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アクセンチュア関連企業社長のポルシェ死亡事故はラテラル・シンキングで回避できたか?

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不幸な事故である。まずはご家族のご心労をお察しし、ご冥福をお祈りしたい。
アクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズ社長の小林氏が、愛車ポルシェ911に
ひかれて死亡した。サイドブレーキの引きが甘かったことが原因と報じられている。

サイドブレーキの引きが甘く自分の車にひかれたという状況を想像できない方も
いるかもしれないが、アルファ乗りの私もヒヤリハットな経験は何度かあり
実は他人事ではない。

駐車券をとろうとしたが左ハンドルで手がとどかなかったため一度車を降り
車の前を通って反対側の発券機に向かおうとしていたところ、
サイドブレーキの引きが甘かった車が前方に転がりだし、
自力で止めようとしたがそのまま下敷きになってしまったということだ。

不運の連続である。起こってしまったことにifはないのだが、
車ではなく電車を利用していれば、
その駐車場が満車か何かで他にいっていれば、
駐車場に左ハンドル用発券機が設置されていたら、
駐車場の係員が気を利かせて駐車券を手渡ししてくれていたら、
同乗者がいて発券機を操作できたなら、
発券機を操作するところだけでも平坦になっていれば、
ギアをニュートラルではなくリバースにしていれば、
ミッションではなくATでPにしていれば、
911ではなくカイエンだったら(車高が高く下敷きにはならなかったかも)、
という展開もあったかもしれない。

しかし、システム開発関連会社とはいえロジカル・シンキングを武器に様々な
難題を解決しているコンサルティング道プロフェッショナルの一員が
なぜ当時の状況で的確な判断をできなかったのだろうか。

偶然直近読んでいた「ラテラル・シンキング」という書籍の中に、
「渋滞の上り坂で前の車が下がってきたらどうすればよいのか?」という
似たような状況のエクササイズが掲載されていた。ラテラル・シンキングを
提唱したエドワード・デボノ博士のオリジナル例題らしい。

--(引用開始)
渋滞している道路を走っていたとしましょう。上り坂にさしかかると、
渋滞の状況はどんどんひどくなり、車の速度は低下、ついにはすべての車が坂道で
ストップしてしまうという光景は決して珍しいものではありません。

このような状況で、ブレーキを踏んで待っているあなたの車の前に止まっていた車が、
ドライバーの操作ミスか何かで、ソロソロと後ろに下がってきたとします。
あなたの車の後ろには渋滞の車がずらりと並んでおり、左右にも逃げ道はありません。
このような状況では一体、どうすればよいのでしょうか?
---(引用終)

ロジカル・シンキングをたたき込まれた人間は、課題分析の切り口の最初の分岐である
いわゆるゴールデンカットをどうするかというコンマ数秒の迷いの後、おそらく
「相手に自覚させる」か「相手から逃げる」の2つに整理するのではなかろうか。
分析の後、現実的な解決策を可能な限り組み合わせ、クラクションをならしながら
後ろに少しずつ下がって気づいてもらうための時間を稼ぐという行動が妥当だろう。

ラテラル・シンキングの場合は違うそうだ。
「下がってくる車に向かって走り、接触するギリギリのところで制止する」らしい。
多少の被害が出るのは覚悟の上、被害を最小限に食い止めるのであれば、
加速がつかない段階の方がよいだろうという、肉を切らせて骨を断つ
薩摩自顕一刀流的発想である。

この例題がドンピシャというわけでもないが、もしかすると、小林氏の頭の中には、
たとえ愛車の重量が1.5トンあろうが、加速のついていない今のうちなら止められる
かもしれないという算段があったのかもしれない。その上で、ダメだ、と思って
逃げようとしたところで足が滑ったなどの不幸が重なった可能性もある。

ただ「止めようとした」という表現が真であれば、
もしポルシェ911でなくそのまま転がって廃車になってもよい愛着のない車だったら、
というifもあるかもしれない。今回の車が自前の愛車だったか、会社支給だったかは
わからないが、車好きとしては壁に激突して不憫な姿になるポルシェ911を止めたくなる
という衝動はおさえられないかもしれない。
世の中ロジックに感情が打ち勝ってしまうことはよくあることだ。

弊社にもポルシェ愛好家は少なくなく、開発中の製品のテスト・検証・啓蒙のために
自分の車を使っているOri Amigaのような人間もいる。
Microsoft社員、愛車のポルシェで「Live Mesh」応用例を紹介

ちなみに、程度にもよるが911とはいえ中古であればそれほど高い車ではない。
(個人的にはカーセンサーの車種を絞り込んだ上で、価格×年式×台数分布の一覧を
表示するUI
が中古車探しには最適と思っている。)

買おうと思えば100万円台でも手に入る。パワートレイン系は多少不備があっても
立ち往生で困る程度で死ぬことはないだろうが、命に関わるブレーキ関係のメンテは
特にしっかりした方が良さそうだ。

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