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オンラインビデオマーケティングの未来は完全にソーシャルビデオにシフトするのか

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最近、米国のオンラインビデオマーケティングの動向を追っていると、これからはソーシャルビデオの時代だという論調が、以前に比べて目立つようになってきている。バイラルビデオの時代からソーシャルビデオの時代へ、それがオンラインビデオマーケティングの未来であるかのように。そこで、今回はバイラルビデオとソーシャルメディアの違いを明確にし、それぞれの特長を整理してみたいと思う。

【1】 バイラルビデオとソーシャルビデオに対する誤解

① バイラルビデオに関する誤解

バイラルビデオに関する一番大きな誤解は、バイラルビデオが口コミ効果を誘発しながら、実際の商品の販売に大きく貢献するといった、オンラインビデオマーケティングにおける重要な戦略の一つであると考える間違った捕らえ方をされがちな点である。著名なオンラインビデオマーケティングの専門家であるケビン・ナルティは、著書「ビヨンド・バイラル」の中で、バイラルビデオは実際のマーケティング戦略ではないと言い切っている。また、2008年には「バイラルビデオは死んでいる」と宣言し、バイラルビデオが、ブランディングにとってすでに価値のないものになっていることを明らかにしている。

※ ビヨンド・バイラル ⇒ http://beyondviral.com/

※ ビヨンド・バイラルに関する有用な記事 ⇒ http://www.reelseo.com/beyond-viral-nalts/

バイラルビデオとは、単にYouTubeに投稿された動画に過ぎない。YouTubeに投稿された動画を視聴したユーザが、凄い、面白い、楽しい、カッコいいなどの感情を持ち、それをメール、ブログ、ソーシャルメディアなどを通して友人と共有し合う。そして、次々と共有の連鎖が生まれ、最終的には何十万、何百万というビューを獲得することになる。つまり、バイラルビデオという言葉の意味のように、ウイルスのように瞬く間に感染して行く動画がバイラルビデオである。

 ● バイラルビデオの定義

 ・ 実際のマーケティング戦略ではない
 ・ メトリックスは”View”と”Share”の量が多いか少ないか
 ・ 目的は短期的になりがち
 ・ 対象が広範囲に及んでしまう
 ・ 一発勝負、成功のノウハウの蓄積ができない
 ・ ビデオの内容だけを共有
 ・ ユーザとの関係は弱く一過性
 ・ コスト大

 ● バイラルビデオマーケティングの方程式

   バイラルビデオマーケティング = ビュー + シェア

② ソーシャルビデオに対する誤解

一方、ソーシャルビデオに対する一番大きな誤解は言うと、YouTubeやフェイスブックを始めとしたソーシャルメディアで共有された動画をソーシャルビデオであるとする考え方である。これは、前時代的な古い慣習に縛られた考え方であり、今すぐ改めなければならない。ソーシャルビデオは、そんな薄っぺらな存在ではない。

 ● ソーシャルビデオの定義

 ・ 実際のマーケティング戦略である
 ・ メトリックスは”View”と”Share”の品質の良し悪し
 ・ 目的は長期的
 ・ 対象がセグメントされている
 ・ 連続的、成功のノウハウの蓄積ができる
 ・ ビデオの内容とそれがどうコミュニケーションされたかも共有
 ・ ユーザとの関係は強く長期的
 ・ コスト少

 ● ソーシャルビデオマーケティングの方程式

   ソーシャルビデオマーケティング = ビュー × 契約 × 価値 × 取得

【2】 バイラルビデオVSソーシャルビデオ項目チェック

バイラルビデオとソーシャルビデオの違いを項目別に比較している「Viral Video Marketing vs. Social Video Marketing – Which is Better?」という記事がある。自分なりに和訳してみたのだが、英語が得意な読書は是非オリジナルに目を通してほしい。

※ REELSEOの記事 ⇒ http://www.reelseo.com/viral-social-video-marketing/

① アテンション

・バイラルビデオは短期間の注意をとらえる。移り気ですぐにどこかに去ってしまう。

・ソーシャルビデオはフォーカスされた注意を得る。時間が経つにつれて増加する。

② ソーシャライゼーション

・バイラルビデオはソーシャルな活動を必要としない。ソーシャルメディアに関心がない人にも受けいられる可能性が高く、そうした人たちはバイラルビデオを見ても何もせず次のバイラルビデオをに移ってしまう。

・ソーシャルビデオはそれらから生まれる会話と人の助けに大きく依存しており、時間とともに洗練されていく。

③ 信用・信頼

・バイラルビデオは視聴回数と共有回数を成し遂げるためなら、どんな信用も必要としない。そのビデオは偽物であるかもしれない

・ソーシャルビデオは情報源とメッセージの信用に基づいている。そのビデオは透明かつ正当であるに違いない。

④ ターゲット

・バイラルビデオのターゲットはビューとシェアの量に関してである。ターゲットとしている視聴者とバイラルさせたい明確な目的を必要としていない。そして、ビューやインプレッションの回数はあてにならないことが多い。販売結果を伴わない、バイラルに関する間違ったプライドをブランドに与えてしまう。

・ソーシャルビデオのターゲットは、ビューとシェアの品質に関してである。そして、ターゲットとしている視聴者と明確な目的の両方に基づいたニーズがある。

⑤ 寿命

・バイラルビデオはかなり短期的な目標。陸上に例えるなら短距離走。

・ソーシャルビデオは長期的なモデル。陸上に例えるならマラソン。

⑥ リーチ

・バイラルビデオは可能な限り広範囲な視聴者に、いろいろな方法を使って届けようとする。

・ソーシャルビデオは満たされていないニーズがある隙間市場を見つけて、そのニーズに合った内容のビデオを届けようとする。

⑦ 複製

・バイラルビデオは不確実な市場をターゲットとしているため、最初の成功を複製することが非常に難しい。

・ソーシャルビデオは市場の変化に順応しながら、オリジナルを基にいた成功が毎回複製される。

⑧ シェア

・バイラルビデオはビデオの内容だけを共有する。

・ソーシャルビデオはビデオの内容だけではなく、人から人へコミュニケーションされた機会も共有する。このコミュニケーションは、質疑応答の形式、レコメンデーションの提供、見解のシェア、応答などをしながら合意させていくことができる。

⑨ コミュニケーション

・バイラルビデオは誰かが話し合うことに関するものである(能動的)。

・ソーシャルビデオは誰かと話し合うことに関するものである(主体的)。

⑩ 契約

・バイラルビデオはリアルな視聴者との契約を保証するものではない。オンライン上の視聴者は、注意を引こうとするする他のビデオによって簡単に注意をそらされてしまう。

・ソーシャルビデオは視聴者との関係を築きそれを維持することが簡単にできる。ここで言う関係とは、二人またはそれ以上のお互いが、リアルなコネクションを持った状態であると定義する。ソーシャルビデオは、連帯感や人脈を作ることに非常に向いている。

⑪ 持続性

・バイラルビデオは一般的に成功を持続するのが難しい(単発)。

・ソーシャルビデオは連続したビデオを組み立てて視聴者と接することができる(連続)。

⑫ 忠誠

・バイラルビデオは視聴者との関係において持続性を保てないため、忠誠心というものが生まれにくい。バイラルビデオの視聴者は、注意をひくビデオなら何でも視聴しようとする。

・ソーシャルビデオは視聴者との間に忠誠心を育む。忠誠心を持った視聴者は次のビデを待っている。

⑬ 目的

・バイラルビデオの目的は視聴者楽しませること。

・ソーシャルビデオの目的はいつも誰かと助け合うこと。

⑭ コスト

・バイラルビデオの制作には膨大なコストが必要。

・ソーシャルビデオの制作にはあまりコストがかからない。

⑮ パフォーマンスを計測するための方程式

・バイラルビデオマーケティング = ビュー + シェア

・ソーシャルビデオマーケティング = ビュー × 契約 × 価値 × 取得

【3】 今回のまとめ

バイラルビデオを完全に否定しているわけではない。バイラルメディアとソーシャルビデオは関連する部分が多く、完全に切り離して考えられるものでもない。使い方によっては、バイラルビデオも販売の拡大やブランディングの向上に効果を発揮する可能性がある。ただ、これだけソーシャルメディアへの関心が高まっている現在、ゆっくりと時間をかけながらではあるものの、より深く関係を構築することが可能なソーシャルビデオマーケティングの方が導入しやすいのも確かである。

マーケティング予算がそれほど潤沢ではなく、連続的なビデオの供給が可能なのであれば、ソーシャルビデオマーケティングは選択肢の一つとして考えてみるべき価値がある。バイラルビデオよりリスクが低い点も魅力だ。今後も、ソーシャルビデオ並びにソーシャルビデオマーケティングの動向を追いながら、興味深い情報が見つかり次第レポートしたいと思う。

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