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SDVの「SD」は、車の寿命より長く続くのか?

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今回の内容、以前から書いてみたいとは思っていたのですが、考えれば考えるほど、思い浮かぶ顔がいっぱいあるので、迷い続けていました。

でも、書いてみることにしました。

最近、自動車業界では「SDV(Software Defined Vehicle)」という言葉をよく耳にするようになりました。

自動車をハードウェアとして一度売って終わりにするのではなく、ソフトウェアをOTA(Over The Air)で更新することで、販売後も機能を追加したり、性能を改善したり、セキュリティを維持したりする。

自動車を「走るコンピューター」と捉えれば、確かにそういう方向へ進んでいくのでしょう。

ただ、SDVについて語られているのを見ていて、自分には以前から気になることがあります。

そのOTAは、何を使って車に届けるのでしょうか。

当然、通信です。

そして、ここに自動車ならではの、かなり面倒な問題があるように思います。

車は長生きする。でも通信規格は長生きしない

自動車は、10年、15年、場合によっては20年近く使われます。

一方、モバイル通信の世界は、4G、5G、そしてその先へと世代交代していきます。

新しい規格が普及すれば、古い規格はやがて役割を終え、通信事業者によって停波されます。

スマートフォンなら、それほど大きな問題にはなりません。

「このスマートフォンは古い通信規格にしか対応していません」と言われたら、新しいスマートフォンに買い替えればいい。

しかし、自動車はそうはいきません。

例えば2026年に新車を買い、それを15年間使うとします。

その車に搭載された通信モジュールが、2030年代半ばまで使えることを前提に設計されていたとしても、その間に通信規格が変わる可能性は十分にあります。

つまり、

「車の寿命」と「通信方式の寿命」が一致していない

のです。

実際に経験した「通信機器を交換する」という対応

自分がこの問題を気にしているのは、以前の仕事での経験があります。

もう15年以上前になりますが、あるサービスを担当していたとき、そのサービスの維持が特定の通信キャリアに強く依存していました。

その通信キャリアの事業継続性に多少なりとも懸念が生じたことがあり、サービスを継続するため、別の通信キャリアへ切り替えることになりました。

当然、単純に契約先を変更すれば済む話ではありません。切り替える先とのモバイル通信方式そのものが異なっていたため、通信機器そのものを入れ替える必要がありました。

幸い、その通信機器は車両の中核に組み込まれたものではなく、後から取り付けられる外付けの機器でした。

だからこそ、物理的に通信機器を交換するという対応ができたわけです。

一方で、切り替え先の通信キャリアに対応する通信機器が用意されていないモデルもありました。結果としてそのモデルではサービスの提供期間が、切り替えできたモデルより短くなってしまったのです。

ところで。SDVというものを考えると、同じ話では済まなくなる気がします。

SDVなら、通信モジュールもOTAで進化できるのか?

SDVでは、通信機能は単なる後付けの通信機器ではなく、車両のソフトウェアやクラウドサービスとつながるための、中核的な構成要素になっていくはずです。

そこで気になるのが、通信規格の世代交代です。

例えば、ある世代のモバイル通信が停波するとします。

そのとき、

「その車の通信モジュールを、新しい通信規格に対応させればいい」

という話になるでしょう。

では、その通信モジュールはどうやって更新するのでしょうか。

もし、現在使っている通信規格を利用して、通信モジュール自身のファームウェアをOTAで更新し、新しい通信規格に対応できるのであれば、非常に理想的です。

しかし、通信規格が変わるというのは、単純にソフトウェアを書き換えれば済む話なのでしょうか。

周波数、アンテナ、RF回路、モデム、ベースバンド処理、消費電力、認証など、ハードウェアに関わる問題もあります。

つまり、

「SDVだからOTAで更新できます」

だけでは、通信方式の世代交代という問題は解決しません。

通信モジュールそのものを交換できる構造にしておく必要があるのかもしれません。

しかし、それなら今度は、

10年、15年前に販売された車両に対して、メーカーは将来の通信規格に対応する新しい通信モジュールを提供してくれるのか。

という問題が出てきます。

「車の寿命」と「通信方式の寿命」は違う

自動車業界でSDVを語るとき、ソフトウェアの更新、クラウド、OTA、サブスクリプションなどについては盛んに議論されています。

しかし、自分が気になるのは、そのさらに手前です。

そもそも、その車は15年後も通信できるのでしょうか。

自動車メーカーが想定する「車のライフサイクル」と、通信事業者が考える「通信規格のライフサイクル」は、同じ時間軸ではありません。

前述のように、通信機器が比較的独立した部品として存在していれば、場合によっては物理的に交換するという方法が取れるでしょう。

しかし、SDVが進んでいけば、通信機能は車両の中核的なアーキテクチャの一部になっていく。

その状態で、車が10年、15年、20年と使われる一方、通信規格は世代交代していく。

この二つの時間軸は、本当にうまく噛み合うのでしょうか。

もし通信方式の寿命が車両の寿命より短ければ、

「ソフトウェアで進化するはずだった車が、通信方式の世代交代によって進化できなくなる」

という、少々皮肉なことも起こり得ます。

もちろん、自分はこの分野について技術的な素養を持ち合わせているわけではありません。

ですから、単に自分が知らないだけで、この問題についてもすでにさまざまな研究開発が進んでいるのかもしれません。

実際、今回あらためて調べてみると、5GAAやGSMAなどでは、長い車両ライフサイクルを前提とした通信の継続性や、将来の通信環境への対応、将来互換性のあるハードウェアなどについて、きちんと議論されていました。

つまり、この問題そのものが誰にも考えられていない、というわけではありません。

ただ、それでも自分が少し気になったのは、こうした「車と通信の時間軸の違い」という話が、SDVそのものについて語られる機会に比べると、ずいぶん少ないように見えることです。

「SDV」という言葉について語られるときには、ソフトウェア、OTA、AI、クラウド、HPC、ゾーンアーキテクチャなど、さまざまな話が出てきます。

それに比べると、そのソフトウェアを車両に届け続けるために必要となる通信環境そのものが、時間とともに変化していくことへの対応は、専門的な議論の中では存在していても、一般的なSDVの説明では、あまり表に出てこないように感じます。

でも、自分が思うに、ここは結構重要なところではないでしょうか。

SDVとは、単に「OTAでソフトウェアを更新できる車」なのではなく、

車がその生涯にわたって、変化し続ける通信環境とどう付き合っていくのか

まで含めて考えなければならないのではないか。

「車の寿命」と「通信方式の寿命」。

この二つの時間軸をどうやって噛み合わせるのか。

自分には、そんなところもSDVを考えるうえで、かなり大事なテーマのように思えるのです。

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