トップクラウド事業者は一体いくら儲かっているのか?: Amazon と Rackspaceの場合
さて、最初の投稿は、クラウドコンピューティングに関する内容をお届けしたいと思います。
北米のクラウド市場は、ざくっと大きく分けて、Amazon Web Service、Righscale Hosting、その他、とで市場を3分割しています。 かなり乱暴な分け方ですが、そんなようなイメージで持って頂ければ結構だと思います。
クラウドコンピューティングは未だに賛否両論が飛び交う、非常に興味深いキーワードであり、今更その価値を評価するのも変な話ですが、技術的な評価はさておいて、本当に儲かるビジネスモデルなのか? という素朴な疑問に対してはしっかり評価をすべきなのでは、と思うところです。
その判断の拠り所として一番参考になるのは、北米の市場をほぼ独占しているAmazonとRackspaceの2社のふところ具合を調査する、と思い、ちょっと調べてみました。
両社、共に株式を公開している企業である故、資産状況は公開されているが、クラウドコンピューティング事業単体での収益状況については明らかにしていない、という点においてはどちらも共通している。北米市場争いにおいては両社合わせて全体の7割近くに達する状況であるため、一体どれくらい儲かっているのか、収益構造はどうなっているのか、大きな関心が寄せられる所です。
Rackspace社の最近の10-Q(四半期ごとの財務報告)によると、下記の情報が報告されています。
● 現在、88,590件のクラウドユーザで、去年の51,440件から大幅に伸びている
● 同時期に獲得したホスティング(元々のRackspace社の事業)顧客は100社増え、19,433件
● クラウド事業での売上は、$5500万ドルで昨年から50%増
● ホスティング事業は、クラウド売上の約10倍で$6.2億ドルであるが、年成長率は14%に留まっている。
さらに非常に興味深い事には、今年はデータセンタスペースを8000平方フィート減らしている、という事実。 つまり、データセンタスペースを減らしながらも一平方フィートあたりの売上を25%増加させ、約$4,440/sqftを達成しているのです。
一 方、Amazon Web Serviceについては、UBS(スイス銀行)の調査によると、同社は年間に$5億ドルの売上を達成している、との事。 これはAmazon全社の売上の2%に相当する。 この数字は、Amazon社の決算報告書に記載されている"Other"という項目の売上をベースとしている。同じ分析によると、このAWSの売上は 2014年には、$25.4億ドルに達する、と予測しています。
この数字、AmazonのIT投資の総額、現時点で$36.5億ドルと比較し てまだ小さい数字であるが、この数字も急激な伸びを見せているので、実際の投資に対する回収という面ではまだまだ難しいビジネスである、と言わざるを得なません。 また、Amazonの本業であるe-Retailing事業はと比較すると非常に比重の小さい事業であるため、今後どのような展開になって行くのか、非常 に注意深く見て行く必要がある、と言えます。
クラウドコンピューティングのトップ2社、いづれも高収益型の事業とは必ずしも言えない、という 実に意外な結論に達してしまう、というのは今後のクラウドコンピューティングの未来を分析する上で重要な事実である、と言えます。 トップ2社がこういう状況であるなら、3位以下のベンダーの状況は一体どういう状況なのか、何となく想像はつきそうな気がします。
市場の伸び
については、サービス事業である、という性格上、そう大きな伸びや変化が出てこないと想定されるので、収益性をあげようと思うと、徹底的なコスト、それも
CAPX(初期投資)とOPEX(運用コスト)の両面での削減を行いつつ、売上は継続的に伸ばす、という戦略を具体的に策定して、進めることが必要です。 北米のクラウドコンピューティングのコストで最も大きいのは、継続的な設備投資と電力コストです。
これらは集約化を積極的に行う事によって達成する戦略が最も一般的である、と言える。また、稼動率を100%にできるだけ近づける様な運用方法もシステム
化する事が重要と言えます。
なおかつ、北米ののクラウドコンピューティング事業者は、人件費の削減を既に自動化ソフトウェアソリューショ
ンで達成している、という現状であり、まだそのエリアで遅れを取っている日本のベンダーは、自動化、環視、等の運用ソフトウェアの開発、導入を積極的に行
う事が非常に重要である、と言えます。
そして、最大のポイントは、Amazonにしても、Rackspaceにしても、クラウドコンピューティング事業がそれぞれのビジネスの中心事業ではない、ということです。 考えようによってはいつでもやめることも出来るし、収益状況も詳細に公開する必要がない、ということです。
どちらの会社も、実は良く考えてみると、そんなにクラウドコンピューティングについて強力な宣伝やマーケティング活動をしているわけでもなく、どちらかと言うと、周りが盛り上げている、という印象があります。
もしかして、クラウドコンピューティングというのは、そういうモノなのかも知れない、なんてふと思うと、日本企業のクラウド騒ぎにちょっと不安を感じたりもする、今日この頃です。
みなさん、いかがですか? ちょっと興醒め?