ボーダフォンの日本法人が、ソフトバンクに売却された理由の一つとして、今年11月から日本でも開始される「ナンバー・ポータビリティ」によって、日本の携帯電話キャリア間の競争が激しくなることがあげられている。

では、実際に日本でナンバーポータビリティが開始されると、各キャリアにとって、どれくらいのインパクトがあるのだろうか? この点を考える上で、すでにナンバー・ポータビリティが実施されている各国の事情を知ることは重要だ。

英国ロンドンでは、21、22日に、"Delivering Cost Effective Number Portability for Fixed, Mobile, FMC and VoIP Networks" (主催:Informa Telecoms & Media)というセミナーが開催され、世界各国のナンバー・ポータビリティ事情が紹介された。

London_023 このセミナーの議長を務めたのは、スウェーデンのBoCa Consulting AB のCarin Johansson氏で、同氏は、基調講演もかねて世界各国の事情を簡単に説明した。以下は、その要約である。なお、ナンバー・ポータビリティ(Number Portability)には、携帯電話(Mobile Number Portability=MNP)と、固定電話(Fixed Number Portability=FNP)があるため、以下では、携帯電話のナンバーポータビリティについて"MNP"と表記する。

●シンガポールは、1997年7月にMNPを開始。MNPの手続きに7日間かかる。

●香港は、1999年3月にMNPを開始。MNPの手続きには1-2日間かかる。841万人の携帯電話ユーザーに対し、MNPを行ったユーザーの累計は、850万人(2006年1月時点、累計実行率101%)。これは携帯電話キャリア間で、通話料の値下げによる激しい顧客獲得競争が起こったためで、いくつかのキャリアは倒産寸前の状態に陥ったという。

●韓国は、2005年1月から、MNPを段階的に始めた。初めの半年間は、シェアの低い2社のみがMNPの受け入れを認められた。MNPの手続きは30分で済む。最初の1カ月で30万人がMNPを行った。

●台湾は、2005年10月から、MNPを開始。初めの2カ月で、2278万人の携帯電話ユーザーに対して、13万2000人がMNPを行った(2005年12月時点、累計実行率0.6%)。

●オーストラリアは、2001年9月にMNPを開始。MNPの手続きには、数時間から数日かかる。1842万人の携帯電話ユーザーに対して、305万9000人がMNPを行った(2004年5月時点、累計実行率17%)。

●アメリカは、2003年11月にMNPを開始。携帯電話と固定電話のナンバー・ポータビリティも行える。MNPの手続きは、2時間で済む。1億7000万人の携帯電話ユーザーに対して、1030万人がMNPを行った(2004年12月時点、累計実行率6%)。

●フィンランドは、2003年7月にMNPを開始。MNPは無料で行える。MNPの手続きは7日かかる。510万人の携帯電話ユーザーに対して、300万人がMNPを行った(2005年12月時点、累計実行率59%)。フィンランドでは、キャリアによる携帯電話端末へのインセンティブは禁止されている。ただし、3G端末へのインセンティブは、2006年4月から解禁される。

●デンマークは、2001年7月にMNPを開始。MNPは無料で行える。520万8000人の携帯電話ユーザーに対して、118万5000人がMNPを行った(2005年6月時点、累計実行率23%)。デンマークでは、携帯電話キャリア3社に加えて、MVNO(Mobile Virtual Network Operator)が24社あり、激しい顧客獲得競争を行っている。

●ノルウェーは、2001年12月にMNPを開始した。MNPの手続きは5日間かかる。481万1000人の携帯電話ユーザーに対して、170万人がMNPを行った(2005年1月時点、累計実行率35%)。

●スウェーデンは、2001年9月にMNPを開始した。MNPの手続きは5日間かかる。900万人の携帯電話ユーザーに対して、150万人がMNPを行った(2005年12月時点、累計実行率17%)。

London_024 ●このほか、スペインはMNPが無料で行えるため、また、イタリアは初めて3Gサービスを開始したキャリアが積極的にユーザーを獲得しようとしたためにMNPを行った割合は高い。一方、ドイツはMNPの際にユーザーから徴収する手数料の額が大きいため、また、フランスは、手続きが煩雑な上に、1カ月から2カ月半かかることからMNPは、ほとんど行われていないという。

以上のことを踏まえて、Carin Johansson氏は、MNPを実行する人を増加させるために必要なことをあげた。そのうちカスタマーの動向に関するものとしては、MNPの手数料が無料か低水準であること、MNPに関する情報が多いこと、通話料金の体系がわかりやすいこと、手続きが簡単に行えること(ショップの数が多い、手続きにかかる日数が短い、カスタマーケアが充実している、など)、といった点があげられた。

安藤怜

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