オルタナティブ・ブログ > 榊巻亮の『ブレイクスルー備忘録』 >

プロジェクト、笑い、学び、心に響いた一言。 成長のキッカケ書き留めます。

ケンブリッジ語録#35 「小さく早く失敗せよ」

»

僕が勤めるコンサルティング会社、ケンブリッジには、厳しいプロジェクトの現場で生まれてきた「語録」がある。
多くのコンサルタントの琴線に触れ、成長を促すカンフル剤になってきた。現場感がみなぎるエネルギッシュな語録を書き留める。今回はこれ。

小さく早く失敗せよ

語録画像.jpg

これは奥が深い。

普通の会社では「失敗は悪である」と捉えられがちだ。まぁ確かに、失敗しない方が良いに決まってる。成功しかしない人の方が高いパフォーマンスを出すだろう。

でも、「成功しかしない人」などいるのだろうか?・・・。うーむ。超天才は別として、普通はありえない。

「失敗しない人」はいるかもしれない。全くチャレンジせず、決められたルーチンワークだけをやっていれば失敗はしないだろう。でもその分、成長もまったくないはずだ。チャレンジするから成長する。でもチャレンジすると失敗の確率も上がる。

つまり、成長と失敗には正の相関関係があると思われる。成長するためにはチャレンジが必要だ。チャレンジすると失敗することも増える。という図式だ。

ここに「チャレンジと失敗のジレンマ」がある。成長したいけど、大きな失敗をして会社や周囲に迷惑を掛けたくない。チャレンジしたいけど、成果は出したい・・・。

17c46_227_77a77966c9b41a8a6ad61901cca0863d.jpg

ケンブリッジにはこのジレンマを打破するために、「小さく早く失敗する」という考え方が根付いている。

チャレンジは推奨したい。でも大きな失敗をして会社やクライアントに打撃があるのは流石に困る。

でも全く失敗しないことなどありえない。失敗は許容する会社でありたい。
だから、「小さな失敗」は許容しよう。むしろ「小さな失敗」は推奨しよう、という考え方をしている。

小さく失敗したことが自覚できれば補正できるからだ。改善できるからだ。大きな失敗に繋がる前に小さく失敗し、小さく補正する。そして小さく成長する。

やがて大きな成長を遂げつつ、大きな失敗を防ぐ。という考え方である。この考え方は強力だ。

世の中では「フェイル ファースト( fail first)」という概念で語られることもある。グーグルの元CEOエリック・シュミットが、「Fail fast, fail cheap, and fail smart」と言っているらしい。直訳すれば、「早く失敗、安く失敗、賢く失敗」という意味となる。賢く失敗ってなかなかいい言葉だな。



フェイルファーストを「仕掛け」で担保する

ケンブリッジのすごいところは、概念だけでなく、実際に「小さく早く失敗」するための仕掛けが沢山散りばめられている点だ。
ケンブリッジ語録#8意識しますでは変われない。変わるには仕掛けが必要だ」でも書いたが、いくら「小さく早く失敗しろ」と言われても、仕掛けに落ちていなければ実現させるのは難しい。小さく失敗するための仕掛けを少し紹介しよう。

仕掛け①30%レビュー
資料作りや会議の準備などタスクを進める際に、30%程度の完成度で一度上司のレビューを通す習慣がある。
完成度100%になってから、ガッツリ修正が入ると手戻りが大きくなる。つまり大きな失敗につながる。
完成度30%程度の段階でみてもらうことで手戻りは最小に押さえつつ、軌道修正することができる。
言い換えると「早い段階で小さく失敗する」ことになる。30%しかできていない段階でレビューを受けるのは「品質を管理」したいからではなく、「小さく失敗」するためなのだ。

仕掛け②Check Point
会議の終わりに、「会議そのものを振り返る」文化がCheck Pointだ。2時間の会議を振り返って、良かった点、悪かった点、気付きなどを数分で話し合う。
これも重要なのは「小さく失敗すること」にある。どうしても振り返りをすると「良かった点」に目が行きがちだが、むしろ「気付き」や「悪かった点」に着目して次の会議からはより良い場が作れるようにするのだ。
会議の終わりに毎回やるのだが、これが重要だ。言い換えると会議の度に「小さく失敗する」と捉えられるだろう。これが上手く機能すれば、会議のたびに少しずつ会議の品質が上がっていくことになる。

仕掛け③プロジェクトレビュー
以前のブログでも書いたが、ケンブリッジでは、プロジェクト毎にパフォーマンスレビューを行う。一般的な会社は多くて年に2度の人事考課だと思うが、ケンブリッジは2~3ヶ月に一度しっかりパフォーマンスレビューを行っている。「期待を上回ったところ」、「もっと伸ばして欲しいところ」が具体的な事象をベースにフィードバックされる。
つまり、2~3ヶ月に1度「失敗を自覚できる」環境があるとも捉えられる。

仕掛け④サンセットミーティング
さらに、プロジェクトのフェーズ毎に、関係者が集まってプロジェクトを振り返るサンセットミーティングを行っている。プロジェクト全体で良かった点、悪かった点、改善すべき点を話し合う場だ。個人へのフィードバックも行われる。これも2~3ヶ月に一度行われる。
例えば、2年に渡るプロジェクトの最後に振り返りをするのでは遅すぎる。場合によっては大失敗プロジェクトになっている可能性もあるだろう。2~3ヶ月に一度プロジェクトの品質を振り返っていけば、プロジェクトが終わるまでに10回以上「小さく失敗する」機会がある。10回以上「軌道修正をする」機会があるのだ。



こんな風にケンブリッジでは「小さく早く失敗する」ための仕掛けが随所に盛り込まれている。早く失敗すればその分早く改善できる。傷も浅くて済む。数多く失敗すれば、その分成長の機会が得られるというわけだ。失敗と成長を両立させるための工夫。失敗をむしろ歓迎するための工夫だ。
あなたは失敗を避けていないだろうか?

失敗をゼロにすることはできない。失敗しないように頑張って頑張って・・・最後に大失敗をしてしまわないように、小さく早く失敗することも考えて欲しい。


Comment(0)