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2014年クラウド展望(3)クラウド・イングレーターの台頭と競争環境

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クラウドビジネスの進展に伴い、SIビジネスのあり方が議論され、CI(クラウド・インテグレーター)の役割が注目されています。

SI事業からCI事業へ

近年、中堅中小SI事業者は、下請け案件数の減少や構築単価の減少傾向に加え、クラウドサービスの普及に伴い、システム構築運用案件の減少傾向に歯止めがかかりません。

一方、大手SI事業者は、大手ユーザに加えて、SI案件の減少を補完するため、中堅中小ユーザ層への開拓も強化していることから、大手SI事業者との競合も増え、中堅中小SI事業者の取り巻く環境は厳しさを増しています。

そこでSI事業者の選択肢の一つとなっているのが、クラウド事業者と連携し、大手のクラウド事業者のクラウドエコシステムの枠組みに入り、クラウドを基盤としてユーザ向けにシステム構築運用をするといったCI(クラウド・インテグレーター)としての役割です。

クラウド・インテグレーターは、中堅やベンチャー級の企業でも、大手のクラウドサービスを武器にインテグレーション事業を展開していければ、大企業の大規模システム構築案件に参加可能性も増えていくと考えられます。

AWSの場合は、クラウド・インテグレーターのパートナーを拡大し、エンタープライズクラウドへの事業を拡大させています。大手SIでは日立製作所や野村総研、CTC、電通国際、中堅中小ではアイレットやサイバーワークスなどがあげられます。

クラウドビジネスの成長の鍵は、中堅中小から大手事業者まで参加できるこのクラウド・インテグレーターの役割が鍵を握っていると言っても過言ではないでしょう。

競争が加熱するクラウド・インテグレーションの分野

一方で、成長するクラウドインテグレーションビジネスの分野に参入する事業者も増加傾向にあり、最近では、同じクラウドサービスを担いだクラウド・インテグレーターが競合する機会も増え、競争も過熱していくと考えています。

クラウドのレイヤ(特にIaaS部分)はコモディティ化しつつあり、差別化するためには、たとえば、別のクラウド事業者を展開するクラウド・インテグレーターとの提携や、複数のクラウドをインテグレートするクラウドブローカーとしての事業の展開、運用保守の自動化など、自社の強みを生かしたインテグレーションモデルで付加価値や差別化を図る必要がでてきています。

クラウド・インテグレーションの案件は大型SI案件と比べると、案件規模が比較的小さく、競争激化に伴い利幅も減少していくことが予想されます。中途半端に参入をした事業者やノウハウのない事業者は、撤退を余儀なくされる可能性があります。クラウド・インテグレーションを展開する事業者はここ数年で淘汰されていく可能性も否定できません。

クラウドの採用増や機能拡充で変化するクラウド・インテグレーターの役割

クラウド・インテグレーターのビジネスは、ここ数年、成長基調にあると思われますが、ユーザのクラウドサービスの採用増や、クラウドサービス事業者のサービスの機能拡充に伴い、中長期的にはクラウド・インテグレーターの役割も大きな変化を求められるようになるでしょう。

クラウドサービス採用増に伴いユーザ自身がノウハウを蓄積し、自らが直接クラウドサービスを契約し自前で構築運用しクラウド・インテグレーターを介さないケースも増えてくることが予想されます。特に、海外では、一部では採用が始まりつつあるクラウドアプリケーションマーケットが普及すれば、ユーザ自身が直接アプリ環境まで構築できるようになるでしょう。

また、クラウドサービスは年々大幅に新サービスや機能拡張が進んでおり、これまでクラウド・インテグレーターが対処したインテグレーションの部分を、クラウドサービス事業者が自ら提供することも想定されます。その場合は、そのクラウド・インテグレーターにとっては、死活問題になる可能性もあります。

クラウド・インテグレーターとその先

クラウド・インテグレーターは1社のクラウドサービス事業者への依存型のインテグレーションモデルでは大きな事業リスクになると予想されます。そのため、複数のクラウド事業者をインテグレートし、クラウドブローカーとしての機能を持ち、ハイブリッドクラウド環境を構築できる事業者が、競争優位に立っていくのではないかと考えています。

また、ビッグデータなど、今後の新たな成長分野にいち早く実績を積んだ事業者がノウハウを積み、先行者利益とその分野のビジネスをリードする仕掛けも重要となっていくでしょう。

近年、クラウド・インテグレーターにはクラウドビジネスの普及において、欠かせない存在となりつつありますが、その一方で次の事業モデルに備えてビジネスを加速させていく重要性も増していくでしょう。

 

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