栗原潔のテクノロジー時評Ver2:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) 栗原潔のテクノロジー時評Ver2

知財、ユビキタス、企業コンピューティング関連ニュースに言いたい放題

昨日のエントリーに対する今泉さんのコメントでちょっと思い出したことをここで書いておきます。

ムーアのコア/コンテキスト分析モデルでは、「コア」=企業の差別化を生み出す業務、「コンテキスト」=コア以外の業務と定義しています。非常にシンプルな話です。気をつけなければいけないのは、「コア」を「コア・コンピタンス」や「コア・ビジネス」と混同しないことです。

コア・コンピタンスとは企業が得意とする事業領域のことです。コアがコア・コンピタンスのこともありますが、そうでないこともあります。もはや差別化要素でなくなった業務に、それが自分の得意分野であるからという理由で力を入れ続けている状況です。典型的なケースは、コモディティ化した市場で依然として製品の高機能性で勝負しようとしている場合などが挙げられます。

コア・ビジネスとは企業の収益の大部分を占める事業です。ここでも、コア・ビジネスの中にはコア(差別化できている部分)もありますし、コンテキスト(差別化できていない部分)もあります。「ライフサイクル・イノベーション」翻訳時に、「コア」の説明のところで「コア(中核事業)」とカッコ付きで説明を加えようかと思いましたが、コアとコア・ビジネスとの混同を増すだけだと思いやめておきました。

他のブログで、コアとコア・コンピタンスを混同しているようなものが見られたので注意喚起的に書いてみました。まあそういう意味で言うと、そもそもムーアがコアという用語を選んだこと自体が混乱の原因と言えなくもありません。素直に、ディファレンシエイターとでも言っておけばよかったのではという気もします(ちょっと語呂は悪いですが)。

さらに言うならば、コアとミッション・クリティカルを混同しないことも重要だとムーアは言っています。ミッション・クリティカルとは、企業の存続を左右する重要業務のことです。それがコアの時もありますが、そうでない時もあります。さらに言えば、ミッション・クリティカル・コンテキスト(重要ではあるが差別化に結びつかない業務)に過剰な資源(金銭・人材)が投入されていることが、今日のほとんどの大企業が抱える問題だとムーアは説きます。「ライフサイクル・イノベーション」の第3部は、ほとんどこの問題の解決策に割かれています。前にも書きましたが、個人的にはイノベーション・モデルの話よりも、この第3部の話の方がおもしろかったです。

栗原 潔

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コメント
今泉 2006/05/25 12:47

おぉ、こちらでお書きになってましたね。私も昨晩ちょこっと触れてみました。
>素直に、ディファレンシエイターとでも言っておけばよかったのではという気もします

おっしゃる通りですね。何も知らないとコア・コンピタンスと混同してしまいます。これを機に正確な概念が浸透するといいですね。


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栗原 潔

株式会社テックバイザージェイピー(TVJP) 代表取締役 弁理士
IT、知財、翻訳サービスを中心とした新しいタイプのリサーチ会社を目指しています。

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