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「情報大航海プロジェクト」のセミナーに参加

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昨日は、ICPF(情報通信政策フォーラム)主催のセミナー「経済産業省はWeb2.0にどう対応するか」に行ってきました。すごいタイトルですが、基本的に例の「情報大航海プロジェクト」のお話しです。

意外にも客入りはあまりよろしくなかったです(50人くらいでしょうか?会場キャパの半分くらい)。以前に、同じくICPF主催で、同じ会場でGoogle日本法人の村上社長が講演したときには満員御礼であったことを考えると、「情報大航海プロジェクト」に対する世間の見方ってこんなもんなんだなーということがよくわかりました。

資料が、ICPFのサイトからダウンロード可能になっています。もし、私がメーカーの研究開発部門のトップで、部下からこの資料を企画書として提出されたとしたら、1)スコープがはっきりしない、2) 現状のユーザーニーズの調査が不十分、3)目標設定が不明確、4) Why Us?(なぜ、我々がやるべきなのか?)が不明確という点でダメ出しをするでしょう(偉そうですみません)。1)、2)、3)は、これからやっていくということなのかもしれませんが、4)は結構重要な問題です。つまり、何故あえて民ではなく、官がこういうことをやらなければならないのかが見えにくいということです。

官がリーダーシップを取って、民がそれに従って協力し合うことで、最大限の効率性を提供するモデルは、国が高度成長期にある時は有効でしょう。今なら中国がそういうステージにあると言えます。しかし、国家が成熟するにしたがって、米国のように民は自由に合従連係できるエコシステムを構築し、国は健全な競争が行われるように後方支援するというモデルの方が有効になってきます。

話しちょっと跳びますが、拙訳のジェフリー・ムーアの「ライフサイクル・イノベーション」の重要なテーゼとして、市場には成熟度レベルがあり、それにより取るべきイノベーション戦略は異なるというものがあります。要するに、市場が成熟化しているのに、成長市場で取ってきたようなイノベーション戦略を取るのは誤りということです(破竹の勢いで成長してきた企業が、市場の成熟化と共に一気に失速する事例が多いのはこういう理由です)。国家の産業政策においても同様のことが言えるでしょう。

今回お話しをされた久米孝氏を含め、過去にはMETI(MITI)の人と何回かお話しをしたことがありますが、皆さん優秀で、かつ、日本の将来を真剣に考えているという点については例外がありませんでした。個人ベースでは優秀なのに組織としては?なケースが多いんですよね。もちろん、久米氏も国家プロジェクトの課題については充分に認識されているようで、ユーザー(ニーズ)主導で、PDCAサイクルをしっかり回して、環境の変化に柔軟に対応することは宣言されています。外部の意見もどんどん取り入れていくということなので、建設的な意見をインプットできる運用をして欲しいものだと思います(ブログを開設すればよいと思うのですが)。

あと、久米氏が、「Google対抗の検索エンジンを日本メーカーで作るというような意図は全くないにもかかわらず、メディアの人にどれほど説明しても『日の丸検索エンジン』というフレーズで語られてしまうので困っている」とおっしゃってましたのを付記しておきます。

Comment(2)

コメント

HL

米国も、まだマーケットすら予想できないような基礎研究は国家主導で行っています。倫理も何もあったものではない軍事技術や、医療分野は現在もそのような主導体制がとられています。逆に言えば、軍事技術はともかく、基礎科学で日本がおいしいとこどりされがちな理由は、このような戦略的投資の欠如があります(一番いい例が科研費の分配)。
市場に任せたほうがいい分野に手を出すのもどうかと思いますが、どんなに先進国になっても国がリードすべき分野が存在しますし、先進国であればあるほど、その選択がその国の10年後20年後に大きな影響を持ってくる気がします。

栗原潔

はい、おっしゃる通りです。誤解のないように言っておきますが、私はナショナル・プロジェクトを否定する者ではありません。国の成熟度により最適な官の民への関わり方があると言っているわけです。
ゆえに、このプロジェクトにおいても、"Why 官?"の検討は絶対必要でしょう。官でやるべきことではないとわかったら、ベクトルの方向性を変えればよいのです。

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