オルタナティブ・ブログ > 栗原潔のテクノロジー時評Ver2 >

知財、ユビキタス、企業コンピューティング関連ニュースに言いたい放題

DRMはあっても良いかもしれない、私的録音録画補償金制度もあってもよいかもしれない

»

ちょっと書き遅れてしまいましたが、二転三転した上でのEMIのDMIフリー音楽配信、大英断だと思います。先日、「著作権制度は壮大な実験」説について書きましたが、こういう実験はどんどんしていただきたいです。しかし、また日本は蚊帳の外という感じですね。着うたのビジネスが大成功したなんてレベルで喜んでて良いのでしょうかとも思います。

改めて言うまでもないですが、DRMフリーにするということは勝手にコピーしてよいということではありません。EMIのビジネスモデルでは当然違法コピーの増大による収益減は想定しているかと思いますが、だからと言って著作権の侵害行為が許容されるわけではありません。「信用乗車方式」が無賃乗車を許容しているわけではないのと同じです。

今の音楽コンテンツのDRMは、一部の不心得者の不法行為を抑制するために、一般の消費者が迷惑を被っており、かつ、不法行為の抑制効果もあまり高くないということで、DRMフリーの道を取ってみたわけですから、これは現実のテクノロジーの制約条件の中でのひとつの妥協案です。将来的に、たとえば、音楽プレーヤーがネットに常時接続しており視聴の都度に鍵をダウンロードできるようになれば、一般消費者に迷惑がかからず公平に課金できるDRMが可能になるかもしれません。そうなってくれば、また、DRMを利用する配信ビジネスの実験を行うべきでしょう。

話はちょっと変わりますが、私的録音録画補償金制度についても、現時点では反対意見が多いようです。現時点では、クリエイター側に補償金が公平に還元できる担保がない以上、これは当然とも言えますが、DRMの場合と同様に、将来的にどの曲が何回聴かれているのかをちゃんとメータリングできる仕組みができれば、機器等の価格に上乗せした金をクリエイターに配分するというやり方が再び検討に値するようになるかもしれません。何事も実験です。

さらに言えば、あらゆる機器がネットに常時接続している時代がくれば、コンテンツの視聴は全部オンデマンドで行われるようになり、そもそも、手元の記録媒体にコンテンツをコピーするという発想自体がなくなってしまうかもしれません。そうなれば、DRMや補償金制度はすべて昔話になってしまうでしょう。著作権制度に理想の最終形というのはないと思います。技術の進化にしたがって、どんどん制度を変えていくことこそが重要だと思います。

Comment(0)