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元証券アナリスト、前プロダクトマネージャー、既婚な現経営者が、日頃の思いをつづります。

リーマンとメリルの違いはどこに

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昨日ずいぶんメディアを騒がせた二つのニュース。

リーマン・ブラザーズがチャプター11を申請して倒産

バンク・オブ・アメリカが$50 Bil.でメリル・リンチを買収

ベアー・スターンをJPモルガン・チェースが買収した時には米国政府は支援を約束したのに、リーマンについては政府が支援を拒否したのは多分に政治的背景があるとか、ゴールドマン・サックス人脈の影響力がすごいとか、いろいろな噂が飛び交う。どれもある程度の真実を秘めているのだろう。

このニューヨークタイムスの記事は示唆に富んでいた。

リーマン・ブラザーズのCEO、Richard Fuldは、39年間リーマン一筋でやってきた。1993年にCEOに就任以来、一度はAmerican Expressの傘下にくだった会社を独立させ、翌年IPOまでさせた。幾度も会社の危機を切り抜けてきた実績が、今回は逆に災いしたのだろうか。韓国の金融機関や、メリル・リンチを買収したバンク・オブ・アメリカ、それに英国のバークレー銀行とも売却交渉をしていたらしいが、値段で折り合わなかったらしい。結局はチャプター11。一般の事業会社と違い、金融機関の事業復活は難しいという。事実上株主価値はゼロとなった。

一方、メリル・リンチのCEO、John Thainは、ゴールドマン・サックス出身。昨年末メリルにやってきたばかり。その頃時価総額で$100 Bil. あった会社を、一年もたたないうちに半値で手放す決断をした。それでも株主は$50 Bil.を保持。

「人は見たいものしか見ない。」ローマ人の物語でも出てきた、カエサルの言葉。Fuldは見たいものしか見ず、Thainは現在の会社価値を冷静に評価する目を持っていたのだろう。

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