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ソーシャルメディアをWeb解析の視点から捉え直す

Facebook 新しいOpen Graphは何がすごいのか

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Facebookの開発者向けカンファレンスf8が開幕しました。すでに「Timeline」など新機能の速報が上がっています。Timelineも見た目華やかで非常に良い機能ですが、同時に発表された新しい「Open Graph」も非常に素晴らしい概念です。今回はこれまでのOpen Graphと新しいOpen Graphを図式化しとそこから何が変わっていくのか、予想してみます。

何ができるようになるのか?

以下の図は今までのOpen Graphと新しいOpen Graphを簡単に図式化したものです。Open Graphは、Open Graph Protocol(OGP)という規格として体系化され、様々なWebサイトに実装されています。Webページを1つの「モノ」として捉え、Facebook上で「人」と結びつける役割を持っていました。この「人」と「モノ」の間を結ぶのが、「いいね!」であり、そのためいいねボタンの実装にはOGPの実装が必要だったわけです。

○これまでのOpen Graph
Opengraph_old

新しいOpen Graphでは、これに加えて「人」と「行動」が結びつきます。例えば動画を「観る」、道路で「走る」等です。

○新しいOpen Graph
Opengraph_new_1


f8前、こうした行動を示す「ボタン」が導入されるという話が噂されていましたが、正直これはダサすぎると思っていました。というのもこれまで「人」と「モノ」を結ぶ線は、基本的に「いいね」一本で(送る・コメントするなどもありましたが)、そのシンプルさが良さの1つでもありました。

○予測図

Opengraph_umm

このように行動別に線の種類を増やすことは、非常に煩雑ですし、イージーです。またこの発想ではボタン化できるのは対象となる「モノ」がある、つまり目的語を取れる他動詞だけです。「走る」などの自動詞はOpen Graphの上に載せられません。

新しいOpen Graphでは、行動を単なる線ではなくFacebook上で流通するデータの一つとして扱います。そのため行動に「人」や「モノ」のデータを紐づけることが可能になると考えられます。これは単に「食べたい」「見たい」ボタンを入れることでは実現できません。「行動」が単に「モノ」に従属する形にならなかったことが、重要です。

新しいOpen Graphによって、「~する」というアクションに近いWebサービスは大きな恩恵を受けるでしょう。動画や写真のサービスだけではありません。nanapiのような「Aを先に用意しておくQAサイト」はユーザーがレシピを読んだ後、そこからアクションを起こすのが1つのゴールだと思いますが、そこを可視化し、またFacebook上で広めることができます。またこの「行動」とそれに紐づいたデータを集めて、他のサービスや機能に展開することもできます。Spotifyなどはこれを使い音楽の視聴というアクションを通じてユーザーをつなげようとしています。

時代はセマンティックWebへ

大きな話をすると、これはセマンティックWebへのさらなる一歩です。セマンティックWebはRDFやmicroformatsなど、いくつかの仕様がありましたが、つまりセマンティックに表現されたWebページを取り扱う側の発展があまり進まず、普及していませんでした。それは結局のところ実装する側からすればメリットが不明瞭ということで、一種の負のスパイラルにあったともいえます。

FacebookがOpen Graphを推し進めることで、少なくともFacebookと接点を持つ領域では、Webはセマンティックになっていきます。セマンティックWebを扱う側の進化により、セマンティックWebが広がり、さらに扱う側も進化するという正のスパイラルも期待できます。

Googleは非意味的なデータの構造を分析し、力技で意味化させ、検索エンジンを進化させてきました。しかしこれではGoogle、データを取り扱う側にパワーバランスが偏ります。Open Graphはその名の通り規格がオープンです。Open Graphを取り扱うサービスは、Facebook以外にも作れます(Google+はOGPを利用しています)。長い目で見ると、ここがセマンティックWebへの変わり目なのかもしれません。

○Facebookページ

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