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ファンタジー・フットボールを通じてファンとの関係をさらに強化するNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)

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ファンタジー・フットボール Fantasy Football をご存じだろうか?

http://www.nfl.com/fantasyfootball

アメリカ4大プロスポーツの中でもトップ人気を誇るアメリカンフットボールのプロリーグ NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)において、熱狂的な愛好者が急増中の”もうひとつの楽しみ方”がファンタジー・フットボールだ。

ひとことで言うと、NFLの全30チームから自分の好きな選手を選んで”仮想チーム”を編成しておくと、その選手たちの実際の試合でのプレーひとつひとつに応じて自分の仮想チームにポイントが加算されていき、成績・勝敗が決まる。いわばリアルにバーチャルが連動するスポーツゲームだ。

もう少し詳細なルールについては後述するが、その部分を先に読みたい方は「ファンタジー・フットボールの進め方」へどうぞ。

下記は、フットボール・野球・バスケなどを含めたアメリカのファンタジー・スポーツ全般、さらにはその周辺で盛り上がる関連ビジネスについて、簡潔かつポイントを押さえて解説している良記事。まずは一読いただきたい。

■好きな選手で架空チームを編成、現実の成績が得点に。アメリカでビジネスとしても大成功の人気ゲーム“ファンタジー・スポーツ”は日本でも流行るか?(2011年12月12日)
http://diamond.jp/articles/-/15263

なぜNFLはファンタジー・フットボールに力を入れているのか?答えは簡単。ファンタジー・フットボールの参加者は熱狂的なNFLファンになりやすいからだ。それはなぜか?

ファンタジー・フットボールの魅力と、その一助としてSAPがNFLと共同開発した「プレイヤー比較ツール」について、NFLのファンタジー部門のディレクター、ダニエル・シュロスマン氏の2014年6月の講演から構成してご紹介する。

■NFL Increase Sales and Engage Fans
http://events.sap.com/sapphirenow/en/session/9515

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■同講演の資料はこちら。
http://sapvod.edgesuite.net/SapphireNow/sapphirenow_orlando2014/pdfs/40835.pdf

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ファンタジー・スポーツはNFLにとって、ファンとの関係を強化するうえで非常に重要なサービスです。

02(フットボール以外のスポーツも含めた)「ファンタジー・スポーツ業界」は急激に成長しています。ファンタジー・スポーツ協会によると、ファンタジー・スポーツに参加しているコンシューマは約3,660万人で、毎年10%~12%くらい増えています。そのうち74%は自分の仮想チームを勝たせるために、常時4つ以上のWebサイトを使ってデータを調査する、「非常にアクティブ」なファンなのです。 

彼らは平均して週に18時間弱をTV観戦などのスポーツ関連に費やしており、うち9時間弱をファンタジー関連に使っています。そしてフットボールはそのほぼ7割を占めています。

NFLにとってファンタジー・フットボールは非常に重要なマーケティング・ツールなのです。

【筆者注】ファンタジー・スポーツ協会 FSTA のサイトによると、ファンタジー・スポーツ参加者の構成は、

男性 80%、女性 20%
平均年齢 34歳
未婚者 51.5%/既婚者 48.5%
白人 89.8%
大卒以上 78.1%
ファンタジー・リーグへの参加費を払っている有料プレイヤー 46.9%

となっている。アメリカ人の平均に比べると、明らかに高学歴(≒高収入)であり、平均年齢も比較的高く、つまりカネを持っていて、しかも実際にスポーツ関連に支出している。非常に魅力的なマーケットであることがわかる。

またアメリカ人のうち(12歳以上)のうち、ファンタジー・スポーツ参加者が占める割合は、

成年者(18歳以上)の13%
未成年者(12~17歳)の13%
男性の19%
女性の8%
大卒以上の18%
高卒以下の10%
世帯収入が5万ドル以上の世帯の16%
世帯収入が5万ドル以上の世帯の10%

を占めているとのこと。

さらにファンタジー・スポーツ参加者(3,660万人)が12か月間に使う関連費用は平均して111ドル(約1万1100円)。これを合計すると、アメリカだけで年間36.4億ドル(約3640億円)のカネが使われていることになる。

NFLがファンタジー・フットボールを開始したのは2010年です。ファンとのリレーションの強化のために、基本機能に加えて、独自コンテンツの提供に力を入れています。たとえばハイライトシーンの1分動画です。あなたがファンタジーで指定した自分のチームの選手が得点すると、ほんの数分以内にそのシーンの動画があなたに届き、あなたは自チームの”歓喜”をリアルタイムに共有することができる、というわけです。

【筆者注】 NFL.com以外にも、Yahoo.comESPN.com(スポーツ専門TVチャンネル)、CBS.comFOX.com(いずれもTV局)など多くのWebサイトが、ファンタジー・フットボールを楽しむための「プラットフォーム」(”コミッショナー”が”リーグ”を設定し”仮想チームオーナー”を集めてプレーを行うための「場」としての諸機能)を提供している。実はNFLはむしろ後発なので、より魅力的なサービスで集客に努めているわけだ。

SAPとの協業は2013年に始まりました。SAPはデータ分析の専門家ですから、まずデータ分野にフォーカスしています。

ファンタジー・フットボールに関して、NFLは、①初心者②上級者という2つのまったく異なるセグメントの両方をターゲットにしています。したがって、①初めてファンタジーに来た初心者にも使いやすく分かりやすい魅力的なインターフェースも重要ですし、同時に②もう10年15年とプレイしている上級者をも満足させる、最新スタッツや詳細な過去データ、そしてさまざまな分析ロジックを提供することも重視しています。

ファンタジー・フットボールで勝つためにまず重要なのは、以下の3点です。
1. 誰をチームメンバーとしてドラフトするか?
2. そのうち誰を先発メンバーに入れるか?
3. 誰かと誰かをトレードする場合、その価値はあるか?

この3つの問いに答えを提供できるツールとして、SAPと共同開発したのが、この「プレイヤー比較ツール Player Comparison Tool」なのです。

IT的に言えば、このツールは、「レスポンスの速さ」「拡張性」「稼働率100%」を兼ね備えていなければなりません。毎週日曜日のゲーム開始直前には、秒間1,000件を超えるアクセスが殺到しますが、この時間帯でも快適に使えなければ、NFLのブランドを保つことはできませんから。 

06NFLはデータと、ファンタジー・フットボールに関するエキスパートの知見を提供しています。

一方SAPは、SAP HANA Cloudというクラウド上のデータベース基盤と、ルミーラ Lumira という分析ツール、そしてそれらを駆使してシステムを設計するデータサイエンティストと予測アルゴリズムを提供してくれました。

ここが重要なところです。われわれは経験から、「このデータをこう処理すればこういう予測ができるはず」というアイデアは持っていたわけですが、それを実際にアルゴリズムとして実装するには、データサイエンティストの力が必要でした。

両社の力を結集して生まれたのが、この「プレイヤー比較ツール」です。

たとえば以下の画面では、デトロイト・ライオンズのQB(クオーターバック)マシュー・スタフォードとサンフランシスコ・49ersのQBコリン・キャパニックを、あくまでファンタジー・ポイント獲得の観点から、比較しています。

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まず総合比較では、26.6 対 11 で、スタフォードのほうが明らかによい選手だ、ということが一目でわかります。まず初心者向けにはこれで役に立つでしょう。

ただしこのツールは、上級者向けに、評価ロジックをカスタマイズすることができます。黄色のCustomize ボタンを押すと、下図のように、5項目の重みづけをスライダーで調整できるのです。

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NFLは過去の経験をもとに、山のようにあるデータを、下記の5項目にまとめました。

  • パフォーマンス Performance とは、今シーズンのこれまでのプレーの総合評価。 
  • 組み合わせ Match up とは、その選手のプレースタイルと、今週の対戦チームとの相性の良しあし。 
  • 安定感 Consistency とは、過去ファンタジー・ポイントを安定的に獲得しているかどうか、つまりブレが少ないこと。 
  • 上振れ Upside は逆に、ファンタジー・ポイントを一試合にドカンと大きく稼ぐ可能性がどれくらいあるか。 
  • 非スタッツ項目 Intangibles とはそれ以外の要素で、たとえばホームかアウェイか、天候、ケガの具合、などなどです。

では次に、デトロイト・ライオンズのRB(ランニングバック)レジー・ブッシュとデンバー・ブロンコスのWR(ワイドレシーバー)ウェス・ウェルカーという、異なるポジションの2人を比較してみましょう。こちらも、標準比較では、22対12.6 で、ブッシュのほうが上と出ています。

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しかし今回、私(仮想チームオーナー)は他の攻撃陣の陣容には自信を持っているので、最後のひとつのこのポジションではより安定性のある選手が欲しいとしましょう。

そこで、組み合わせのスライダーを「左端」つまり対戦相手チームによる影響をほぼ無視することにし、一方で安定感のスライダーを「右端」つまり安定的にポイントを稼ぐ力を重く評価することにしてみます。

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すると、今度はこのように、6対12.6 で、ウェルカーのほうが評価が高くなりました。

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次は、インディアナポリス・コルツのWR(ワイドレシーバー)レジー・ウェインと、ニューオーリンズ・セインツのWRマーカス・コルストンを比較してみます。どちらもほぼ同じくらいの成績で、標準設定では 22.8 対 20.1 とわずかな差ではありますが、ウェインのほうが良いと出ています。

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ではここで5項目の重み付けをカスタマイズしてみましょう。上級者として、私は Intangibles つまり表に現れない要素や Upside つまり一発高得点の可能性を追求することにしてみます。

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すると...やはりウェインが優位ですが、24.2 対 21.8で、その差は先ほどよりも少し広がりましたね。ということは過去データに自分なりの判断基準を加味すると、なおさらウェインを取るべきだ、という結論がデータによって裏付けられたというわけです。

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まとめると、SAPとの共同開発によって得られたメリットは、以下のとおりです。

  • データ分析、ロジックとアルゴリズム作成、それからシステムのホスティングとスケーラビリティ対応をSAPに任せたことにより、
  • NFLファンタジーチームはその本業に集中することができました。
  • 山のようなデータをユーザーフレンドリーなインターフェンスに転換して、直感的に使える画期的なツールをNFL.comサイトだけの機能として追加することができました。
  • 初心者ユーザーにはシンプルに、上級者ユーザーには分析をカスタマイズして、ファンタジー・フットボールの市場をさらに拡大できます。

 

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■ファンタジー・フットボールの進め方(NFL標準ルール概説)

ファンタジー・フットボールのルールにはさまざまなバリエーションがあるのだが、最も一般的なNFL標準ルールを概説する。(アメリカンフットボールに詳しくない方にもなるべく伝わりやすいようにと思って書いてはいるのだが、完全には無理なので... ご容赦いただきたい。)

※なぜ以下のように長々とルールを説明するのか?それは、ファンタジー・フットボールがなぜNFLにとって「ファンとのリレーションの強化の切り札」になりうるのか、その理由をご理解いただきやすいと考えるからだ。

◆誰かが”コミッショナー”となって、NFL.comなどのサイトの中で”リーグ”を立ち上げ、そこに10~12人くらいの”チームオーナー”が参加して、ひとシーズン(9月~1月)の間は基本的にその中で競う。チームオーナーは友人同士のこともあれば、サイト上で出会っただけのことも。

※NFLのレギュラーシーズンは年間16試合しかなく、9月~12月の毎日曜日に試合が行われる。1月は上位チームによるプレーオフが行われ、1月最終週または2月第1週に決勝戦(スーパーボウル)がある。

◆シーズン初め(8月ごろ)にそのリーグの”ドラフト”があり、チームオーナーたちは順番に選手をドラフトしてチームを編成する。したがって自分のひいき選手を自由に選べるわけではなく、他オーナーに取られてしまったら、他の選手を取り、後で”トレード”を持ちかけるしかない。”サラリーキャップ”もあるので高額年俸選手ばかりにならないような考慮も必要。

(順番に一人ずつドラフトする代わりに、サラリーキャップの範囲でより高い値段をつけたオーナーが落札していく、オークション形式のドラフトもある。)

◆チームは、攻撃側の”先発選手”が8人、”交代要員”が6人の計14人。守備側は”守備陣”として1組(実チームのうちから1つ)を保有する。つまり攻撃側は個人ごとに指名するが、守備側は「サンフランシシコ49ersの守備陣」などのように実チーム単位で指名する。(※守備側も個人ごとに選ぶというリーグもある)

◆攻撃側は、保有する14人の中から、毎週日曜日のNFLの試合開始前に、「今週の先発選手」計8人を確定する。確定した先発選手はその週の間は変更できない。

◆プレイごとにポイントが定められており、自チームの先発選手および守備陣が実際のNFLの試合で獲得したポイントが自チームに加算されていく。ポイントはリーグのコミッショナーが自由に設定できるが、NFLファンタジーのデフォルトは以下のとおり。

■攻撃側

パスヤード:25ヤードごとに1点
パスによるタッチダウン:4点☆
インターセプト:-2点
ランヤード:10ヤードごとに1点
ランによるタッチダウン:6点★
レシーブヤード:10ヤードごとに1点
レシーブによるタッチダウン:6点★
2ポイントコンバージョン:2点★
ファンブル:-2点
ポイントアフタータッチダウン:1点★
フィールドゴール(49ヤード以下):3点★
フィールドゴール(50ヤード以上):5点☆

■守備側

サック:1点
インターセプト:2点
ファンブルリカバー:2点
セーフティ:2点★
守備側によるタッチダウン:6点★
相手に与えた得点 (0): 10点
相手に与えた得点 (1-6): 7点
相手に与えた得点 (7-13): 4点
相手に与えた得点 (14-20): 1点
相手に与えた得点 (21-27): 0点
相手に与えた得点 (28-34): -1点
相手に与えた得点 (35+): -4点

◆実際の試合でスコアが記録されるのは★および☆の項目だけだが、ファンタジー・フットボールではそれに加えて個々の選手のプレーもそれぞれ”ファンタジーポイント”に換算して加算する。(☆は実試合でのスコアとは異なるポイント加算を示す)

◆リーグの中では、毎週、どのチーム同士が”対戦”するかを決めておき、上記のポイント加算によって”勝敗”を決める。レギュラーシーズン16試合が終わったところで、勝利数の多いチームが”プレーオフ”に進出し、最終的に”優勝”を決める。

(リーグによっては、対戦形式ではなく、ひたすらポイントを加算していき最後に一番多かったチームが優勝、というサッカーの勝ち点のような決め方にしているリーグもある。この形式では1リーグ内のチーム数に制限がないので、数千、数万チームが参加する巨大リーグも作れる)

◆自チームの”先発選手”がそれぞれ今週どのくらい活躍しそうか?を予想し、たとえば相手チームによって苦戦が予想される場合には”控え選手”と入れ替えることも。また”先発選手”がもし欠場した場合には、当然ながらその選手がその週にポイントを獲得できる可能性はゼロなので、負傷などの状態にも注意を払わなければならない。

◆そのリーグの中でどのチームにもドラフトされなかった余り選手は”フリーエージェント”となり、基本的にシーズン中いつでも自チームに”入団”させることができる。ただし15人枠があるので、かわりに誰かを”放出”しなくてはならず、サラリーキャップも適用される。ケガで今シーズン絶望、といった選手が出た場合には速やかに入れ替えを行う。

◆また他チームのオーナーとの交渉が成立すれば、”トレード”を行うことができる。トレードは1人対2人なども可能だが、金銭トレードはできない。

こうしたルールのもとで、毎年、何百万もの”リーグ”が作られ、各”チームオーナー”が毎週一喜一憂している、というわけだ。

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■「知的ゲーム+スポーツ」としてのファンタジー

ファンタジー・フットボールがなぜNFLにとって「ファンとのリレーションの強化の切り札」になりうるのか?

ファンタジー・フットボールで勝利を収めるには、まずシーズン開始前から、綿密な調査が必須だ。誰を”自チーム”にドラフトするべきか?有名な有力選手ほど年俸も高いし、他チームのオーナーも狙っているから、希望通りに獲得できる見込みは薄い。「低年俸ながら今年ブレイクしそうな若手」の発掘のために、プレシーズンのキャンプやオープン戦のころから、スカウトさながらに選手の情報収集を行うことになる。

シーズンが始まっても、やはり調査が欠かせない。とくにケガとByeには気を付けないと、その選手のポイント貢献がゼロになるし、それ以外でも各先発選手が期待通りのポイントを挙げているか?控え選手やフリーエージェントと入れ替えるほうがよいか?を検討し続ける必要がある。

Byeとは、試合がない週のこと。NFLは16試合を17週間かけて行い、各チームともその間1回だけ「休み」となる週がある。Byeは4週目と12週目の間のどこかで、年間スケジュールの一部としてランダムに設定されている。Byeの週はそもそも試合がないので、その選手はポイントを獲得することはできない。

アメリカでは都市と都市の距離が遠いこともあって、ほとんどのファンは地元に集中している(たとえばヒューストン在住者はヒューストン・テキサンズのファンが圧倒的に多い)。つまり「ふつうのNFLファン」は地元の1チームしか追いかけていないことが多く、したがって地元チームが優勝争いから脱落するとそれだけでシーズン後半は熱が冷めたりする。

ところがファンタジー・フットボールでは事情がまったく違う。”自チーム”の選手は多数のNFLチームから広く集められていることが多いから、”チームオーナー”は必然的に(地元球団だけでなく)NFLの非常に多くの試合を克明に追いかけることになる。つまり、ある意味、2つの異なるリーグを同時に楽しむことができる、のである。

【参考リンク】ファンタジーでNFLの楽しみ方に変化{前編}{後編}
http://www.afnjapan.com/nfl/14848/
http://www.afnjapan.com/nfl/14856/

また、ひとつの”リーグ”あたりの参加者数も10~12程度と少なく、顔見知りであることも多いから競争心が働くし、また誰かが脱落するとリーグ全体に迷惑がかかるので、脱落もしにくい

何より、自分で収集したデータをもとに、自分で選手を選び、また控え選手と入れ替えたりトレードに出したりの判断も行うので、ゲームでありながら「運でなく実力」なところがある。

この、知的判断と実試合での成績が絶妙にマッチしているところこそ、ファンタジー・フットボールの本当の醍醐味であり、ファンを「熱狂的ファン」として掴んで離さないゆえんなのである。

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■ファンタジー・フットボールの経済効果

ファンタジー・フットボールへの参加は基本は無料だ。プラットフォームを提供しているNFL.comやYahoo.com等は、基本的にファンサービスあるいはサイトの集客力を高めるためのマーケティングツールとして運営している。

ただし前述のように、ファンタジー参加者は高学歴・高収入である上、平均して毎週9時間弱をファンタジー関連リサーチに費やしている。つまりサイトでの滞在時間が非常に長い。したがってファンタジー関連情報を提供するサイトの広告媒体としての価値はかなり高いとのこと。

有料のサイトにカネを払って情報を得ているファンも多く、その支出額は平均して1人あたり年20ドル、全米の合計では年6.5億ドル(650億円)にも達するとのこと(※フットボール以外のスポーツも含んだ、ファンタジー全体での統計)

またリーグによっては、50ドル程度の参加料を取る代わりに、優勝者に賞金を出す、という形にしているものもある。参加者が数千、数万に達する巨大リーグでは賞金も高額になるし、プラチナチケットとして知られるスーパーボウルの入場券を賞品としているリーグもある。

ちなみに賞金を懸けてのファンタジー・フットボールは、運以外の要素が大きいということで「賭博行為には当たらない」という判例がすでに出ているが、それでも州によってはこれを禁止しているところもあるとか。

実のところアメリカでは、ファンタジー・フットボールの経済効果については賛否両論ある。ある調査によると、ファンタジー・フットボールに入れ込みすぎて失われている従業員の生産性は全米で60億ドル(6000億円)に上り、企業の中には勤務時間中にファンタジー活動を行うことを禁じているところもあるという(当たり前に思えるが)。

しかし一方で、従業員同士の関係構築やモラールの維持に役立つという意見も少なからずあり、アンケートに答えた管理職の4割はファンタジー・フットボールを肯定的に捉えていて、中には「職場リーグ」を開催しているところもあるという。(まるで昔のマージャンのようだ(笑))

【参考リンク】 WikipediaのFantasy Footballのページ。非常に長いが、情報も豊富。
http://en.wikipedia.org/wiki/Fantasy_football_(American)

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上記でご覧いただいたとおり、この「プレイヤー比較ツール」そのものは、ファンタジー・フットボールを楽しむための”ツール”のひとつに過ぎない。こうした周辺サービスを開発し提供することを通じ、より多くのファンをファンタジーに参加させ、関係を強化する。NFLのビジネス戦略はしたたかだ。

私事で恐縮だが、昨シーズン、筆者のひいきチーム、ヒューストン・テキサンズは2勝14敗で、NFL全チームを通し最下位。12勝4敗でプレーオフに進出した一昨年から目を覆うばかりの急降下で、ファンを失望のドン底に叩き込んだ(泣)。私も今シーズンからは、ファンタジーとの2本立てにしてみようかと思っている。 

■Touchdown! The New NFL Fan Experience powered by SAP (動画、3分02秒、英語) SAPとNFLの共同開発に関するビデオ。

※本稿は公開情報をもとに筆者が構成したものであり、NFLのレビューを受けたものではありません。

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■参考情報:日本におけるファンタジースポーツ、ついに定着なるか!?

日本でもYahoo Japanが、2011年から「ファンサカ」の名称でファンタジー・サッカーを、2013年から「ファンタベ」の名称でファンタジー・ベースボールを提供している。どちらも現役選手の実試合でのパフォーマンスをベースにポイントを付与して競っていく、という点では、本場アメリカのファンタジー・スポーツと共通している。

ただ、筆者私見ではあるが、とくにファンタベは「ゲーム化」の要素が強すぎ、その分「スポーツ」の要素が弱いルール設定になっているのは残念だ。

http://fantabe.jp/static/information.html

  • 選手は「選手カード」と呼ばれており、カルビー「プロ野球選手チップス」のオマケを彷彿とさせる(笑)
     
  • 「スキルカード」を”購入”して投入すると成績がアップするとか、2人の選手を「合成」するとより「強化」された選手が出来上がるとか、「特訓」させると「経験値」がアップするがそれには「気力」が必要で、90分ごとに気力が1つずつ回復する、など、イカニモな感じ...
     
  • しかも選手の獲得などに使う”貨幣”を「クーポン」と呼んでいるあたりは、もはやドン引きである。どうせそのうち、Yahooで買い物をしていると「クーポン」がもらえる、とかその手のサービスと連動させようというコンタンなのであろう...というところまで読んでしまう...

とにかく、ファンタベ固有のルールが多くて、それを覚えるほうが大変。純粋な「野球ファン」にはどうでもいいことなので、苦痛である。

もちろん、ファンタベは、Yahooが無料提供しているサービスだ。日本人が大好きな「ゲーム」の要素を絡めることで、Yahooの集客ツールとしての効果を高めようとしているのだろうから、とくに部外者がどうこう言う話ではない。

また筆者は、ゲームにはまったく興味がなく、スポーツには興味がある、という、おそらく日本人としてはかなりレアな部類に入るから(笑)、その意見を気にする必要もないのかもしれない。

ただ、少なくとも、リーグ(日本プロ野球機構)にとっては、ファン獲得ツールとしては期待しないほうがよいように思える。

http://fantasy.sports.yahoo.co.jp/jleague/

いっぽうファンサカは、そこまで「ゲーム化」はされておらず、選手を11人選んでその週の活躍によってファンタジー・ポイントが加算されていく、という仕組みで、比較的シンプル

つまりゲームとしての独自ルールを覚える必要がない、という点で、筆者にとっては好感が持てる。

予算上限(サラリーキャップ)があるぶん知恵が試されるし、保有選手については「市場価格」が上昇しても「獲得価格」のままで保持できる、というあたりも面白い。

「勝負チーム」機能(現在のチーム成績が下位のチームの選手ほど係数がアップして大きなポイントが見込める、という特殊ルール)はちょっとどうかと思うが、結局はたいていのファンが自分のひいきチームを中心に編成するのであろうことを考えると、ファン推進策とも考えられる。(弱いチームの選手を中心にすれば、その分係数アップでポイントを多く獲得できる可能性もあるので、チーム人気を平準化できる可能性がある。)

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実は過去、日本でも、ファンタジー・スポーツは何度となく立ち上がっては、ファン人気が盛り上がらず消えていった、という歴史がある。

アメリカで市場の7割を占め、もっともファンタジーに向いているとされるフットボールが日本には存在しないこと、野球は12チームしかなくチーム編成の”深み”があまりないことなど、考えられる理由もいくつかある。

しかし何よりここ数年の環境変化、つまりネットワークの高速化とモバイルの普及により、再度チャンスが訪れているという考え方もできる。

日本にもついにファンタジーの波がやってくるか?まずはファンサカとファンタベの行方を見守りつつ、応援していきたい。

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【参考リンク】

■ファンタジー・フットボール(NFL版)とは
http://www.fsjsports.com/nfl/rules/intro.xq
かつて、NFLからライセンスを受けて日本語でファンタジー・フットボールを提供していた、ファンタジースポーツジャパン社のWebサイト。現在はサービスを中止しているが、ファンタジー・フットボールを理解するうえではいろいろ参考になるので、以下紹介。

選手変更
http://www.fsjsports.com/nfl/rules/how-to-play.xq#modify

得点方法
http://www.fsjsports.com/nfl/rules/how-to-play.xq#scoring

会報
http://www.fsjsports.com/nfl/rules/how-to-win.xq#results

賞品
http://www.fsjsports.com/nfl/rules/how-to-win.xq#prizes

お申し込み方法
http://www.fsjsports.com/nfl/rules/how-to-enter.xq#signup

■Fantasy Football Stardom: One Step Closer with SAP Player Comparison Tool
http://scn.sap.com/community/business-trends/blog/2013/08/26/fantasy-football-stardom-one-step-closer-with-sap-player-comparison-tool

■Football Gets Smart with Data Analytics(January 31, 2014)
http://www.news-sap.com/football-gets-smart-data-analytics/

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Hemang本稿執筆にあたり、ファンタジー・フットボールに関する様々な情報について、自身ファンタジー・プレイヤーでありフィラデルフィア・イーグルスのファンでもある SAP North America の同僚 Hemang Desai から多くの協力を得た。

Thank you so much Hemang, for your valuable input about Fantasy Football!  

 

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