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ソーシャルメディアをWeb解析の視点から捉え直す

Twitterは本当の「ソーシャルメディア」になるべきだ

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先日、Twitterはコンテンツへの影響を分析できる「Twitter Web Analytics」を発表しました。ほとんど実装の進まぬまま記憶から消えようとしているアクテイビティタブの例もあるので、本当にリリースされるのかどうかは怪しい感じもします。

分析ツールの発表からは、ユーザーによりいっそうデータを活用して欲しいというTwitterの意志が読み取れます。しかしFacebookやGoogle+の快進撃を考えると、Twitterは別に進むべき道があるようにも思うのです。

「トレンドのシグナル」を見つける

先日、App Storeランキングでアプリの順位が急上昇する際、半分はTwitterでの盛り上がりが要因であるという調査結果が出ました。

iTunes AppStoreで配信されているアプリケーションのダウンロード・ランキング変動とTwitterによるアプリケーションに関する「つぶやき(クチコミ)数」の相関関係について統計情報処理に基づく検証の結果、アプリケーションのランキング急上昇要因の約50%がTwitterのつぶやき数の急増にある事をつきとめました。

QueryEye News: iPhoneアプリ・ランキング急上昇要因の約50%はTwitterつぶやき急増による事が判明

この結果自体も興味深いことですが、このように「顕在化したトレンド」をすくい上げる場所として、Twitterを利用するケースは以前からありました。

この発想を押し進めると、「顕在化する前のトレンド」を先に見つけることができるでしょう。言い換えれば、ソーシャルグラフのデータを分析して、トレンドのシグナルを見つけることができるでしょう。過去Twitterで顕在化した何らかのトレンドを分析し、トレンドが広まる過程で重要なハブになる人を探し出すわけです。すでにTopsyやkloutはそうした発想をサービスに落とし込んでいますが、あくまでそれらは過去にトレンドのハブとなった人を可視化するに過ぎません。そうではなく、ハブとして影響力を持つ人が、今何に言及し何がトレンドとして話題になりそうなのかを、リアルタイムに観測するのです。

トレンドを顕在化する前に予測することは、多くの人々にとって有益です。またそうしたデータを用意することは、Twitterのマネタイズにも繋がります。ハブとしての影響力と、そのユーザーが好むトピックを掛け合わせた上で、影響力のある人に対してのみ広告を打つ、といったオプションを顧客に提供できます。他にもいろんな活用法があるでしょう。

Twitterは「ソーシャルメディア」になれるか

しかしこの発想は、Twitterがソーシャルグラフの分析に注力しない限り、絵に描いた餅のままです。Twitterは自らをソーシャルネットワークではなくあくまでメディアだと主張します。しかしそのメディアとしての力は、他でもないTwitter内部に広がる複雑なソーシャルグラフによって支えられていることは間違いありません。

Facebookと比較すると、ソーシャルグラフデータの分析/提供/活用が上手くいっていません。ディック・コストロがTwitter社 CEOに就任してもうすぐ1年になりますが、この1年で彼の取り組んだマネタイズ手法はアイディアとしてイージーに見えるものが多かったように思います。ツイートのデータだけを分析するのであれば、Googleに勝てません。Twitterの強みは、その向こうにあるソーシャルグラフのデータにあるはずです。冒頭で挙げた「Twitter Web Analytics」の機能からは、Twitterを「コンテンツを流通させるためのメディア」としかまだ彼ら自身が捉えていないことが伺えます。

Web解析ではよく「データは宝の山」といいますが、Twitterのソーシャルグラフデータはまさに宝です。Twitterは今一度「ソーシャルメディア」として、この宝を掘り起こすべきなのではないでしょうか。

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