なぜ問題の根本原因に辿りつけないのか?
解決すべき問題が起こった時、その問題を引き起こしている根本原因を特定する必要があります。
先日、ある熟練の経営者に、「日頃、どのようにしてその根本原因を特定されますか?」とお聞きする機会がありました。その方のお答えは、
「それはもう、直感ですよ。『ここがおかしいんじゃないか?』と思って、数字を調べてみるとやっぱりそこに問題があるんですよ」
ここまで来ると達人のレベルですね。
ただ、達人ではない私達は、なかなかそのレベルに至りません。
世の中では、よく「なぜを5回繰り返せ」と言われますが、なぜを5回繰り返したつもりでも、実際には2~3回程度しか深堀しておらず、根本原因に辿りついていないことも多いようです。
なぜ、我々は問題の根本原因に辿りつけないのでしょうか?
それは、もしかしたら、無意識に「予定調和」を目指しているからかもしれません。
問題の根本原因を深堀する手法はいくつかあります。
その中の一つに、弁証法的アプローチがあります。「正」「反」の異なる意見をぶつけ合って、新しい解決策「合」を見出す手法です。
このアプローチでは、そもそも最初の時点では、結論は見えません。
自分の意見を反対の意見を持っている相手に当てて、議論を通じて、新しい解決策を見出すことになります。
その解決策は妥協点ではありません。
双方の一見相対する意見を満足し、より高い結果を得られるような、より高い解決策です。
従って、ある特定の問題の根本原因を特定し解決しようとする際には、最初から予定調和的に最終結論を持っていては、この弁証法的なアプローチは機能しません。
もちろん、ある程度落しどころを持っておくことは、よいことですが、その落しどころはあくまでも「仮説」に過ぎず、「目指すところ」ではありません。仮説は検証を通じて修正していくべきものです。
言い換えると「予定調和」は、操作主義的に議論をカタに嵌めようとし、根本原因にアプローチするのを妨げるものである、と言えるかもしれません。
これを防ぐためには、私達自身が事実を知ることに貪欲であることと、そこで知った事実に謙虚である姿勢が必要なのかもしれません。