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提案に「強み」を埋め込む3つのステップ

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「この提案の強みはなんですか?」

提案力強化のための研修で、このような質問を投げかけてみた。それに対して、こういう機能がある、こういう実績がある、こういう体制があるといった答えが返ってくる。

「それは、他社にはできないことですか?」

と質問すると、多くが答えに窮してしまう。

「なるほど、貴方の提案しか選択肢はなさそうですね。」と相手に言わせるものこそが、「強み」になる。

「御社のシステムに長年係わり、どのような使われ方をしているのか、その業務プロセスにも精通しています。」

これも「強み」になることもあるが、新しいことをやろうとしているお客様にとっては、むしろ足かせになるかもしれない。

「コンサルティングから設計・開発・運用を全てまかなえる体制と組織があります。」

こういう話もよく聞くが、ベンダーロックインやブラックボックス化を懸念するお客様には、「強み」にはならないだろう。

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では、何が「強み」になるのだろうか。それを見つけるには、次の3つのステップが必要になる。

1.「あるべき姿」の発見

まず取り組むべきは、お客様を熟知することだ。お客様が何に困り、何を解決したいのか、その業務が今どのように行われているのか、これをどのように変えたいのかを深く理解することだ。そして、お客様の「あるべき姿」を見つけることだ。

「あるべき姿」とは、お客様が求めていることと、必ずしも同じではない。例えば、お客様がPCを100台ほしいと求めたとしよう。ならば、そのPC100台を提供することがお客様の「あるべき姿」を実現することになるのだろうか。決してそんなことはない。

お客様は、PC100台を必要としている理由を尋ねてみると、「新製品を販売するに当たってコールセンターで受注するので新規採用するエージェントのためにPCを100台導入したい」という答えが返ってきたとしよう。つまり、お客様が、本当に必要としたことは、PC100台ではなく、増加する受注に対応することだ。ならば、CRMを導入して応対時間を半減させることができれば、PCは50台で良いし、応対が迅速になるので、お客様の満足度も上がるはずだ。あるいは、ECサイトでの受注にすれば、PCは不要になる。新規の採用も不要になり固定費も抑えることができる。また、お客様は在庫状況も即座にわかり顧客満足も上がるかもしれない。もちろんそのためには、商品の特性や販売戦略、業務プロセスを知らなければならない。

いずれにしろ、「求めていること」に応えるのではなく「必要としていること」に応えることが「あるべき姿」となる。また、そのためには、製品やソリューション、テクノロジーなど、自らの専門に精通していなければならない。それがなければ、魅力的な「あるべき姿」を描けないだろう。

2.お客様との合意

「あるべき姿」を描けたとしても、それをお客様が受け入れてくれる保証はない。押しつけてもうまくはいかない。それが、お客様の必要を満たすものかどうかをお客様と議論し、合意を取り付ける必要がある。

合意に至るには3つのステップが必要だ。まずは、ギャップを明らかにすること。ギャップはひとつとは限らない。双方の考えの違いを明らかにして、それを列挙することだ。次に、そのギャップひとつひとつについて、これを埋める手段の選択肢を洗い出すこと。最後は、手段を選択し、ギャップを埋める。これが全部埋まれば、合意に至る。

3.「強み」を考える

「あるべき姿」を実現する上で、自分達が提供できることは何だろう。他社にはできない、何かがあるはずだ。それを探り考えることだ。一般論としての機能や性能、体制や組織ではなく、お客様と合意した「あるべき姿」を実現する上での「強み」を明らかにすることだ。なによりも、このような1、2のステップを踏んで、お客様に食い込むことこそが、大きな「強み」になる。

「強み」とは、機能や性能ではない。一般論でもない。お客様の「あるべき姿」を、明らかにできない限り、「強み」を見出すことができいことを忘れないようにしたい。

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