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2014年クラウド展望(2)エンタープライズのパブリッククラウドの採用が加速する年に

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クラウドの活用基盤はECサイトやWebサイト、ソーシャルゲームなどの開発運用基盤が中心でしたが、2013年に入ってからエンタープライズへの採用が進みつつあり、2014年以降はエンタープライズにおいて「クラウド・ファースト」の流れが加速することが予想されます。

基幹システムもクラウド・ファーストに

企業の基幹システムの基盤にクラウドを採用するケースの増加が予想されます。たとえば、ケンコーコムHOYAに代表されるようにERPパッケージのSAPをクラウド基盤で採用する事例も出てきています。SAPのようにクラウド上で実装可能なエンタープライズ向けアプリケーションが増え、事例として共有されるようになれば、この流れは加速するでしょう。

エンタープライズクラウドの採用が増加傾向にあるのは、AWS Direct ConnectやVPCのように、各クラウドサービス事業者のクラウドとユーザのオンプレミス環境やデータセンターとVPNや専用線に接続するサービスの充実によるセキュリティレベルや信頼性が大きく改善されている点があげられます。

各クラウドサービス事業者はVPN接続などの対応を進めており、エンタープライズの基幹システムでの利用のかなりの部分はVPNを採用していると想定しています。VPN接続などによりユーザのシステムのセキュアな環境を確保し、システムの新規構築や更改のタイミングで、オンプレミス環境からクラウドにマイグレーションするとった機会は今後さらに増えていくでしょう。

グローバルクラウドの流れが加速する

日本国内の市場や少子高齢化、人口減少などに伴い、日本の市場は縮小傾向にあり、各企業はグローバルビジネスの展開のために、海外拠点の展開を急いでいます。

特に、メーカーや小売業などのグローバル展開の動きが早く、効率的な海外拠点展開とグローバルガバナンスの観点から、グローバルに対応したクラウドサービスを採用するケースが増えていくと予想されます。

こういった背景の中、NTTコミュニケーションズの「グローバルクラウドビジョン」やソフトバンクテレコムの「グローバルクラウドファブリック」など、各事業者もグローバルクラウドサービスの展開を強化し、採用事例も増えています。特に通信事業者のクラウドサービスのグローバル展開が顕著となっており、自社のVPNや専用線とクラウドとの組み合わせで提供するなど通信事業者としての強みをいかしたサービス展開が見られます。

たとえば、ヤマハ発動機の場合は、700台規模の物理サーバーにある基幹システムをNTTコミュニケーションズの「Bizホスティング Enterprise Cloud」を採用し、自社のグローバルネットワークと接続をしています。2018年までにグローバル規模で移行する計画を発表するなど、中長期計画の中で基幹系のシステムをグローバルにクラウドに移行するケースとなっています(関連記事)。

(別紙)クラウド移行完了後のシステム構成イメージ

出所:NTTコミュニケーションズニュースリリースhttp://www.ntt.com/release/monthNEWS/detail/20131009.html
(別紙)クラウド移行完了後のシステム構成イメージ

プライベートクラウドからハイブリッドパブリッククラウド/パブリッククラウドへ

調査会社のガートナーは、「Gartner Says Nearly Half of Large Enterprises Will Have Hybrid Cloud Deployments by the End of 2017」の中で、

大企業の半数近くが2017年の終わりまでにはハイブリッドクラウドを展開するだろう

と指摘しています(関連記事)。

2013年にテラスカイとサーバーワークスが、セールスフォースドットコムとAWSのクラウドサービスとのハイブリッドクラウド環境の構築運用を支援することを発表したように、ハイブリッドクラウドを支援する事業者の動きも加速していくでしょう(関連記事)。

さらに、ガートナーは「The private cloud is giving way to the public cloud」の記事によると、2014年はプライベートクラウドからパブリッククラウドへ移行する年になるとしており、業務の70%から80%はパブリッククラウドで運用されると予想しています。

プライベートクラウドは、オンプレミス環境との差別化やコストメリットなどが出しにくくなっているという指摘も出ています。一方、パブリッククラウドは、柔軟なリソース変更と信頼性やVPN接続などによるセキュリティレベルの向上、複雑な構成でも対応可能なサービスランナップの充実、さらには、グローバル拠点展開も可能になってきたという評価も高まっており、企業の採用が進んでいくと予想されます。

2014年は企業がどこまで基幹システムをクラウドに移行する流れができるのか、今後のクラウドビジネスを占う上でもエンタープライズ向けのパブリッククラウドの採用の流れは、注目されるところです。

2014年クラウド展望(1)市場の成長性 2014.1.6

 

 

 

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