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スマートメータの導入で明らかにされるプライバシーの問題について

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スマートメータというもの、世の中に大きく寄与する新しい電力インフラを支える技術として注目されている一方、プライバシーに関する影響懸念も当初から話題になっている。

家庭内の電力使用状況をかなり細かく読み上げ、それを電力界社にアップロードする機能を有するこのスマートメータの発信するデータは、スペック的には一秒に数回というスピードで送ることが出来る。その情報をもって、家庭内の様々な生活状況や家庭環境を想像以上に詳細に分析することが出来る、という事が明らかになっている。 

イギリスで開催された、Smart Grids and Cleanpower Conferenceというイベントにおいて、Siemens Energy社の幹部が下記のように発言している。

"We, Siemens, have the technology to record it (energy consumption) every minute, second, microsecond, more or less live. "
"From that we can infer how many people are in the house, what they do, whether they're upstairs, downstairs, do you have a dog, when do you habitually get up, when did you get up this morning, when do you have a shower: masses of private data."

Siemens は、スマートメータを利用して詳細に電力消費データを収集、記録することが出来る。この性能をもってすれば、家庭内でそれぞれ何人住んでいて、何をしているのか、一階にいるのか二階にいるのか、犬を飼っているのか、何時に起きるのか、シャワーを何時に浴びるのか、等、膨大な量のプライバシー情報を吸い上げる事が可能である、と述べている。

北米でこの問題を重要視しているのは、EEF(Electronic Freedom Foundation)と呼ばれる、アメリカ政府の団体である。
スマートメータから収集できるデータに関わるプライバシーの規制を早急に法制化する必要性を主張しており、不当にプライバシーを侵害するような用途に対しては厳しい罰則の必要性を謳っている。

現在、EEFは、California Public Utilities Commission (CPUC)というカルフォルニア州の電力事業社を管理する州政府の組織は、スマートメータによって収集されたデータの取り扱い方に関する規制を法制化すべく、方針を明確化すべく働きかけている。

下記が、一家庭から収集することが出来る情報の一例である。


http://www.eff.org/deeplinks/2010/10/eff-advises-california-puc-smart-grid-privacy
Smartgridspying2
smartgridspying2.gifをダウンロード


この表を元に分析を行ったのは、Smart Grid Interoperability Panel – Cyber Security Working Groupと呼ばれるUS Department of CommerceのNIST(National Institute of Standards and Technology)の一組織である。 

分析結果によると、この家庭において、次のような事が判明している。
● 冷蔵庫の稼働状況(どの程度の大きさなのか=家族構成)
● お湯を沸かしたり、トーストを焼いている時間(朝食時間)
● 洗濯機を回している時間(確実に家事を行って、家に大人がいる時間帯)
● オーブンを使っている時間(夕食時間)
● 夜お湯を沸かしている時間(家族がくつろいでいる時間)

電力の消費パターンを分析するだけで、これだけ、家庭内の状況がつかめてしまう、というのは恐ろしい話である。 たった一日の情報でこれだけの事がわかるのであれば、これを24時間、一年中情報を収集し、それを分析すれば、かなりの事が把握できてしまう、ということになるのは然程想像に難くない。

EEFが主張しているのは、電力会社がこのような情報の重要性を認識し、取り扱いに関しては高いセキュリティ性を持って管理し、ルール作り、罰則、の明文化を徹底すべき、と提唱している。

ある意味では、スマートメータが収集できる情報は、俗に世間で騒がれている個人情報(住所、電話、誕生日、等)よりもっとプライバシー性が高い、ということが出来る。IT化していない情報(例:朝食時間)が対象になっているからである。これはマーケティング会社にとっては、非常に有効な情報になる。 保険会社からすれば、生活様式がかなり詳細にわかるので、場合によっては申告していない病気の検知(夜、特殊な治療を行っている)、不健康な生活パターン、等を知ることが出来るため、保険料に大きな影響を与えるデータとして有効になる。悪用する事を考える人に取っては、明らかに留守にしている時間帯を検知し、空き巣に入る、という事も容易にできるようになる。

本人の意思と合意があって個人情報を掲載し、公開するソーシャルネットワーキングサイトのような文化が広まっている今日、個人情報に関しては意識が少し薄らぐ方向にある、という見方もあるが、このスマートメータに関する問題は、個人の意志、意識にまったく関係なく、情報がどんどん吸い上げられていく、という非常に危険な問題として今後注目されて行くべき課題である、というべきである。

というか、現在スマートメータが導入されている実証試験のサイトにおいて、実際にこういった情報収集、分析、プライバシー情報の転売が既に行われていない、という保証が無い、というのが今日の状況である、という事も言える。

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