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映画を早送りで観る人たち

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うちの中3息子と録画した名探偵コナン君を一緒に見るととにかくせわしい。
しょっちゅうスキップされて、あらすじを追うだけで精一杯、味わいゼロ。
「よくそんなんで(国語が苦手なのに)内容わかるね」と言ってしまう。

そのような疑問に答えてくれるのがこの本だ。
「映画を早送りで観る人たち」~稲田豊文

インターネットが生まれて、消費しきれないほどのものすごい量の情報が溢れているのは言うまでもない。
そして、24時間ネットに繋がっている現代では、コミュニケーションも、私達の時代からは考えられないほどあふれ、逃げられない。今どきの若者は20以上のコミュニティに属してラインなどで24時間繋がっている状態だ。

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そういう世の中(特に若い人々)において、他人とコミュニケーションを円滑にとるためのコンテンツ入手のコスパ(コストパフォーマンス)・タイパ(タイムパフォーマンス)は非常に重要になってしまったのである。コンテンツの「鑑賞」よりも「消費」(知っている、話題についていける)に意義があるのだ。

著者が青山大学学院で128名に調査したところ、

普段、映像作品を普段倍速視聴する人は、
よくする:35.2%
ときどきする:21.3%
あまりしない:21.1%
したことはない:12.5%
と、
早送り視聴をある程度する人は、66.5%。

普段、映像作品を10秒飛ばししながら観る人は、
よくする:50.0%
ときどきする:25.8%
あまりしない:15.6%
したことはない:8.6%
と、
10秒飛ばしをある程度する人は75.8%にものぼる。

(引用:本書 P16より)

それじゃ「味わえないだろう」と私などは思ってしまうが、これは全く持って余計なお世話だろう。

私はというと、1年ほど前、脚本家の小松江里子さんをインタビューするという、とても光栄な役を頂いた。

普段テレビや映画をみない私は彼女の主な作品を見ねば、と思った。
もちろん、早送りで見ることはできると思った。彼女にインタビューする目的だけならそれでも十分だったと思う。
でも、私が嫌だった。コンテンツを楽しみたかったのだ。脚本家への敬意と言う気持ちもあった。
よって、毎晩、NHKの大河ドラマ「天地人」だとか、「海難1980」とか「利休にたずねよ」など観て、睡眠不足に陥ったがとても楽しかった。
それを横目で見ていた息子は、「倍速で観たら?」とぽつりと言ったのだが。

100歩譲って、映画やドラマは早送りしても、あらすじは追えるのでまぁわからんでもないと思うが、音楽すら早送りする人がいるのは衝撃だ。
音楽こそ鑑賞するのが目的と思うのだが、今どきの若者はそれだけでもないようだ。
友達と話をあわせるため、カラオケをするため、などなど彼らには彼らの理由がある。

その背景には、「失敗したくない」(面白いか面白くないわからないコンテンツをいきなり
悠長に味わう余裕はない)という心理や、そもそもどのコンテンツを観るかという選択において「快適主義」(ハッピーエンドしか見ない、ひいきのチームが負ける試合は観ない)という心理が働いていると分析している。

私のように、深夜にむっくり起きて、ブタペストで開幕している世界陸上で予選を通らなかったマイルリレーを見てがっかりするのは、コスパ・タイパが悪いだけでなく、そんな嫌な気持ちになりたくないのだろう。北口選手の6投目の劇的な逆転金メダルは、結果を確認してから、録画で何度も繰り返し観ればよいのだろう。

さて、この様な時代に生きる若者が主流になる世の中でビジネスはどうなっていくのか?
コスパ・タイパが重要視される中、どんなメッセージなら心に届くのだろうか?

既に「サブスク」など、その要請にこたえたビジネスモデルがどんどん生まれている。
最後の章は社会現象の説明というより、これからビジネスがどう動いていくのかという観点で読んで、刺激を受けた。

面白くて一気に読んだ本だが、あえて言えば・・・
この本一冊を端から端まで読んだ私は、コスパ・タイパを気にしない世代と言うことか(笑)

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