ザッポスから学ぶコンバージョン率を高めるためのイーコマースビデオ(商品動画)戦略9つのポイント
イーコマースビデオには、ECサイトを訪れた買い物客を長時間商品購入ページに滞在させ、購買意欲を掻き立てるという効果がある。なぜそのようなことが可能になるのかと言うと、商品動画が、写真やテキストだけでは表現が難しい商品の特長、使用感などを伝える手段として最適なツールだからである。そして、その商品動画が持っている無限の可能性に最初に気がついたオンライン小売事業葉こそ、他ならないザッポスだ。よって、オンライン小売事業者はイーコマースビデオに関するあらゆるノウハウをザッポスから学ぶことができる。
今回は、ザッポスのイーコマースビデオに対する取り組みの歴史を振り返りながら、ザッポスがどのような経緯を辿りながらイーコマースビデオをECサイトに取り入れ、そしてそれを成功に導くことができたのか、その秘密に迫りたいと思う。そして、ザッポスから学んだことを整理し、オンライン小売事業がイーコマースビデオ導入を成功に導くために重要となるポイントについて明らかにしたいと思う。
イーコマースビデオを導入する際に気をつけておきたい、実践的な9つのポイントを紹介するので、是非最後までお読みいただきたい。
【1】 ザッポスのイーコマースビデオ導入の歴史
下の動画は、2009年のストリーミング・メディア・ウェストで、当時のザッポスのコンテンツチームのシニア・マネージャーであるリコ・ナソルがインタービューに応えている様子を撮影したものだ。このインタービューの中で、リコ・ナソルが、商品動画を用意してある商品は商品動画を用意していない商品に比べて6~30%もコンバージョン率が高いという、非常に興味深い話をインタービューアー相手に語っている。そこで、このインタービューの中で、リコ・ナソルが商品動画に関して言及している興味深いポイントをまとめてみた。
※ このインタービュー動画についてはいろいろなブログで紹介されているので、詳細な説明は割愛する。
・ 商品動画を用意してある商品は6~30%コンバージョン率が高い
・ 商品動画は自社のスタッフで制作していて、モデル等は起用していない
・ 商品動画の本数は8,000本で、来年中に50,000本にする計画がある
・ 商品動画を制作するために、社内にスタジオと専門チームを作っている
■ リコ・ナソルへのインタービュー動画
また、ザッポスがこの頃取組んでいたイーコマースビデオの面白いアプローチの一つに、顧客から商品の感想などを動画で投稿してもらう「Zappos Video Experience」というサービスがある。この「Zappos Video Experience」は、ザッポスが開設したYouTubeチャンネルに顧客から動画を投稿してもらい、それをザッポスのECサイト上でも公開するというサービスで、当時は現在と違ってかなりの動画の投稿があったらしい。現在もYouTubeと自社のECサイトで展開しているので、是非アクセスしてみてほしいサービスの一つである。
顧客の買い物経験を動画で投稿してもらうというのは、いかにもザッポスらしい面白いアイディアだ。実際に商品を購入した顧客が、商品そのものや納期を始めとした顧客対応サービスに満足した時は、その時感じた感情をリアルに伝えたいと思うものである。そういう意味では、スマートフォンやタブレットPCで簡単に動画の撮影ができるようになった今こそ必要なサービなような気がする。
● ECサイトのZappos Video Experience
● YouTubeチャンネルのZappos Video Experience
2010年には、特定の商品をより詳細なテキスト、写真、動画で説明するという特集ページも開設している。一つの商品の特長・利点を、何人かのスタッフが紹介し合うという面白いアイディアのウェブページになっている。現在もページ自体にはアクセスすることができるが、企画自体は終わってしまったようだ。
是非見てもらいたいインタービュー動画をもう一本紹介したい。このインタービュー動画は、イーコマースビデオに関する貴重な情報を提供してくれる”REEL SEO”の記者が、ザッポスの商品動画制作部門のマネージャーであるローリー・ウィリアムズに対して行ったものだ。
■ ローリー・ウィリアムズへのインタービュー動画
内容自体は2分弱の短いものなので、最初に紹介したリコ・ナソルへのインタービュー動画のような、イーコマースビデオの導入に関する深い話までは聞けないが、いくつか興味深い発言をしているので是非視聴してみてほしい。特に印象的なのが、ローリー・ウィリアムズがコア・バリューの重要性に言及し、ザッポスという会社が商品と一緒に企業文化も売っていると発言している点だ。そして、その一環として商品動画の配信にも取り組んでいると言う。
■ Laurie is tougher than beef jerky
【2】 コンバージョン率を高めるためのイーコマースビデオ戦略の9つのポイント
では、次にザッポスの成功事例を参考に、コンバージョン率を高めるためのイーコマースビデオ戦略のポイントについて紹介したい。ザッポスの商品動画は、ECサイト上のそれぞれの商品ページに最適化されて配置されている。ただ、動画だけをまとめて見たい時は、ザッポスが運営するYouTubeチャンネル「ZapposGear」を利用するのが便利だ。この「ZapposGear」には、現在47,098本(2011年7月22日現在)の商品動画が公開されている。また、「ZapposGear」では、商品動画以外の動画も公開されているので是非アクセスしてみてほしい。
● ザッポスのYouTube公式チャンネル「ZapposGear」
ザッポスの成功事例からヒントを得た、コンバージョン率を高めるためのイーコマースビデオ(商品動画)戦略のポイントを、以下の通り9つにまとめてみた。
① 商品動画はコンテンツの一部であることを理解する
コンバージョン率を高めるために一番重要なコンテンツは、商品購入ページ全体であることを忘れてはいけない。商品動画は、テキストの代わりを果たすことはできないのだ。商品の特長、仕様、価格などを説明するテキストがあって、はじめて商品動画がその威力を発揮する。商品動画が全てだと勘違いして、テキストをないがしろにしていては高いコンバージョンは望めない。
② 60秒ルールを守る
商品動画の再生時間は短かい方がいい。できれば60秒以内に収めたい。YouTubも、ユーザが動画を見ている平均時間は60秒であるというデータを公開している。もしも商品が複雑で、説明に3分必要だとしたら、60秒の商品動画3本に分割することをお薦めする。ECサイトを訪れる買い物客は、いろんな商品動画を見て何を買うかを決めたいと考えている。忙しい買い物客は、60秒以上も付き合ってはくれない。
③ 画質はできるだけ高画質に
商品動画の画質はできるだけ高画質の方がいい。時間が60秒であれば、高画質にしても完成した商品動画のファイルサイズはたかが知れている。商品の魅力を最大限に伝えるためにも、高画質な方が望ましい。また、高画質な商品動画を用意しておけば、後でスマートフォン用のバージョンを用意する時にも、画質の劣化を最小限に抑えることができる。画質にはこだわりを持つ必要がある。
④ サムネイルを最適化する
買い物客が再生ボタンをクリックしたくなるような、魅力的なサムネイルを用意しなけければならない。忙しい買い物客は、商品動画の回りに用意されたテキストと商品動画のサムネイルを見て再生ボタンをクリックするかどうかを判断する。サムネイルは、できるだけ商品の魅力を伝える画像にしなければならない。
⑤ 商品のプレゼンテーションは自社の社員が行う
商品のプレゼンテーションは自社の社員が行うべきである。自社の商品の特長・良さを一番よく理解しているのは社員である。社員が心の底から伝えたいと思っているメッセージだけが顧客の心に届く。モデルやタレントを起用した、見た目だけがカッコいい商品動画ではなく、相手の心に届くに内面がカッコいい商品動画を用意する必要がある。
⑥ できるだけたくさんの量の商品動画を用意する
特に欲しいものがなくても、顧客がザッポスの商品購入ページを訪れるのは、ほとんどの商品に商品動画が用意されているからである。ごまかし程度に2、3の商品だけに商品動画を用意しても、コンバージョン率が高くなることはない。ある程度まとまった量の商品動画が必要だ。とは言っても、最初から全商品に動画を用意するのは難しいだろう。そんな時は、ザッポスが初期の頃に実施したように、ブランド(ザッポスはナイキだった)だけに特化するとか、特集ページの商品だけに特化するという方法がある。見せ方を工夫すれば、それなりのまとまった量の商品動画があるように見せることができる。
⑦ 動画の演出はパターン化してしまう
②の60秒ルールを守るためには、演出をパターン化してしまう必要がある。商品やブランド毎にニーズを聞いていては、制作の作業が効率化できない上に、品質にもバラツキが生じてしまう。顧客は、商品動画に対して、動画広告のようなカッコいい演出を望んでいるわけではない。買おうかどうしようか迷っている時に、そっと背中を押してくれるような単純でわかりやすい商品動画を望んでいる。ワンパターンを恐れることはない。
⑧ 自社のECサイトとYouTubeの両方に配置する
あくまでも、商品動画を配置する基本となる場所は自社の運営するECサイトだと考えるべきである。商品動画に直接関連するウェブページへのリンクボタンをセットしたり、YouTubedeでは実現が難しい細かいカスタマイズが必要になるからだ。その上で、可能であればYouTubeチャンネルを開設し、同じ商品動画を配置しておきたい。
⑨ ソーシャルメディアへのリンクボタンを用意する
商品動画のメトリックスは、視聴回数ではなく共有された回数である。動画広告のように、スポンサーの目を気にしながら視聴回数ばかりを追う必要はない。重要なのは、ソーシャルメディアでいかに共有されたかだ。ぞの際も、重要なのは数ではなくて深さになる。商品動画には、簡単にシェアが可能なソーシャルメディアへのリンクボタンが必須である。
以上が、ザッポスの成功事例が教えてくれた、コンバージョン率を高めるためのイーコマースビデオ戦略9つのポイントだ。いずれも、実践的で参考になるものばかりなので、すぐにでも取り入れてみてはどうだろうか。。
【3】 今回のまとめ
今回、ザッポスのイーコマースビデオ導入の歴史を改めて振り返ってみてわかったことは、2008年当時から、ザッポスが商品動画を重要な戦略の一つとして重要視していたということである。現在のような、5万本近い動画をほとんどの商品ページに配置するスタイルが、試行錯誤の上に確立されたものだということは、今回調べてみて始めてわかった事実の一つだ。
今回紹介した「コンバージョン率を高めるためのイーコマースビデオ戦略の9つのポイント」は、どちらかと言えば、ECサイトを運営している国内の中小企業にこそ真似をしてもらいたいと思っているアプローチ方法である。なぜなら、商品動画は、動画広告のように莫大なコストをかけずに制作ができるからである。またその効果も、動画広告と違ってすぐに測定が可能だ。そういう意味では、イーコマースビデオは、中小のECサイトを運営する事業者にこそ実践してほしいアプローチである。
ザッポスのイーコマースビデオに対する取り組みは、米国でもかなり注目されており、新しい情報が定期的に提供されている。役に立ちそうな情報が入手でき次第、またレポートしたいと思う。
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