新市場立ち上げと、業界を超えたコラボレーション
1月27日の日経プラスワンの連載「私のビジネステク キシリトールを広める」で、業界を超えたコラボレーションの具体的な例をダニスコジャパン・マーケティング・ディレクター藤田康人さんが書かれています。
藤田さんは、キシリトールを日本に広めた方です。この連載は先々週も紹介しましたが、新市場を開拓するマーケティングの事例としてとても参考になります。以下、引用しながらコメントします。
菓子メーカーに売り込むだけだったら、(キシリトールの)ブームは起きなかったでしょう。
成功の一因は、企業を相手とする『B to B』(Business to Business)の関係から、消費者(Consumer)まで意識する『B to B to C』へマーケティングの対象を広げたことにあります
"B2B2C"はよく巷で言われますが、この記事では非常に具体的に書かれています。
支社を開設した当初『キシリトールは砂糖より高すぎる。高いガムは売れない』と菓子メーカーは乗り気じゃなかった。ならば、と流通に直接訴えたのです。....すると、流通の方から菓子メーカーに『作ってほしい』と言い出す。話が進み始めました。
現在、菓子メーカーにとって、流通は大きな発言力を持っています。ここに訴求したということですね。
また薬事法の絡みで食品であるキシリトール入りガムの効用は宣伝できません。そこは食品素材メーカーの出番。『日本フィンランドむし歯予防研究会』などを通じてシンポジウムを開き、キシリトールという物質の効用を消費者に訴えました。菓子メーカーにできないことを仕掛けたのです。
単にチャネルに働きかけただけではなく、お互いに出来ないことを補完するようにしたということですね。新市場を立ち上げる際の触媒としての役割が書かれています。
コンビニなどの店頭に一社ではなく複数社のガムが並んでいる方が宣伝効果は大きい。菓子メーカーではなかったからその『まとめ役』ができたわけです。
市場立ち上げ時には、競争相手に勝つよりも、市場のパイを市場参加者全員で大きくする方がメリットがあります。キシリトールの場合は、まさに商品の効能が全く知られていないゼロからの立ち上げだった訳で、全員が勝つWin-Win-Winの関係を構築できたということなのでしょう。
藤田さんは「(他業界でも)応用が可能」と記事を締めくくっておられますが、セグメントが限られた新市場を大きな市場に立ち上げる場合に、特に有効な方法だと思います。
例えば、ちょうど「顧客関係構築にITの活用を!」というニーズを普及させるところから始めた10年前のCRMは、同じストーリーになっています。
IT業界は、ITの様々な分野での新しい活用を常に提案し続けている業界である訳で、様々な応用が利きそうですね。
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