EUのクラウド活用事例。AzureとBingMapsならこんなステキなサービスも柔軟にできますが何か?
「Azureで何かイケてる事例ないの?」という方、このEyeOnEarthはいかがだろうか?
EU環境庁が提供している環境データの分析、情報提供サービスでWindows Azureを利用して
構築している。アカウント登録などの必要もなく誰でもみることができるので、まずは実際に
使ってみていただきたい。必要なのはブラウザとSilverlightプラグインのみ。
ユーザー操作はそれほど複雑ではないので説明の必要もないかもしれないが、念のため。
EU全域が表示されている地図上に水色と黄色のドットが分布していて、これが水質と
大気の状況を測定するセンサーであることを示している。それぞれ22,000カ所、1,000カ所の
観測所が存在しており、日夜データを取得し続けている。
ホイールマウスをお使いであれば「グリグリ」することで地図の拡大、縮小が可能。
もちろん地名での検索もできる。デフォルトの画面ではデンマーク、コペンハーゲンの詳細
情報が表示されている。各観測所のアイコンにマウスをのせれば、その地域の水質や
大気の状況を誰もが把握することができる。
下記はこのサービス構築に関わった人々へのインタビューをまとめた5分ほどのビデオ。
単なるマイクロソフト万歳事例ビデオになっていないところが個人的には気に入っている。
地球環境のためにできることから実現してゆこうという姿勢は素晴らしい。その実現手段
たるITの利用形態を柔軟な発想でクラウドにしているあたりの判断も「お役所」とは思えない
柔軟さ。負荷の季節変動への対応や管理のアウトソースを気に入っていただけた模様。
さらに動画の後半では、気候変動に苦しむ人々の知恵やノウハウを活用できる
ソーシャルな仕掛けを実現してゆきたいというビジョンが語られている点も感銘を受ける。
実際、現状のEyeOnEarthでも、観測所からの機械的なデータ収集だけでなく、一般市民
からの情報提供も、携帯電話から所定のフォーマットでのSMS送信という形で実現している。
「そんなシステム、作るの大変じゃない?」と思いきや、ナカミはいたってシンプルな実装。
Azure上でホストしているのはユーザーインタフェース部分を担当するWebRoleが1種類、
携帯端末のSMSゲートウェイとバックでデータアクセス部分を司るWorkerRoleが各1種類と
データを格納するSQL Azureデータベースで構成されている。負荷が変動する場合には、
それぞれのインスタンス数を増減すればよい。観測所から送られてくる大量のデータも
分散化されたデータベースに(使用料さえ払えば)いくらでも格納できる。従来のように
アクセス予測も不確かな中、あらかじめキャパシティプランニングをしておく必要はない。
また、Bing Mapsの地図データへのアクセスはSilverlightから使えるAPIが提供されており、
慣れてしまえば実装は容易い。昨日社員向けに配布されたマイクロソフト製品の販売ガイド
によれば、Bing Mapsのライセンスは下記のように記載されている。
「個人/教育機関/NPO」が「ユーザー認証機能」を設けず、「Webページでの情報発信」に
Bing Maps をご利用される場合に限り無料です。…(後略)
すなわち、今回のようにNPOが認証なしで情報発信する場合はなんとタダ!Bing Mapsは
ユーザーや開発者だけでなく予算にもやさしい。商用ライセンスも販売しているので、
BIと絡めた本格的な空間情報ダッシュボードなどビジネスユースにも安心して利用できる。
こういう事例、早く日本の官庁、自治体のみなさんと実現してゆきたいな、と思いつつ。
ちょっと前にはやった災害監視システムとか、要件の折り合い次第では、EyeOnEarthと
同じような枠組みで格安にできてしまうと思うのだが。