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「御社のソーシャルメディア活動は成功していますか?」【アメリカの優良企業500社のソーシャルメディア利用率】

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 海外ブログの {grow} で衝撃的なタイトルのエントリーが公開されていました。直訳すると「なぜ急成長を遂げている米企業はブログを殺すのか?」というものです。

Why are America's fastest-growing companies killing their blogs? |Schaefer Marketing Solutions: We Help Businesses {grow}
http://www.businessesgrow.com/2012/01/29/why-are-americas-fastest-growing-companies-killing-their-blogs/


 エントリーを見てみると、まず以下のグラフが掲げられていました。このグラフは、アメリカの優良企業(Inc. 500)のソーシャルメディアの利用率(2009〜2011年)を示したものです。

アメリカの優良企業500社(Inc. 500)のソーシャルメディア利用率
Inc5002011a
(出所:Schaefer Marketing Solutions: We Help Businesses {grow})

メディア2009年2010年2011年
ブログ45%50%37%
動画サイト36%33%24%
ポッドキャスティング 12%16%6%
Facebook61%71%74%
Twitter52%59%64%
LinkdeIn73%

(出所:「The 2011 Inc. 500 Social Media Update: Blogging Declines As Newer Tools Rule」マサチューセッツ大学ダートマス校 マーケティングリサーチセンター


 上のグラフには載せていませんが、先行調査によると、2007年に Inc. 500企業の19%がブログを開設しており、2008年は39%だったそうです。以後、2009年45%、2010年50%と上昇しましたが、2011年のブログ利用率は37%に下落しています。
 また、Facebook、Twitter、LinkedInの利用率の高さが目を引きます。しかし、不思議なことに「ソーシャルメディアの満足度」に関する調査では、Facebook、Twitterに比べ ブログは92%と極めて高い満足度を示しています。次のグラフを見てください。

ソーシャルメディアの満足度
Inc5002011b
(出所:Schaefer Marketing Solutions: We Help Businesses {grow})

メディア2009年2010年2011年
ブログ88%86%92%
動画サイト87%93%90%
ポッドキャスティング 89% 71%80%
Facebook54%85%82%
Twitter82%81%86%
LinkdeIn90%

(出所:「The 2011 Inc. 500 Social Media Update: Blogging Declines As Newer Tools Rule」マサチューセッツ大学ダートマス校 マーケティングリサーチセンター


 ブログの利用率が減っているのに、満足度は上がっているというパラドックス現象をどのように考えればいいのでしょうか? ひとつの可能性は、ブログ「Online Ad」のエントリーでも紹介されている「Perception Gap: 認識の違い」です。

 たとえば、ブログでユーザーがソーシャルブックマークへの登録ボタン(あるいはメルマガなどの購読ボタン)を押したとします。そのユーザーはその企業のファン層なのでしょうか? 「Online Ad」でも指摘されているようにそうではないでしょう。単にユーザーはその企業の製品の購入を検討していて、情報収集の一環として「いいね!」を押した可能性があります。なにしろユーザーが注目しているのは、値引き(Discount)と購入(Purchase)なのですから(下図参照。※1)。

企業は消費者がソーシャルサイトを通じて接触してくる理由を誤解している
Ibm
(出所:From social media to Social CRM: What customers want, IBM Corporation, 2011)


 一歩譲って、ブログがマーケティングファネルの第1段階「認知(Awareness)」に有効だとしても、それはあくまで認知(「知っているよ」)であって、直接購買には結び付くものではありません。これは企業のFacebookページでユーザーが「いいね!」を押したケースでも同様です。企業は「いいね!」を押されたから "ユーザーは我々とつながりたがっている" と勘違いして、「ソーシャルメディアは宣伝の役に立つ」と結論づけてしまう。それが、上記のパラドックス現象として表れていると考えられます。


※1 実際のユーザー行動をよく表しているのが Pew Internet の調査です──「米携帯ユーザーの52%が実店舗での買い物中に携帯で調べ物」。曰く、「実店舗で商品を購入する際、何らかの形で携帯電話を使ったかどうかを尋ねたところ、携帯ユーザーの38%がその場で友人に電話をして意見を聞き、24%がオンラインレビューを検索し、25%がもっと安い店がないかオンラインで価格を調べたと答えた」。ここでオンラインレビューを検索したユーザーは、主にソーシャルメディアを見て回ったに違いありませんが、それは「メーカー企業が開設したブログ」ではないでしょう。


●元資料:The 2011 Inc. 500 Social Media Update: Blogging Declines As Newer Tools Rule
 (Center for Marketing Research at the University of Massachusetts Dartmouth)
 http://www.umassd.edu/cmr/studiesandresearch/2011inc500socialmediaupdate/
●IBMのリポート:From social media to social CRM: What customers want
 http://ibm.com/services/us/gbs/thoughtleadership/ibv-social-crm-whitepaper.html

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