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特許権とM&Aについて

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「知的財産権」という言葉もあるように、特許権は「財産権」の一種です。どういうことかと言うと、ひとつには売買の対象になるということです。もちろん、個別に売買することもできますが、企業が買収された時には土地・建物等の他の資産と同様に、その企業が所有していた特許権もまとめて買われることになります。

たとえば、Overture社は、Yahoo!とMSNにサーチエンジン・ベースの広告サービス(GoogleでいうAdWords的サービス)を提供していました。前にも書いたとおり、このサービスは特許権で保護されており、Overture社がGoogleを2002年に訴えてました。その後、Yahoo!がOverture社を買収して、この特許権も実質的にYahoo!のものとなりました。そして、Googleが和解によりOvertureにライセンス料を支払うことになった(実質的にGoogle敗訴)ので、Overtureの特許の価値は一気に上がることになりました。Yahoo!にとっては何ともすばらしいプレゼントになったわけです。一方、マイクロソフトにとっては、自社のサービスの基幹部分の特許権を競合他社に握られているというちょっとやっかいな状況になってしまいました。マイクロソフトのM&A担当者は、Google和解の報道を聞いたときに臍をかんだことでしょう。

ということで、M&Aにより特許権が他の会社に移ることで、競合力学が一気に変わるということがあり得ます。今まで友好的な会社なので特許権攻撃はないだろうと高をくくっていると、その会社が攻撃的な他社に特許権ごと買収されて、一気に特許権攻撃のリスクが高まるということがあるわけです。コワイですよね。

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