、ソニー・エリクソンのウィニング・フォーミュラに戻ると、それは、ソニーのコンピテンシーなんですよ。だから、ソニーの強みをいかすわけです。だから、デザイナーは、いっぱいソニーのデザイナーがいるし、商品企画にも、かつてソニーで活躍した企画マンがいますしね、だから、それが、ソニーとエリクソンを50対50でごちゃまぜにするのではなくて、コンセプトとして、要するに強いコンピテンシーを持っているのを活かすということだから。ね、会社の成り立ちが。だから、デザインでソニーのコンピテンシーがあるとしたら、そこはソニーのセンスを活かす、ということだから、その点で、いろいろ不平不満があったって、そんなの聞く耳持たないですよ。

--結果が良ければいいと。

そうです。いや、それが会社の生き様というわけですよ。だから、そこを結構、誤解する人がいる。

--誤解というのは?

誤解っていうのはね、カルチャーとかなんとかとか言うんだけどね、僕が言っているのは、この50%50%のジョイント・ベンチャーは、ソニーの人50人をつれてきて、エリクソンの人50人をつれてきて、ごちゃ混ぜにして仕事をする会社じゃありませんと。だから、いろんな仕事で、ソニーの強いところとエリクソンの強いところが、全然違うところがありますと。で、携帯事業をするときには、全部が必要ですよと。だから、ソニーの強みが必要なところは、ソニーの強みを活かす、エリクソンの強いところはエリクソンの強みを活かす、という意味で、「ごちゃごちゃっと全部をマージする」というわけではありません、ということを言っているわけです。意味は伝わりますかね。

--ええ

みんなね、あるところに行くと、これはジョイント・ベンチャーらしくないね、と言うわけですよ。そういう時のジョイント・ベンチャーの期待というのはね、目の青い人と目の黒い人が50人ずつ座っていて、というイメージをジョイント・ベンチャーのイメージとして受け取る人が多いんですけど、そういうことじゃ無いんですよ。人種は問わないんだけど、お互い強いやつを全部引っ張ってきて、それでビジネス全体を構成するとね。

--それを引っ張ってくる役割をしているのが井原社長と。

そうです。それはもう私の仕事です

--そこは、何か苦労されていることはありますか?

それは、ありますよ。あの、設計のやり方も違えばね、それはね、考えてみれば、どの会社にもあることでね、ソニーの中でもも、ビジネスのネイチャーによって、たとえばコンスーマー・ビジネスをやっているグループと、ノン・コンスーマー・ビジネスをやっているグループは全然違うわけですよ。で、コンスーマー・ビジネスをやっているグループの中でもね、大崎にいてテレビやっているグループと、芝浦でオーディオやっているグループとは、カルチャーが違うわけですよ。これはね、そういったようなもんで、そのカルチャーは違うんだけれども、それを、人心を統一してね、ビジネスにまっしぐらに進むと、いうのがトップ・マネジメントの仕事だと思いますけどね。

それはナショナリティの違いから、カルチャーが違うという風な言い方も一つあるかとしれないですけれども、ナショナリティーがおんなじでもね、そのくらいのカルチャーの違いというのは、大きな会社の中では必ずあって、たぶん、どんな会社でもあると思うんだけど、そうでありながらも、人の気持ちを束ねてね、一つの目標に進むというのがトップ・マネジメントの仕事だと思いますけれどね。

--目標は?

商品はだんだんと、いいものができつつあると思いますけど・・・。オペレーターの目から見るとね、アンビータブル(負けない)という人もいるんだけれど、こういう商品をこうやって見せるとね、本当に、すばらしいと賞賛してくれるオペレーターは増えていますね。ところが、やっぱりマーケティングの力だとか、それからサプライ・チェーンの力だとか、そういったビジネスの全体にわたるパワーでいくと、まだまだという気がします。

--商品は満足している?

まぁまぁですよね。70点ぐらいでもいっていると思う。

--合格点?

ええまぁ。

--課題はマーケティングとかサプライ・チェーンですか?

そうですね。たとえばマーケティングなんかでも、ノキアやサムソンが投入している広告宣伝の量から言ったら、うちなんか、ほんとわずかな投資しかできる体力はないですよ。それから、ものを作って供給する能力って言ったら、ノキアなんて本当に強いものがあるんですけど、我々は、しょっちゅう部品が足りないかったりとかね、需要に応えられなかったりと、いうところがまだあるので、ビジネス全般にわたる力というのは、まだまだですよね。

--中国は部品の供給で問題がありました。

変動が激しいですからね。市場の。それで、のんびりしたオーダー・ルールでやっていないから。短期ですごくたくさん作ったり、すとんと落ちたり、そういうことがありますから、そういう変動に追随していくということが、なかなか容易なことではないですね。

--モデルチェンジも早い。販売奨励金もかわりますね。

ありますね。売上げが大きく変わる。

--これらの携帯電話を日本で出す予定は?

無いですね。日本の市場とは違いますね。日本は、もっとアプリケーション・リッチでね。要するに日本の市場とは、非常に先見性というか、アドバンスしていますよね。

日本で定着したアプリケーションが、一定の時間間隔をおいて、他の地域でも流行っていくというトレンドがある。日本というのは、本当に不思議なマーケットでね。あそこは通信方式では、ほとんど閉じていますよね。日本の電話は、ほかでは使えない。という意味でのね閉鎖社会なんですよ。スタンダードからみれば。

ところが、その中で花咲いている携帯文化というのは、韓国もそうなんですけど、世界でもまれな先進性をもっていると。で、私は、これ「元禄文化」って言っているんですけどね。鎖国の中で大きく花咲いたね。一大文化と。それで、日本で成功したアプリケーションが、たとえば写メールが、いまMMSとかいって、GSMで普及していますよね。

こういう風に伝播していくと。そういった意味で、ソニー・エリクソンは、また一種独特の強みを持った会社だと思っているんですよ。日本のオペレーションと、このGSMのオペレーションを両方抱えている。この価値というのは、すごく高いですよ。そういった意味で、日本の電話の先進性を、いち早くGSMの商品にも展開できると、いう意味があるわけですよ。これね、日本で大きなビジネスをやりながらも、世界で同時にGSMでも、大きなビジネスをやっている会社は、あんまりないですよね。

ノキアは、日本の中には、ほとんど入れてないし、モトローラも入れていない。それから韓国勢も日本では見ないですよね。で、反対に日本のメーカーも海外でみれば、そんなに大きなシェアを持っている会社はない。ソニー・エリクソンだけがね、その両方に軸を置いたビジネスをやっている。僕は、そういう面でも、非常にアドバンテージがあるなと、そういう風に思っています。

--パナソニックとシャープは、どうですか?

そういうメーカーは、シェアをごらんになったら、わかると思います。本当に局所戦みたいな感じですよね。(注:その後パナソニックはGSMから撤退)

--日本の3Gは開国になると?

それは、開国になるだろうし、そうあらねばならんと思うわけですよ。3Gになれば、そうなりますよ。

--黒船はノキアですか?

そうではなくて、W-CDMAというのは、日系メーカーがいちばん経験があるわけですよ。だから、両側からあると思うんですよ。日系メーカーが第3世代の技術をふまえて海外の第3世代もやっていくという図式もあれば、海外のメーカーが、海外のUMTSの機械を日本に投入していく。だから、双方向になっていくと思いますよね。文字通りね。だから、非常に面白くなっていくと思うんですよね。

--そのときに、両方に拠点のあるソニー・エリクソンにアドバンテージがあると

と、思いますよ。

Comment(0)